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第84話 結構無茶してるね

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

「どこから来たんだ、お前。」


 エイナーが馬に問いかけた、勿論、返事は帰ってこない。


 鞍に刺さった矢を抜き、馬を連れて一行は再びグレナディに向かって歩き出した。


 ぺぺとムーに乗って帰れば早いのに、なぜ乗らないのかとジェイドに尋ねると、ジェイド曰く、二匹が勧めてきた時と、緊急の時だけしか乗らないし、誰かに見られると面倒だと言うことだった。


 暫く歩いても、馬の持ち主には出会わなかった。もしかすると、どこかで倒れているではと思ったが、怪我をした人にも出会わなかった。と言うか誰とも出会わなかった。




 日も暮れたので適当なところで野宿をすることにした。

 適当なと言っても、何もない平野が広がった場所で、身を隠せるような場所もなく、交代で見張りをすることにした。


「私は、こんな所をモーイエ先生に行ってくれとお願いしてしまったのですね。二人が先生を迎えに行ってくれて良かった。」


「この辺も安全ではないからね。でも、モーイエ先生は、時々、遠方の患者の所に出向くことがあるらしい、そういう時は、護衛をつけて野宿もすると言っていた。」


「たくましいですね。」


「本当にね。さて、そろそろ私も休ませてもらうよ。」


 そう言って、ズーシュエンが横になろうとした時、馬が何かに気づいたように、顔を上げて周りを見回した。ペペとムーも辺りを見回している。


「何だろう?動物でもいるのかな?」


「この辺には狼がいるらしい。それに蛇にも気を付けたほうが良いよ。」


 ズーシュエンはそう言いながら、辺りを見回した。

 エイナーも立ち上がり、馬の顔を撫でながら周りを見回した。

 何も見つからなかった。ジェイドは寝ていた。


「何かあったら、直ぐに起こします。休んでください。」


 エイナーはズーシュエンにそう言って、火の側に腰を下ろした。

 ズーシュエンも横になった。


 その後は、変わったことも起こらず東の方の空が白み始めたので、グレナディに向かって歩き出した。何もなければ昼前には城に戻れる。


 そんなことを考えて歩いていると、馬、ぺぺとムーがざわめきだした。馬は怯えている様にも見えた。


「どうしたんだ?」


 そう言いながら、馬を落ち着けようとしたエイナーの視界に、崖の上から矢を構える男の姿が映った。

 ズーシュエンとジェイドもそれに気づき、剣を構えた。


 目視できただけで男が五名、弓を構えて、打って来た。


「この距離だと、私の弓では矢が届かない。」


 ジェイドの弓は持ち運びしやすい短い弓で、速射そくしゃが出来るが、飛距離が短い。


「身を隠すが場所がない。私は馬に乗る。二人はぺぺとムーで、とりあえず逃げよう。」


 そう言って、エイナーが馬にまたがり走り出した。一刻も早く逃げ出したがっていた馬は一目散で走り出した。ぺぺとムーも大きくなり二人はそれに乗って、グレナディの方向に逃げた。


「ここまで来ればもう大丈夫だろう。」


 そう言って、エイナーが馬の歩みを止めた。


 ズーシュエンとジェイドもぺぺとムーから降りた、二匹も元の大きさに戻った。


「ただの物取りか?それとも、」


 ジェイドはそう言いかけたが、崖の上の気配に気づき、


「隠れろ、来るぞ。」


 そう言って、近くの岩陰に隠れた。

 ズーシュエンも別の岩陰に隠れた。


 先ほどよりも低い崖の上から、男が弓を構え、こちらに狙いをつけている。


「追いかけてきたのか?どうやって?」


 エイナーは、馬に乗ったまま、弓矢の射程範囲外に逃れ様子を伺った。

 ぺぺとムーもエイナーの近くで待機している。


 矢が一斉に飛んで来る。


 ジェイドが自分の弓で応戦し、一人射止めた。しかし、相手は五人、が悪い。矢継ぎ早に矢が飛んで来きて、なかなか反撃の隙がない。


 ズーシュエンは相手のすきいて、崖の近くの岩陰に移動していく。

 崖の横に大木があり、その木を伝って崖に上るつもりらしい。


 エイナーがジェイドに合図を送った。

 エイナーは今からそっちに行くから、馬に飛び乗れと言う意味で合図を送ったつもりだが、伝わったかどうか不安はあった。

 しかし、ジェイドが頷いたので、怖がる馬に蹴りを入れて走り出させた。馬は興奮気味に走り出し、矢が飛んで来る中を駆けて、ジェイドが隠れている岩陰に向かった。


 この状況で減速はできない。そのままのスピードで突っ込み、エイナーは左手を伸ばした、ジェイドがその手を掴むと、力いっぱい引き上げた。ジェイドも地面を蹴ってエイナーの後ろに飛び乗った。

 ジェイドは態勢を整える間もないまま、男たち目掛けて立て続けに矢を射った。

 矢は二人の男に当たった。一人が倒れ、もう一人は崖から落ちた。


 ズーシュエンはこの隙に木に登り、崖に飛び乗って、残りの男二人を切った。


 興奮した馬を落ち着かせ崖の麓まで歩みを進めた。ズーシュエンが木を伝い、崖から降りてきた。


 ジェイドが矢で射った男と、ズーシュエンが切った男、二人が崖の下で倒れていた。

 ウズラでも兵士でもなさそうだった。


「マラトの差し金ですかね?それとも単なる物取り?」


 エイナーが呟いた。


「分からない。ジェイドに向けても矢を討っていたからなあ。」


 ズーシュエンが答えた。


「もう、私を生け捕りにすることを諦めてくれたのかもしれない。あの時、結構、ひどいこと言ったからな。」


「え、マラトに会ったの?話をしたの?」


 驚きの表情でエイナーが尋ねた。


「ああ、一人で来れば会ってやるって言うから、一人で行ったんだよ。そしたら、聞くに堪えない話ばかりするから、頭来ちゃって、思いつく悪口を全部言ってやった。」


「それで?」


「気味悪い薄ら笑い浮かべて、『怯えているのか、怖がらなくてもい。少し頭を冷やしたほうがいいね、そしてゆっくり考えなさい。君にとってどうするのが一番良いことかを、とか何とか。』って言われたよ。」


「それで?」


「それで、奴はどこかに去って行った。私は、奴の部下にどこかに連れて行かれそうになったから、暴れて……、そうそう、丁度その時、ズーシュエンが助けに来てくれて、奴を探したけど見つからなかった。」


「へぇ……。結構、無茶しているね。」


 エイナーは『そんな危ないことしないで。』と言いかけて、敵討ちってそう言うものだよなと思い直し、その言葉を飲み込んだ。





今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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