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第81話 マラトとの対面

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

 思えば、マラトと面と向かって話をするのは初めてだ。

 以前は、少し離れた場所から一方的に見ていただけだった。


「お前は、誰だ?」


「しらばくれる必要はない、話くらいは聞いているだろう。それに私が誰かなんてことよりも、君はズーハンの心配をするべきだ。」


 薄ら笑いのマラトがそう答えた。


 まずは俺の質問に答えろよ。エイナーは心の中で呟いた。この質問に答えない感じも似ている。全くいけ好かない。


「初対面で、そちらが話し掛けて来たのだから、自分から名乗ったらどうだ?」


「それは失礼したね。私の名はマラト ベルカント。初めまして、エイナー ナーゲルス。」


 マラトは薄ら笑いのまま、素直に名乗った。


「何故、私がエイナー ナーゲルスだと思う?人違いかもしれないだろう。」


 ただ、素直に認めるのが悔しくなって、エイナーは、訳の分からないことを言いたくなった。


「君とくだらない話をしている時間はないのだよ。リュウ・ズーハン…いや、ジェイド・ナーゲルスと言った方が分かるかな?今、彼女の命は私の手中にある。あまり、私を怒らせない方がいいぞ。」


 こういう時は、とにかく、焦ってはいけない。話の主導権を相手に奪われてはいけない。エイナーは、そう肝に銘じて考えを巡らせていた。


 彼女が捕らえられたということは、ズーシュエンはどうなったのだろうか?だが、再び二人がマラトの隠れ家に向かった後、指輪は青く光っていない。であれば、悲劇的なことが起こった可能性は低い。

 もし、こいつが嘘をついているとしたら、何のためだろうか?


「お前が、彼女を捕らえたという証拠はあるのか?」


「証拠などないよ。事実を述べているだけだ。信じるも信じないも君の自由だ。」


 自信に満ち溢れた表情だ。あくまでも主導権は自分が持っていると言わんばかりの表情をしている。それも気に入らない。


「それで、私にどうしろと?」


 何食わぬ表情を装い、エイナーは答えた。


「私と一緒に来てもらいたい。」


 マラトは、またも薄ら笑いのまま答えた。


「嫌だと言ったら?」


「君は来るよ。彼女の最後の望みを、君はかなえてやりたいはずだ。」


「どうせその後は、ジェイドも私も始末するつもりだろう?そんな所にノコノコついていく訳ないだろう。」


 その言葉を聞いたマラトは、心なしか広角を上げて、


「芝居が下手だね。君は彼女を心配している、心配でたまらないって顔に書いてあるよ。」


「それは、まあ、心配だよ。でも、自分の命も大事だからね。」


 そう答えながらエイナーは考えていた。


 マラトが、本当にジェイドをらえたとして、自分をわざわざ呼びに来るだろうか?しかも二人を会わせようとするだろうか?


 ジェイドに何かさせたいのか?そのために俺もらえて、俺をだしにしてジェイドを脅し、彼女に何かさせようということか?


 もしかすると、ジェイドはつかまってすらいないのではないか?俺をだしにして彼女をおびき寄せようとしているのではないか?


 だが、確証はない。どうする?俺。


 自分が焦って、下手な動きをすれば、彼女を危険にさらす可能性だってある。こういう時どうすればいいんだろうか。


 暑くもないのに、汗が額を流れる。


 指輪だって、どこかに落としてしまっただけかもしれない。


 だから光らなかったのかもしれない。


 いくらズーシュエンが強いとはいえ、マラトの部下は何人いるんだろうか?(かな)わない数だったのだろうか?


 もしくは、ジェイドが一人で動いてしまったのか?

 ジェイドだって、そう簡単に捕まるとは考えられない。いや考えたくないだけか?


 もし自分がマラトについて行かなかったら、ジェイドはどうなるのだろうか?


 考えても、考えても何をどうするべきかが分からない。


 もうここは、危険を冒してでもマラトについて行くしかないと思ったその時、


 視界に見慣れた何かが入り込んで来た。


 建物の影に隠れてこちらを見ている。


 ムーだ。


 何でここにムーがいるんだ?ただ似ているだけの他の犬か?


 いや、あれはムーだ。


 こちらに何か訴えかけているように見える。

 ジェイドか捕まったことを伝えに来たのか?


 自分の視線の先を悟られないように、そのまま悩みこんだふりをした。


 そして、エイナーは冷たい表情で言い放った。


「俺は行かない。お前の好きにすればいいさ。」


 そして、マラトの横を無言で通り過ぎた。


「後悔してもしらないぞ。」


 後ろから低い声が聞こえた。聞こえない振りをしてそのまま歩き続けた。


 少し歩いたところで、背後に微かに人の気配を感じ、振り返った。

 見知らぬ男が、木の棒を振り上げていた。

 すんでの所でけて、そのまま、全力で走った。






今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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