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第7話‐① 彼女の過去の世界を覗き見る

始めまして、白黒西瓜シロクロ スイカです。

某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。


ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。

若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。


主に、水、土、日あたりに2~3回/週くらいのペースで上げていく予定です。


自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)

 ノーサンストの実家で相談をしていたため、エイナーはこのまま西山に向かいリュウ・ズーシュエンという男に会いに行くことにした。


 ハリスがジェイドのことを心配して、


「こんなに君が家を空けていて、この間にあの子が出て行ってしまったりしないだろうか?」


「帰りが遅れることは伝えるから問題ないかと。それに、その時は追いかけます。あなたの部下が監視しているのでしょう?もし、出て行ってしまったらそのまま追いかけて、こちらに情報をくれるように言っておいて下さい。」


 最近、家に出入りしている商人や職人の入れ替わりが激しかったので、エイナーはもしかすると彼らはハリスの部下なのではないかと疑っていた。それで、そんなことを言ってみたが、図星だったようで、


「分かった、その時は居場所を適宜君にも伝えるよう言っておく。」




 虚明堂がある山の麓に今でもハリスの部下が住んでいて、というかそこに住み着いてしまったらしく、一先ずその男に頼めば虚明堂に連れて行ってくれるというので、その男がやっている食堂に向かうことにした。

 食堂の名前は『西山唯一の西方料理店 やっぱりパンが好き』。


 ルッカからノーサンストまで馬で三日、ノーサンストから虚明堂までも五日くらいかかるらしく、帰りのことも考えると本気で眩暈を覚えた。


 イズミールから西山に入る手前に大きな川があり、そこで休憩を取った。

 川の水に足を付けて、只々ぼーっとした。

 目の前にそびえる山々を眺めているうちに、心の奥に押さえ込んでいた鬱積した何かが湧き出てくるような気がした。


 マラト・ベルカント…

 ベルカントってどこの人間だよ。南の方の名前だろうか?

 大方、ジェイドの母親に一方的に思いを寄せていて、振られた逆恨みだろう。それでそこまでするのは、確実に頭がおかしい。

 そのせいで、ジェイドの頭の中の大半はお前のことで埋め尽くされていて、夫の自分のことよりも何倍も何倍も広い面積を占めている。

 そんなのおかしくないか?しかも七年間の記憶が無くなったのに、お前のことは覚えていて、そのせいで、二人の将来のことが二の次にさせられている。

 本当に癪に障る。


 ハリスもハリスだ、年がら年中、娘に監視付けて見張らせて、

 一生その生活を続けるつもりなのか?

 それで問題が解決できると思っているのか?

 そこまで毒づいてから、アドルフに言われた言葉を思い出し、それ以上心の中でハリスを責めることは辞めた。


 俺の不在の間、ジェイドは寂しいと思っているのだろうか?

 もし、全く思っていなかったら、そんなの心が居た堪れなくなる。

 時々彼女が何を考えているのか分からなくなる時がある。

 自分に好意を持っているとは信じたいが、本心はわからない。


 数年前に心から愛した、少なくともその時はそう思った女性がいたことを思い出し、その女性の最後の言葉を思い出していた。

 そして、結局、女は分からないと嘆いた。

 その女性の最後の言葉は、『夫が帰って来たから、もう二度とここには来ないで。』であった。




 西山に入ると、全く世界が変わっていた。東方に来るのは初めてである。


 まだこの辺りにはイズミールや西方の人間も出入りしているが、大半が東方の人間で黒い髪に黒や茶色の瞳でやや小柄、服装も全く違うものだった。

 助かったことは、この辺りの人々はイズミールの公用語もある程度話せるようで、言葉にはそこまで困らずに済んだ。


『西山唯一の西方料理店 やっぱりパンが好き』は直ぐに見つかった。

 店に入り、太った山猫のような大柄な店主にハリスからの手紙を渡すと、それに目を通した店主は大きな目と口をにんまりとさせて、直ぐに虚明堂へと案内してくれた。


 山を登って行くと、途中から、長い、長い頂上まで続く階段が現れた。

 道すがら、店主が自分の身の上話とジェイドの子どもの頃の話を始めた。


 彼の名はバナジールというのだが、こちらでは何故かシャンマオと呼ばれており、誰も彼の名前がバナジールだということは覚えてない。

 もともとはスノースバンの出身で、ドゥゴエル家につかえる庭師だったのだが、ムーランとジェイドが失踪して間もなく、ハリスの命令でここに住み始め、花屋をやりながらジェイドを見守っていた。

 ジェイドはバナジールの顔を覚えていて、始めのうちは、山を下りて来ることがあると、店に寄ってバナジールが自分用にストックしていたクッキーやキャンディーを食べながら、お母様はいつ迎えに来るのだろうか?自分はいつ家に帰れるのだろうか?と愚痴を溢して帰っていった。

 その頃は、ドゥゴエル家にいた頃と変わらない小さな可愛い女の子だったが、一年もすると目つきは鋭くなり、まだまだ幼い子どもにもかかわらず剣士のような雰囲気が漂っていた。


「ジェイド様が三才の頃でした、ムーラン様が護身のためにとジェイド様に武術を教え始めたのですが、ジェイド様はそれが本当にお嫌いで、おててが痛いとか、疲れて動けないとか言っては、稽古をさぼろうとしてムーラン様を困らせていたので、ここに来てからの変わりようには本当にびっくりしました。ただ、弓矢はお好きで、庭木や生垣、家の壁に何本も矢を射るので、その後始末にはちょっと困ってました。」


 今までそういう話を聞く機会がなかったので、興味深く彼の話を聞いた。


 彼は、野菜や花の種や苗を虚明堂に届けていて、子どもたちに野菜の育て方を教えることもあった。

 また、体が大きいので酒の仕込みの時期には、もち米や甕を運んだりする手伝もしていた。

 そういう時に目にするジェイドはとても楽しそうに、他の子どもたちと過ごしているように見えた。


 彼はやっぱりパンが好きで、自分が食べるために独学でパンを作っていが、それが評判となり花屋兼パン屋をやっていた。

 そのうち、近所で食堂を営んでいた女性と所帯を持ち、一緒に食堂を営むようになった。その後、ジェイドがドゥゴエル家に戻ってからもここで暮らしている。


 そんな話を聞きながら階段を上っていると、頂上に大きな門が見えてきた。ここが虚明堂である。


 門の所でシャンマオが門番と話を付けてくれて、エイナーは一人中に通された。


「エイナー様、お帰りの際はまた家にお寄りください、そんで、今日は家に泊まっていて下さいな。」


 そういってシャンマオは一人で階段を下りて行った。




 門をくぐり中に入ると、想像以上に広い白い石畳の広間があり、広間の先の、目の前には大きな建物と、その脇には五段になった棟の様なものが建っている。

 奥の方には大小いろいろな建物があった。広間で掃除をしている者、奥で動物の世話をしている者たちがいて、こちらに気づいて視線を向けている。


 皆、同じ形の上下に分かれた麻素材の服を着ている。下はズボンで、上は前開きのシャツを胸のあたりで重ねて、脇の辺りで紐で結んで閉じている。

 奥にある大きな建物に通され、ここで待つように言われた。


 暫く待っていると男がやって来た。


 長い黒髪の一部を頭の天辺で束ねていて、歩くたびに腰まである長い髪がひらひらと揺れて、何とも優雅な雰囲気を醸し出している。

 白い道服を身にまとい、落ち着いた物腰で近づいて来る。

 その男の顔は誰かにそっくりであった。

今回はいかがでしたでしょうか?


ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。


よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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