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第89話 アリマ、ルッカで

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

 朝食後、アリマはアクセルの妻に挨拶をして、テュールの案内でエイナーの家に向かった。


「テュールはどこでイズミールの言葉を習ったの? 他にも喋れる言葉があるの?」


 アリマが感心して尋ねた。


「家にやって来る講師に教わるんだよ。俺はエリートだから、当然イズミールやアルタの言葉くらいは話せなきゃいけないんだ。」


「凄いね、じゃあ三カ国語も喋れるんだ。」


「まあな。」


 テュールが得意げに答えた。


 暫く進むと、テュールがある屋敷の前で止まった。


「ここだ。」


 テュールの屋敷ほどではないが、想像以上に立派な屋敷にアリマは面食らった。


「本当に、ここにジェイドは住んでたの?まるでお嬢様じゃない。」


 そう言ってから、思い出した。王妃の弟のお嫁さんだった。そりゃあお嬢様だ。


「人を見かけで判断しちゃ駄目なんだ。見た目はマッチ棒みたいだけど、めっちゃ強いんだ、ジェイドは。」


 テュールがそう言いながら門を開けた。


「…マッチ棒…それテュールがジェイドに言ったの?ジェイド根に持ってるよ、ずっと。」


 テュールは何も答えなかった。


 アリマはテュールの後について門をくぐった。門から屋敷の入口までは、数台の馬車がまれる広いスペースがあり、その周りはバラの花壇になっている。今は咲いていないが、きちんと剪定されて手入れが行き届いていた。他にもいろいろな植物が植えられていて、どれも手入れがされていた。


 二人が屋敷の入口に近づくと、扉が開き使用人が迎え入れてくれた。


 執事のバートンと家政婦のマーサにハンナ妃からの手紙を渡し、エイナーとジェイドの状況を二人に話した。二人はとても心配そうだったが、兎に角、遠くから二人の状況を伝えに来てくれたアリマに感謝し、またハンナの手紙にもアリマを持て成すようにと書かれていたため、アリマはこの屋敷に泊まることになった。


 遊びできている訳ではないので、明日の朝一番の船で帰らなければならいが、まだまだ昼前でルッカを観光する時間があった。テュールの案内で昼食を食べに行くことになった。


「もっとゆっくりして行けばいいのに、俺が案内してやるぞ。」


 テュールがちょっと寂しそうに言った。


「そうしたいけど、仕事があるから帰らなくっちゃならないんだ。」


 アリマも残念そうに答えた。


「それじゃあ、何が食べたい?何でも好きなものを食べにつれてってやるよ。」


「ルッカの名物が食べたい。」


「名物かぁ……チョコレートケーキが有名なレストランがある、そこはどうだ?」


「チョコレートのケーキ!何それ~食べたい。」


「よし、じゃあ連れて行ってやるよ。」


 そう言って連れて行かれたレストランは、どう見ても超高級、老舗レストラン。


 これは門前払いだ。アリマが心の中で呟いた。そんなアリマをよそ目に、テュールが入口に近づくと、扉が開き、彼はそのまま入って行った。


 恐れをなして、中に入ろうとしないアリマに向かって。


「早く来いよ。」


 テュールがそう言って、手招きをした。給仕係も優しく微笑みかけてくれる。


 歩き出すと右手と右足が一緒に出た、駄目だ緊張する。美味しい物が食べられると言うのに、額に汗が流れる。胃が痛くなりそうだ。


 店の中に入ると、三階の窓側の席に案内された。


「個室も空いてるみたいだけど、ここの方が見晴らしが良いんだよ。」


 テュールが嬉しそうに言った。本当に見晴らしが良い。


「ルッカってこんな街なんだ、きれい。」


 アリマが窓の外を見つめてそう言うと、テュールは、嬉しそうな、ちょっと得意そうな顔をした。


 食事が運ばれてくる。初めて食べるものばかりで、ちょっとわからない味のものもあったが、殆どのものは美味しくってアリマは全て平らげた。

 最後に名物のチョコレートケーキが出てきた。既にお腹がいっぱいだったが、甘いものは別腹で、これもぺろりと平らげてしまった。


「アリマも本当に美味しそうに食べるよな。」


 そう言うテュールもチョコレートケーキを平らげていた。


「テュール、良く食べるね。」

 子どもなのにと言おうと思ったが、その言葉は飲み込んだ。


 アリマが十三歳から軍で働いていると言う話をすると、テュールが興味津々で、女性でも軍人になれることに驚き、自分は士官学校に行くから十七歳になったら士官になると嬉しそうに言った。


「俺も父上みたいな士官になるんだ。」


 そう言うと、お茶を飲み干した。


「さあ、次は市場に行こう。お土産買うだろう?」


 そう言うと、給仕係がテュールの椅子を引いた。アリマの席の後ろにも従事係が立っていたので、急いで立ち上がろうとして、テーブルを蹴ってしまった。ガッチャンと大きな音がした。


「ああ、ごめん…なさい。」

 そう言って、アリマが周りを見回して赤くなった。


「アリマは、おっちょこちょいだな。」


 そう言ってテュールが手を差し伸べた。

 自分よりも背が低い、こんな子どもに心配をかけてしまった。そう思うとより恥ずかしくなった。

 テュールが手を差し伸べたままだったので、アリマはその手を取った。


「痛かっただろう。大丈夫だったか?」


 そう言って、ティールはアリマのことをいたわった。


 子どものくせに、何故かさまになっている。これが育ちというものか?

 勿論、テュールはアリマに支払いもさせなかった。




 大きな市場に着いた。

 ナルクにも大きな市場はあるが、多分ここの半分もない。


「遊びに来てる訳じゃないから、お土産何て……。」


 そう言いながらも、祖父母、フォンミン、そしてハンナ妃には何かお土産を渡したいなと思った。可愛い食器や見たことがないお酒があったので、本当はそれを買いたがったが、かさばるもの、後に残るもの、大きなものは買えなかったので、チョコレートを買った。


 その後も、テュールに案内されて観光をした。すっかり遊び気分になってしまった。


 帰りは、テュールもエイナーの家で夕食を食べ、名残惜しそうに帰って行った。




 翌早朝、アリマは朝一番の船になるため、バートンやマーサに礼を言って、家を出た。

 港まで馬車が用意されていて、それに乗って港に向かった。


 やっぱり信じられない、ジェイドがこんな生活をしていたなんて。

 ただ、よく考えれば、使う単語の品が良かったり、当然のように人に何かしてもらっていたり、金に無頓着だったり、そもそも、生活の心配もせずに遠い異国まで、敵討ちに来ていたり、ちょっと普通ではなかった。


 外を眺めながら、そんなことを考えているうちに港についた。


 馬車を下りて船乗り場に向かっていくと、途中で誰かが立っている。


「アリマ!」


 そう言って、テュールが手を振って近づいて来た。


「テュール、わざわざ来てくれたの。こんな早い時間に。」


「勿論だよ、お見送りまでが、俺の役目だからな。」


 そう言って、船着き場まで一緒に歩いた。

 アリマが船に乗る間際に、テュールが包を手渡した。


「手紙書いたんだ、船に乗ってから読んでよ。」


 そう言って照れくさそうに頭をいた。


「ありがとう。直ぐには書けないけど、落ち着いたら手紙書くよ。」


 アリマが笑顔で言った。


「うん、楽しみにしてる。気を付けて帰れよ。」


 テュールも嬉しそうに答えた。




 船の中でテュールからもらった包を開けると、すずらんをかたどったクリスタルのブローチと手紙が入っていた。


 手紙には、アリマと一緒に過ごせて楽しかったと言うことと、若いうちから軍で働いているアリマへの尊敬の気持ちが書かれていた。そして、最後に、また会える日を楽しみにしていると書かれていた。


2024年中に終るかなと思っていましたが、終わりませんでした!

2025年も宜しく、(初めて読んでくださった方は)2025年から宜しく、お願いいたします<(_ _)>



今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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