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第62話 物忘れの薬①

背景説明地図や登場人物紹介は後書きにあります。

ご興味がある方は、そちらも是非読んで下さい。

 森を離れるころには、日が昇り始めていた。マチアスたちは急いで城に帰った。

 マチアスも想像していなかったほどの数のカラスだったようで、あれが本当に全部伝書カラスなのか?と信じられないと言わんばかりであった。


 当初の予定では、捕まえたカラスにカラス小屋まで案内させて、そのカラスの足環を外して、「物忘れの薬」なる薬を飲ませることで、効果は数日間であるが、調教されたことを忘れて普通のカラスの様に自由に飛んで行ってしまい、かなり優秀なカラス以外は帰ってこなくなると言う、何とも便利な代物を使おうと思っていたが、あれだけの数をどうしろと言うのであろうか。

「物忘れの薬」もせいぜい十羽程度分しかもっていなかった。


「材料を集めて、薬を作ろう。」


 マチアスが提案した。エイナーがそんなこと出来るのかと質問をした。


「パレオスにない物なんてないんじゃないか?」


 そう言われて、確かにそうかもしれないとエイナーも思った。


「でも、物忘れの薬なんて、人間に使ったら恐ろしいですね。」


「そこは大丈夫だ、不思議なことに鳥以外には効かない。」


 そう言われて、安心したエイナーは、

「じゃあ、早速材料を探しに行きましょう。」

 とやる気をみなぎらせて言った。


 流石は、今イズミールで一番栄えている都パレオスである、ほとんどの材料がそろった。ただ一つ、特殊なキノコだけは見つけることが出来なかった。


 マチアスがキノコを探しに森に行こうと言い出したので、


「そのキノコってそんな簡単に見つかるものなんですか?」

 エイナーが訝しいぶかしげに尋ねた。


「さあなあ、でもあのカラス小屋の近くに生えている可能性がある。カラスの糞を栄養にして育つキノコで、採れる地域は限定されていない。」


 カラスの糞とは随分と衛生面に問題がありそうな気もするが、あれだけカラスがいればもしやキノコもと言う気持ちになり、エイナーもキノコさがしを承諾した。二人で再びあの森に向かった。


 森に入り、ヨナスの小屋の方に向かった。この小屋には専門の飼育係としてか、二人の男性が常時滞在しているようで、今もこの二人が小屋の外で何やら作業をしていた。


「なんだ、留守じゃないのか。」

 マチアスが舌打ちをした。


「ここの近くを探すのは無理ですね。少し離れたところを探しましょうか?」


「ああ」


 そう言って、その場を離れた。しかし、マチアスは、


「あいつらはここで何をやってるんだ?」


 とポツリと呟いて、小屋の方に戻ろうとした。その途端、エイナーの左薬指の指輪が一瞬だけ強い青い光を放った。


「マチアス、これって……ジェイドの身に何か起こったってことですか?」


 やや、焦り気味のエイナーにマチアスが冷静に答えた。


「気絶するほどショックなことが起こったのかもしれん。マラトと対面したのか?」


「マラトと対面して気絶はしないでしょう。もしや、ズーシュエンに何かあったとか。」


 焦るエイナーに、マチアスが、


「ここで、焦っていても仕方ないだろう。簡単にどうこうされる奴らじゃない、あいつらを信じよう。」


「……そうですよね。もしかすると、マラトのアジトに潜入したのかもしれないですね、そこで何か母親関係の物を見つけてショックを受けたとか。その方が真実味がある。そう思うことにします。」


「お前って、切り替え早すぎるな。普通は妻の一大事にそんなこと言えないだろう。まあ、そこがお前の強みだけどな。」


 そう言いつつも、エイナーの目がどこか心ここにあらずなのを読み取り。


「シャキッとしろ、シャキッと。」


 と活を入れるマチアスなのであった。




 その後、散々キノコを探したが全く見つからなかった。その代わりに、別のキノコが大量に生えているのを見つけた。


「もうこれで良いんじゃないですか。」

 キノコ探しに疲れているエイナーがそう言った。


「もう、それで良い。」


 マチアスにそう言われて、エイナーは耳を疑った。


「これでいいんですか?本当に?」


「ああ、それも似たような効果があるはずだ、ただ、効果が薄いんだ。カラスがどのくらい物忘れしてくれるのかが分からない、数時間しか持たないかもしれない。その場合は、直ぐに帰ってきてしまうだろう。ヨナスのカラスは優秀揃いかもしれないからな。」


 持参した大きな袋三つにキノコを一杯に詰めて、城に帰った。




 きのこ袋を担いで城内を歩いていると、遠くからヨナスがゆったりと近づいて来て、


「先生、何をやってるんですか?そんな大きなズタ袋を担いで。お似合いですよ、なんかみすぼらしい感じが。」

 そう言ってクスクス笑った。







物忘れ激しい

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性

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