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第75話 ズーシュエン、後ろ!

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

目の前にいる異様なほどに閂だけに執着を持つ不気味な老人、扉の向こう側の様子、近づいてくる敵、全てに集中しなくてはならず、気を張り詰めてると老人が話しかけてきた。


「中からも閂がかかっている、こちらだけ開けても入ることは出来ないぞ。」


敵にわざわざそんなことまで教えてくれて有難うと、心の中で思い、黙って扉の向こう側の様子に耳をすました。

男の声が、途切れ途切れに聞こえてくるが、内容までははっきりとは分からなかった。

途中、男の声が大きくなった。



……私はね、性急せいきゅうに結果を求めない……辛抱強く待つことが出来る。……


……何が正しいのか、お前にとって何が一番いい……それが分かるまで待つことに……頭を冷やしたほうが良い……


『待て、また逃げるのか。やめろ、放せ。』はっきりと、ジェイドの声が響いた。


……連れて行け。……



ジェイドがどこかに連れて行かれるようだ。

ズーシュエンは再び閂に手を掛け引き抜いた。老人に妨害されたが、力いっぱい引き抜いた。老人の手は、閂の摩擦と金具に引っかかったことで、血まみれになっているが、それでも閂を離そうとはせず、一度、引き抜いた閂を再び戻そうとしていた。


「申し訳ない。」


そう言って、ズーシュエンは老人の首の後ろに手刀を当て、老人を気絶させた。気絶してもなお、老人は閂を握ったままだった。


扉を開けようとしたが、動かない。

やはり老人が言うように中からも閂がかかっているようだ。


「ズーハン、聞こえるか?」

ズーシュエンが中に向かって声を掛けた。


「ズーシュエン、そこに居るのか?」

ジェイドが答えた。


「中から閂がかかっている、開けられるか?」


「は・な・せー。」


ジェイドの大声と一緒に、何がぶつかり合う様な鈍い音がした。


「いーったい……、い、今、開ける。」


叫ぶようなジェイドの声がし、中の閂が引き抜かれる音がした。


「邪魔するな。ズーシュエン、今だ。」

再び、ジェイドが大声で叫んだ。


それと同時に、ズーシュエンは扉に体当たりをした。


閂はジェイドによって途中まで引き抜かれていたが、それを何者かが、押し戻そうとしていた。

押し戻される前に、ズーシュエンが扉に体当たりをし、扉は勢い良く開いた。そして彼は広間の中に転がりこんだ。


「ズーシュエン、後ろ!」


開いた扉に吹き飛ばされ、床に座り込んだジェイドが叫んだ。


ズーシュエンが立ち上がりながら、後ろを振り返ると、片目に痣を作り、鼻血を流した男が、殴りかかって来た。

低い姿勢のまま、男の腹のあたりに体当たりすると、男は後ろに倒れた。かさず、倒れた男を剣で一突きしようとしたが、男も透かさず剣を握り、右手から血を滴らせながら押し返してきた。

男の顔には痛みに耐えるような表情はなく、何事もなく剣を握り押し返してくる。

ズーシュエンが剣を男の手から引き抜こうとしたが、強く握られていて引き抜けない。

男は、手から血を滴らせたまま、ゆっくりと立ち上がり、ズーシュエンの腹に蹴りを一撃、と同時に剣を放すと、ズーシュエンは後ろによろけた。


その隙に男は、逃げて広間から続く階段を走り降りて行った。


もう一人、ジェイドと争っていた男も、その男を追うように同時に逃げていった。


二人は、男たちを追って階段を下りた。しかし、途中まではあった血の跡もなくなっていて、途中から道が三つに分かれていたため、二人は男たちを見失ってしまった。


「マラトもこの階段を降りて行ったのか?」


ズーシュエンが、後頭部に手を当てているジェイドに尋ねた。


「そうだと思う。どれか一つに進んでみよう。」


ジェイドがそう言って、三つの階段をそれぞれ覗き込んだ。


「この階段だけ、風が来る。」


二人は顔を見合わせて、左側の階段を降りて行った。





志村、後ろ!

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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