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第80話 モーイエへのお願い

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

 グレナディでは、ジャーダン討伐に向けて、サムートたちが最終調整を進めていた。


 既に、こちらの動きがジャーダン側に漏れている可能性があり、ジャーダン側には、サムートが反乱を画策しているという話が流れているようだった。

 ただし、これがアラン二世の王命であること、ノンイン、ムンドと同盟を結んでいることはまでは気づかれていないようだった。


「ジャーダン側も攻撃に準備を始めていると思う。これ以上、時間をかける訳には行かない。アサヤ将軍が承諾してくれているだけでも有難い。これで、アルーム軍の三分の二を確実にパレオス攻撃に出兵させることが出来る。明後日の早朝に、作戦開始の狼煙のろしを上げる。」


 サムートが宣言すると、その場にいた、アサヤ将軍を始め、アルーム軍の将校たちが頷いた。


 狼煙のろしの合図を皮切りに、ムンド、ノンインもパレオスに攻撃を開始する手はずになっている。


「いよいよ始まりますね。緊張するな。」


 エイナーが隣のマチアスに呟いた。


「始まる前の緊張感が一番い嫌だな、始まってしまえば、無我夢中にやるだけだからな。」


 意外なことにマチアスも緊張した面持ちだった。


「マチアスでも緊張することあるんですね。」


 エイナーは、失礼なことをさらっと言った。


「当たり前だろう。」


「でも、マチアスはこの戦いに関わる義務はないのだから、いつでも離脱できますよ。」


「そうはいかない。ジェイドが帰るまでは、ここに留まらねば。」


 それを聞いたエイナーは、一瞬、それは師弟愛から来る言葉か?と勘違いをし、感動しそうになったが、契約不履行になって支払いがされないことへの危惧きぐであることに気づき、彼らしいと納得し、ボソッと呟いた。


「だったら、ジェイドの方に行けばいいのに。何で、こっちに来るかな?」




 その日の午後、落ち着かないエイナーは、モーイエの所に出向くことにした。


 彼女と話をしていると、何となく落ち着くような気がした。


 それに、ジェイドとズーシュエンとも会わないまま、パレオスに向かうことになる。何故か分からないが、マチアスも一緒にパレオスに行くつもりだ。二人にもし何かあったら、モーイエに彼らの手当をお願いしようと考えていた。


「本当に、勝手なお願いで申し訳ありません。」


 エイナーはそう言って、ジェイドたちが滞在している村と宿の名前を書いた紙をモーイエに渡した。


「分かりました。ここを離れるのに、五日ほど準備が必要です。その後、この宿に向かいます。」


「本当に、本当にありがとうございます。本来ならばマチアスが二人の医療サポートをするはずなのですが、彼は一緒にパレオスに行くことになってしまって。でも、モーイエ先生が留守の間、ここの診療所は誰が面倒を見るのでしょうか?」


「隠居した父が面倒を見てくれます。腕は確かなのですが、酒癖が悪くって。」


 モーイエが苦笑いをしながら答えた。


「お父様は、何処にお住まいなのですか?」


「近所ですよ。」


「え?」


「ああ、父は頑固でね。自分は隠居したんだから、もう患者は見ないって言うんです。でも、五日くらい毎日お願いすると、引き受けてくれるんですよ。それに、今も、患者さんは診てるんです。だけど、酔っぱらいの趣味だとか言って、気分次第で無償で診てますね。」


 そう言って笑顔になった。


「そういうことですか。」


 エイナーも笑顔になった。




 モーイエと暫し会話をして、気分がほんわかしたエイナーは、気持ちよく城に向かった。


 そんな彼の視界にどこかで見たことがある黒い馬車が割り込んで来た。

 その途端、ほんわかした気分が一瞬でぶち壊しになった。


 そして、馬車から黒い服の大柄な男が降りてくる。


 エイナーはずっと考えていたことがあった、この男、誰かに似ている。


 そうだ、学生のころ校内にあった教会の牧師に似ている。大柄で短い髪、詰襟の黒い服を着て、異様な威圧感があった。潔癖な人で、きれいな顔立ちの男子生徒に異様に優しかった。

 エイナーも入学して1年間くらいは優しくしてもらっていたが、何が切っ掛けだったのかは分からないが、ある日突然、厳しくなった。その後は、やってもいないことの濡れ衣を着せようとしたり、罵られたりした。あいつは学生時代を通しての天敵だった。


 そんなことを考えていると、男が目の前に立ち、口を開いた。


「ズーハンを捕らえた。君に会いたいと言っている。最後の願いを叶えてやりたくてね。」


 やっぱりこの手の男は、天敵だ。ろくなことを言わない。





今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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