第82話 ウズラとの対決
背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。
エイナーは、走った。
あの男がマラトの部下なのか?だが、気配を感じることが出来た……
まあ、命拾いしたのだから、何でも良い。
どうにか男を撒いて、気が付くと街外れの礼拝堂のような場所に着いた。
暫くすると、ムーもそこに現れた。やはり追いかけて来てくれていた。
近づいて来たムーの顎の下を優しくなでながら、エイナーは彼女に尋ねた。
「ムー、元気だったかい。」
ムーは気持ちよさそうに目を細めた。
「ジェイドも元気かな?」
エイナーが尋ねると、ムーはエイナーの目を見つめたかと思うと、背を向けた。
まるで、自分について来るように促しているみたいだ。
「ジェイドの所に案内してくれるのかい?」
そう尋ねると、ムーは再びエイナーを見つめた。
エイナーは、ムーが案内する方向に走り出した。
すると、ムーが突然止まり、何かに向かって唸った。
目の前には、撒いたはずの男が立っていた。
「げっ、居たのか!」
つい、心の声が漏れ出た。
撒いたつもりが、側にいたのか?全く厄介だ。仕方がないかぁ。そう心で呟き、剣の柄に手を掛けた。
「何の用だ?そこをどいてくれ。」
エイナーがそう言うや否や。男は剣を抜き、エイナーに切りかかった。
速い、動きが速い。
自分の剣で男の剣を受けた。男は直ぐに左に切り上げた。エイナーは、後ろに飛びのき避けた、前髪に少し剣が掠り、ヒヤッとした。
エイナーも態勢を整えて、切り掛かったが、男は軽やかに後ろに飛び退くや否や、足で地面を蹴って飛び上がり、上から再び切りかかって来た。
空が眩しくて良く見えない、とりあえず感覚で剣をかざし男の剣を迎え撃った。ガキっと音がし、予想以上に重い手ごたえを感じた。
エイナーは歯を食いしばり、剣を押し返した。
男は無言で、剣に力を込めて来る。
「イイイイ……」
エイナーも力を込めて押し返す。
「グゥア~~~~」
また、そう言いながら、力まかせに押し返した。
そのまま押し切り、よろけた男に蹴りを入れた。倒れた男にとどめを刺そうと、剣を振り下ろした。男は横に転がり逃げた、自分の剣先が地面に突き刺さった。
その隙に男は立ち上がり、エイナーに切りかかった。
地面から剣が抜けずにもたつき、これは、まずいと思ったその時、何かが男の腕に嚙みついた。
男は全力で手に噛みついてきた犬を振り払った。ムーが地面に叩きつけられた。
エイナーは叫んだ。
「ムーーーーーーーゥ!」
ムーは直ぐに立ち上がり、再び男に襲い掛かろうと、態勢を低くしながら、唸った。
「グルゥウウウゥゥゥ……」
男がムーに気を取られた隙を狙って、エイナーは男を切った。
男はそのまま後ろに倒れた。
何も感じていない様な男の無表情な顔を眺めて、男が動かないことを確かめて、その場を去った。
その後、街を離れると、ムーは大きくなり、エイナーに背中に乗るように促した。
「え、どこを掴めばいいんだ?ちょっと怖いな。」
そう言って、エイナーはムーの背中に跨った。
初速からトップスピードで駆け出すムーの背中に必死にしがみつき目を閉じていたが、暫くすると、周りを見渡す余裕が出て来た。
何も指示しなくても勝手に進む。
これと言った特徴のない景色がビューンと流れていく。
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。
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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。
地図 全体
地図 モラン国周辺拡大
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)
アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)
カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
マルチナ・アリア:サムートの婚約者
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女
ワン・シア(王仔空):リーファの息子
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性
ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下
バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理
アルタイル(通称:アル):バナムの部下
カジャナ・ポナー:サムートの主治医
ナズ:カジャナ医師の助手
アスリ:カジャナ医師の助手
メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性




