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乳酸菌を求めて

作者: 藤林保芥

私は未だ、この目で乳酸菌というものを見たことがない。


乳酸菌――その存在を信じる者たちは数えきれないほど多い。ヨーグルトの容器や乳酸菌飲料のパッケージには、「生きた乳酸菌が腸内環境を整える」などと書かれている。しかし、科学の世界で語られるその微小な存在が、私自身の目で確認されたことは一度もない。顕微鏡で見えると誰もが言うが、なぜその顕微鏡を持ち歩いて、私の目の前に提示しないのか?


自分の目で見たものしか信じない――これは私の信条だ。


なのに、なぜこんなにも多くの人々が、あたかも乳酸菌が世界を救う救世主であるかのように熱を上げるのだろう?科学者たちのプロパガンダか、それとも企業の巧妙な陰謀か。この疑念が心に芽生えたとき、私は決意した。


「乳酸菌に出会う旅に出よう」と。


その始まりは、乳酸菌ドリンクのカップ一つだった。何の変哲もない超市スーパーの棚から手に取ったそれを見つめながら、私は誓った。このカップの中に潜む「見えざる何か」を、自分の目で見るのだ、と。


「これで見えるはずだ…!」

乳酸菌ドリンクの蓋を開けると、その底知れぬ深淵を覗き込むような気持ちになった。トロリとした液体の中に、きっと乳酸菌たちは存在しているのだろう。だが、見えない。見えるどころか、その姿を掴む術すらわからない。


ならば、直接眼球をもってして感じ取るほかあるまい――私はその方法を思いついた。


ドリンクの小さな口を目に近づけ、顔を真上に向ける。そして、眼球をその液体に晒すべく、片目を見開いた。


「これで!これで私も乳酸菌を――」


突如として、激痛が眼球を襲った。


視界がかすみ、まるで目の中に灼熱のナイフを押し込まれたかのような感覚。痛みは容赦なく脳髄を貫き、私は反射的にドリンクを放り投げてその場に倒れ込んだ。


「乳酸菌…!お前たちは、なぜ…!」


涙と乳酸菌飲料が混じり合い、顔を濡らしていた。眼球の痛みに耐えながら、私は薄れゆく意識の中で考えた。乳酸菌は、人間に優しく腸内環境を整える存在だと聞いていた。なのに、なぜ私の眼球にはこのような仕打ちをするのか。


「私が間違っていたのか…?お前たちは見るべきではない存在だったのか…?」

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