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第73話 仇との再会

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

 丘の上を、黒塗りの馬車が走って行く。


 ズーシュエンとジェイドは岩場に隠れ、丘を見上げた。


「多分、マラトの馬車だ。」

 ズーシュエンがジェイドに言った。


 ジェイドは黙ったまま馬車を凝視している。馬車は、二人と同じ方角に向かっているようだった。ぺぺとムーに馬車を追わせて、自分たちもその後を追った。




 滞在していた村まで到着すると、宿泊していた宿屋の前でぺぺとムーが少し申し訳なさそうな表情を浮かべつつも、嬉しそうに尻尾を振っていた。もしかすると、この辺りで馬車を見失ったのかもしれない。


「やっぱり、おいでなすったね。」

 宿屋の主人が顔を出した。


「また、厄介になります。」


 ズーシュエンが言うと、主人は嬉しそうに頷き、そして思い出したかのように、


「昨日の夕方、例の黒い馬車を見かけたよ。東の方に走って行ったよ。」


 東の方と言えば、例の洞窟がある方向だ。多分、マラトはそこに向かったのだろう。翌朝早くに二人はその洞窟に向かった。




 洞窟がある崖の前には、平原が広がっている。隠れる場所もないので見るかることも覚悟で近づくしかない。崖の前にやって来た。そう言えば、馬車を隠す場所なんてどこかにあるのだろうか?そんなことを考えながらズーシュエンは辺りを見回した。


「またお前か。」


 頭上から声がした、見上げると、崖の中腹に黒い服を着た男が立っていた。


「お前には、恨みもなければ、用もない。俺に関わるな。」


 男はそう言って、ズーシュエンからジェイドの方に視線を移した。


「久しぶりだな、リュウ・ズーハン。」


 男がジェイドに優しく微笑みかけた。


 ジェイドは柄に手を掛けて、憎しみに震えているようにも見えた。そして何も答えなかった。


「何を震えている?怖がる必要ないだろう。」


 そう言って、小さな動物に慈悲を与えるような目をして微笑んだが、急に無表情になって言い放った。


「そうだ、これは俺からの助言だ。あの男はダメだ、お前を不幸にする、早く別れろ。ああ言う、金髪の西方の男にはろくな奴がいない。」


 ジェイドはまた何も答えなかった。マラトも何も言わずに振り返り去って行こうとした。


「待て、逃げるのか。」

 ジェイドが叫んだ。


「逃げる?お前が一人で来れば会ってやろう。」


 そう言って、マラトは去って行った。


 去っていくマラトをジェイドが追いかけようとしたとき、急に右の方向から矢が飛んできた。それを咄嗟に避け、そちらを見上げると、男が一人、こちらに向かって弓を構えている。ズーシュエンが続けて飛んできた矢を剣で叩き落とした。

 その隙にジェイドが弓を構えてその男をめがけて撃った。矢は男の頬を掠めて後ろの岩にあたり落ちた。男も逃げて行った。


 ズーシュエンは、なおもマラトを追いかけようとしているジェイドの手を掴み、引き留めた。


「相手の出方を待とう。ここで追っても逃げられるだけだ。」


「だから、今、あいつを追わなくちゃ。逃げられたら、次はいつ見つけられるか分からないだろう。」


「大丈夫だ、マラトも君には、リュウ・ズーハンには用がある。だから、相手の出方を待とう。」


 ジェイドはズーシュエンの手を振りほどこうとしたが、途中で足掻あがくのをやめ、悔しそうな表情でズーシュエンに言った。


「あいつと戦う気がないならば、邪魔をしないで欲しい。私は一人でも戦う。」


 それでもズーシュエンは彼女の手を離さなかった。


「頭を冷やせ。今のままでは、奴と戦うことすら出来ないぞ。」


 しばしの沈黙の後、ジェイドが言った。


「一人で行かせてくれ。だったら、奴も会うと言っていた。こちらから仕掛けるようなことはしない。あいつに聞きたいことがあるんだ。頼む。」


「リーインを殺した理由か?それを聞いてどうするんだ?」


「あいつの口から聞きたいんだ。」


「多分、君のせいだと言うだろう。自分よりも君を選んだことが理由だと。そして、君の母親のことを、ふしだらな女だと罵るだけだ。」


 それを聞いた、ジェイドは振り返り、ズーシュエンの目を見て微笑んだ。


「それならば問題ないよ、だって自分が選ばれたんだから。それに母上がそんな人間じゃないことを私は知っている。だから、あいつの口から理由を聞き出せたら、帰ってくる。」


 そう言って、自分が持っている爆竹や煙玉を見せた。


「逃げるときの道具も持ってるよ。」


 それでも、ジェイドの手を離せないズーシュエンだったが、暫し考えて。


「分かった。何を言われても、『何だ、そんなことか。』と言って帰ってくるんだ。決して、腹を立てたり、深追いしてはダメだよ。それに、エイナーは良いやつだ、君を幸せにしてくれる。私はここで待っている、必ず帰ってくるんだぞ。」


 そう言いって、ズーシュエンはジェイドの手を離したが、不安の入り混じった苦々しい表情のままだった。






勤労感謝の日って、日々の自分(他の人にもだろうけど)の勤労に感謝するひなのだろうか?

今日は仕事頑張ったから、ケーキ食べる~みたいなノリでいいのかな?だったら、毎月欲しいな。

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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