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第79話 再びグレナディへ

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

 ジェイドは宿でウズラを待ち、ズーシュエンは近隣の村や集落にそれらしき男たちがいないかを見て回った。そんな日が五日続いた。


 ジェイドの所には、あの後、二人組の男が一度やって来た。そのうちの一人はウズラではない普通の兵士だった。


 ズーシュエンは一人ずつ二回遭遇し、一人は倒し、一人には逃げられてしまった。


「倒すことが出来たのは、計六人か……そもそも何人いるんだ?」


「何十人もいるようだったら、一人ずつ出し惜しみもしないだろうから、いたとしても十数人くらいか。やっと半分って所かな。」


「そろそろ、わざと捕まってみようかな。そうしたら、マラトの所にまた行けるだろう。」


「それは、お勧めしないな。まだ、奴らに焦りが見えない。もう少し何か手を打たないと……。今後はジェイドの所に二人以上でやって来る可能性が高い、流石にウズラレベルのやつらが複数で来た場合は、君だって危険だ。」


 ズーシュエンのその言葉に、ムスッとした顔で答えた。


「四人までならば問題ない。」


「頼もしいね。私は三人でもかなり面倒だ。」


 そう言って、ちょっと苦笑いをした。


「兎に角、別行動は止めよう。ただ、一か所だけ確認したい場所があるから、明日の朝、そこを確認したら戻って来る。」


「心配性だな、まあいいよ。怪我人のふりもそろそろ疲れたし。」


 そう言って、ジェイドはベッドに横になり、一瞬だけ安心したような表情をした。しかし、直ぐに起き上がって、首を横に振って、自分の頬を両手でパンパンと叩き、


「気合いだぁーーーーーー。」


 と叫んだ。


「夜だぞ、静かに。」




 ズーシュエンは、グレナディ方面にある村に来ていた。


 昨日、この村の小さな礼拝堂に立ち寄った際、礼拝堂の管理をしているパン屋の主人から聞いた話が気になっていた。

 その主人の話によると、毎週、金曜日の午前中にやって来る男が、左手に黒い手袋をし、ほぼ毎週見かけるにもかかわらず、顔が思い出せないと言うことだった。

 しかし、先週やってきた際に見た顔は覚えていて、今まで気づかなかったが、その男からは甘い香りと、微かな人の気配を感じたと言って、不思議がっていた。


 そして今日が金曜日である。村人が礼拝堂に集まって来る、どう見ても異国の風貌をしているズーシュエンを見て、不思議そうな表情をする人もいたが、この辺りの人々は西夏や南風からやって来る他国の人とも交流が深く、特に気に留める様子はないようだった。


 礼拝が終わるまで待ったが、その男はやって来なかった。


 パン屋の主人も、今日は見かけなかったなと言って、残念そうな顔をした。


 パン屋の主人に礼を言って帰ろうとしたとき、ズーシュエンの視界の端を黒塗りの馬車が横切って行った。その御者は左手に黒い手袋をしていた。


 グレナディ方面に向かう馬車を横目に見送り、急ぎ宿に戻った。




「ジェイド、グレナディに戻ろう。」


 窓からではなく、扉を開けて入って来たズーシュエンが言った。


「急に、どうしたんだ?」


「馬車がグレナディに向かったようだ。」


「何のために?」


「分からないが、もしかすると、目的はエイナーかもしれない。」




 二人は直ぐに荷物を持って、宿の一階に降り、主人と女将に礼を言って宿を出た。


「あれ、ズーハン、足の怪我は?もう大丈夫なのかい?」

 普通に歩いているジェイドを見て、女将さんが、去っていく彼女の後ろから尋ねた。


「ああ、治ったよ。本当にいろいろと、ありがとう。」

 ジェイドは手を振りながら、笑顔で答えた。


 宿の主人も不思議そうな表情で、女将に言った。

「結局、医者は呼んでこなかったのか。でも、元気そうだから、良かったってことだな。」





今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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