表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/150

第65話 仕返し

背景説明地図や登場人物紹介は後書きにあります。

「誰かと思えば、お前か。何でここに居るんだ?」


「白々しい物言いは止めろ。」

 ヨナスが声を荒げた。


「どうしたんだ、何を怒ってるんだ?」

 マチアスがとぼけた物言いで聞き返した。


「僕のカラスに何をした。」


「僕の?お前のカラスだったのか?いや~、こんなところで伝書カラスを使っているのを見過ごすわけにはいかないからな、国外での使用は禁止になっているだろう。それくらいのこと、お前なら知ってるだろう。優秀だったもんな。」


「ふざけるな、お前を許さない。」

 両手を握り締めて、苦々し表情で言い放ち、そのまま去って行った。


「物凄く怒ってますね。きっと物凄い仕返しされますよ。どうするんですか?」


「望むところだ。」


 目の奥が笑っているマチアスを見て、呆れる以外の感情が湧いてこなかった。




 夜が明け過ぎに城に戻った二人が部屋にもどると、見知らぬ黒い軍服を着たモランの兵士が待ち構えていた。


「マチアス・ジュノー、私たちについて来てもらおう。」


「何の用だ?」


「お前が危険薬物を所持しているという通報があった。持ち物と、身体の検査をする。いいから黙ってついてこい。」


 そう言われマチアスは、大人しく兵士たちに従った。


「心配ないが、何かあったら助けに来てくれ。」

 そうエイナーに言い放って、去って行った。




 結局マチアスは所持していた薬や、良く分からない薬物などなどを理由に拘留されることになってしまった。


「どうするんですか?」

 牢の格子越しにエイナーが尋ねた。


「ここを出る。お前この錠を開けられないか?」

 殴られたせいか、顔が腫れ、唇が切れたマチアスが答えた。


「鍵を探してきます。」


 マチアスが、シャツの袖先から針金を引き抜いた。

「これを使え。」


「これでどうやって開けるのですか?」


「二本ともくの字に曲げて、鍵穴の大きい方を下にしてもて、くの字にした針金を穴に差し込め。もう一本の針金で中のピンを上げるんだ。」


 そんな説明を受けながら、数分頑張ったが、マチアスの言っている意味が良く分からない。


「下手くそか、お前。こうやって開けたことないのか?」

 イライラした口調でマチアスがエイナーに言った。


「錠を開けるときは、鍵を使いますからね。針金でなんて開けたことないですよ。これじゃ埒が明かない。見張りが来る前に開けなきゃ。叩き壊します。」


 そう言って、持っていた短刀の柄で錠を叩こうとした。


「何やってるんだ、つるを持って横から叩け。」


「つる?ああ、ここか?」


 エイナーがマチアスに言われた通りに、錠を叩くと、上のつるの部分がパカッと開いた。


「うわ、こんな簡単に開いていいんですか?」


「騒いでないで、早く開けてくれ。」


 そう言われてエイナーは急いで、錠を外して扉を開けた。


「脱走出来たのは良いですけど、何処に隠れるんですか?」


「隠れる必要なんかないだろう。」


「そしたら、また捕まるだけでしょう。」


「俺が持っている薬が治療用だってことが説明できればいいんだ。そもそも危険薬物ってなんだ。」


「そんな正論言ったって始まらないでしょう。そんなの言いがかりなんですから。」


「その前に、見張りをどうかいくぐるかだ。流石に危害を加えたら、本当に捕まってしまうしなあ。」


 地下牢の出口に見張りが一人立っているため、そこをどうやって脱出するかが目下の問題である。


「見張りは一人ですね。私が気を引いている隙に出て行ってください。」


 そう言われたマチアスは、近くの壁の影に隠れた。エイナーは何食わぬ顔で見張りに近づいた。


「ありがとうございました。」


「用事は済んだか。」


「はい、ところでちょっと良い話があるんですが。」


「良い話?」


「ちょっとした儲け話です。」


「何でそんな話を俺にするんだ?」

 訝し気な顔をして見張りの兵士がエイナーに尋ねた。


「貴方の人相ですよ。強運の持ち主とお見受けしました。言われたこと有りませんか?」


「そんなこと言われたことがないな。」


「またまたご謙遜を、お耳を拝借してもよろしいでしょうか?」


 エイナーは満面の笑みでそう言って、兵士の耳元で儲け話をした。


 その隙に、マチアスが出口をすり抜けて外に出て行った。マチアスが外に出て姿を隠したのを確認したエイナーは、よりさわやかな笑顔で説明を続けた。


「ただ、この儲け話のためには、二十マルタを予め用意いただく必要があります。今のあなたなら、きっと二倍、いや三倍に増やすことが出来るでしょう。」


「二十マルタだって、そんな大金準備出来るわけがない。ふざけるのも大概にしろ。」


 兵士はエイナーを怒鳴りつけて、とっとと出ていけと言わんばかりに出口の方を指さした。


「胡散臭いやつめ、捕まりたくなかったら、ここから立ち去れ。」


 そう言われたエイナーが、笑顔のまま答えた。


「私は本当の話しかしませんよ、もし気が変わったら声を掛けてください。」


 そう言って、その場を去って行った。





カレーに砂肝、意外とうまかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ