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第63話 物忘れの薬②(もどき)

背景説明地図や登場人物紹介は後書きにあります。

宜しかったら、そちらもご覧ください。

 笑っているヨナスをガン無視して、マチアスとエイナーは自分たちの部屋に向かった。そんな二人にヨナスが苦々しく舌打ちをして、その場を去って行った。




「ムカつく男ですね。」


 部屋に戻ると、エイナーはそう言いながらも、指輪を心配げに眺めた。すると、指輪がうっすらと青く光り冷たくなった。ジェイドが怖い夢を見ている時と同じ光り方だった。


「怖い夢を見ているのかな。」

 そう呟いて、指輪を優しくなでた。


「夢を見ているってことは、生きているってことだ。大丈夫、心配するな。お前もさっさと手伝え。」

 そう言いながら、マチアスは薬作りの準備に取り掛かった。


 マチアスの指示に従い、二人で薬を作り続けた。途中で帰って来た同室のメンバーにも手伝いをさせた。


「これでも足りないくらいだな。」

 大量に出来上がった、物忘れ薬もどきを眺めてマチアスが言った。


「物忘れの持続時間も心配ですが、どうやって飲ませるんですか?」

 エイナーがマチアスに尋ねた。


「餌に混ぜて与える。」


「じゃあ、あの小屋にいる世話係をどうにかしないとですね。」


 エイナーがそう言うと、マチアスが嬉しそうに言った。


「あの石が使えるかもしれない。見本で預かっていたペタル石を粉末にしておいたんだ。」


 そう言って、薬包紙に包まれたペルタ石の粉末をエイナーに見せた。


「これを飲むんですか?いやですよ。やる気失くすだけで、気配を消すなんて出来ないでしょう。もっと簡単な方法があるじゃないですか、相手を気絶させるとか、縄で縛るとか。」


「野蛮だな。もっと穏便に済ませたいじゃないか。」


 何故か満面に悪そうな笑顔でマチアスが答えた。それを見てエイナーはピンときた。


「単に、その石の効果を試したいだけですね?」


 そう言われたマチアスの目が笑っていた。エイナーはその表情に悪寒を感じつつ、渋い表情で抵抗の意を込めて言った。


「まずは自分で飲んでくださいね。」


「勿論だ。」


 マチアスはそう言うと、直ぐに石の粉を飲んだ。


「量が分からないから、一先ずこれで少し待ってみよう。」


 暫くすると、マチアスの顔からスーッと生気が引いていくような気がした。だからと言って特に気配を感じないと言う訳でもない。


「マチアス、大丈夫ですか?声は聞こえてますか?」


 エイナーがマチアスに声を掛ると、無言のまま無表情で顔だけをエイナーに向けた。


「ああ、これやっぱり駄目なやつじゃないですか。効果が切れるのを待ちましょう。」


 そう言って、エイナーがマチアスの横に座り、頬杖をついてマチアスを眺めていると、マチアスが口の中でブツブツと何かを呟きだした。そういえば、ジェイドが同じようなことをやっていたのを思い出した。


 ジェイド曰く精神統一の一種だと言っていたような記憶がある。東方の文化だろうかと不思議に思って眺めていたのを思い出した。マチアスがこれをやっているということは、マチアスがジェイドに教えたのかもしれない。


 そんなことを考えながら、マチアスを眺めていると、マチアスのことが一瞬誰なのか分からなくなったような気がした。エイナーが呆気に取られていると、マチアスが隣で声を出した。


「これは無理だな。こんな精神統一続けながら、何か作業をするなんて無理だ。」


 それを聞いたエイナーが尋ねた。


「正気にもどりましたか?」


「ああ、始めのうちはボーっとしていたが、途中で、精神統一を試してみたんだが、どうだった?」


「最後に一瞬だけマチアスのことが誰なのか分からなくなって気がしましたよ。凄いこれがペルタ石の効果ですか!」


 驚きと感動の表情を見せたが、少し考えて真顔で言った。


「でも、これ失敗ですよね。普通にやりましょう。」


 翌朝まだ暗い時間に、二人は忘れ薬もどきを持って、カラス小屋に向かった。






毛布が欲しい時期になりました。

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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