第53話 国務会議
設定、登場人物紹介などは後書きに移動しました。
ご興味ある方は後書きもご覧下さい。
エイナーとマチアスは、バナムに付き添い、国務会議の会場に入った。
明け方までの麻雀のせいで本調子ではないエイナーだったが、マチアスは特に眠そうな顔もしておらず、いつも通りに見えた。
「元気ですね。」
あくびを堪えてマチアスに声を掛けた。
「お前は元気じゃないのか?」
「いや、元気ですよ。」
そう答えて、他の大臣たちを眺めた。
現在、属国大臣は六名、元ムンド、アルーム、ギルザン、ラドール、そして最近、新たに加わった、ルインとノンイン国からの大臣である。
他にも、元からモラン国の大臣だったものが十数名おり、彼らは前方の方に着席している。
暫くすると、一番前の席に何の役割か分からない面々が、こちら側を向いて五名着席した。年齢や人種は様々だが美男美女揃いである。
気になってエイナーがバナムに尋ねた。
「あの人たちは誰ですか?」
バナムは、自分の口をエイナーの耳に近づけて、聞こえるか聞こえないかの境くらいの小さな声で答えた。
「マラトの部下たちです。」
エイナーはそれをマチアスにも伝えた。すると、マチアスが目を細めてほくそ笑んだ。珍しく、目の奥も笑っている様に見えた。
「ふーん。知っている顔が一人いるな。」
「誰ですか?」
「右から二番目の男だ。」
整った顔立ち、透き通るような白い肌、青い瞳にブロンドの髪、物腰は柔らかそうで、自信に満ち溢れた笑みを浮かべていた。どこかで聞いた風貌だ。
「どういう関係ですか?」
「昔の教え子だ。」
「え?」
エイナーは驚きつつも、その場ではそれ以上は話さなかった。
暫くすると、男が女性をエスコートしながら登場し、伴に王座の一段下の席に着いた。王座は空席のままだ。
男の方は、彼の前に並んでいるマラトの部下たちと比べてしまうと、やや見劣りはするが、整った顔立ちに、白い肌、青い瞳に輝くようなブロンドの髪。ただ、少し卑屈気な表情をしている。
この男がジャーダン ナラハルトである。
女の方は、その妻であり、アラン二世の娘、カリーナ王女である。王女は、オリーブ色の肌に黒髪、張った小鼻に横に大きな口、太くキリっとした眉で、美人の部類ではないが、意志の強さを感じさせる、独特の魅力を持った女性であった。
国務会議の内容は、大臣たちから、次に攻略を目指すハルン国、そしてユーリハ国への侵略状況の進捗が報告され、それに対して、ひたすらジャーダンが大臣たちを罵倒するというものだった。罵倒するときのジャーダンの表情が悦に入っていて、見ている方は身の毛がよだつようだった。
ジャーダンは大臣たちを罵倒しつつも、時々カリーナ王女の表情を伺い、王女が少しでも眉根にしわを寄せるような表情をすると、罵倒の勢いを弱めて相手を許すようなそぶりを見せていた。
マラトの部下たちは、つまらなそうな顔をしているか、隣のものと喋っているかで、会議の内容には興味がないようだった。
ただ、ハルン国の攻略に苦戦している話になると、マラトの部下の一人で、東方の血を引いているであろう妖艶な女が、呆れ顔で言った。
「国王は僕が骨抜きにしているんだから、手こずっている意味が分からないよ。」
声からすると男なのかもしれない。その横の男が隣の女に尋ねた。
「ユーリハには誰か送ってるの?やっぱりタユナは使えなかったね。」
「さあ、知らない。私たちが考えることじゃないもの。」
彼らのお喋りが煩わしかったか、ジャーダンが咳払いをした。
五人は不機嫌な表情になって、喋るのを止めた。
あくびを堪えながら、話を聞いているエイナーは、こんな会議があと四日も続くのかと思うと、胃が痛くなる思いがした。ただ、ユーリハ国への侵略状況の話になると真剣に聞き入った。
マラトは基本的に国務会議に参加しないという前情報の元、ジェイドたちはマラトを探しに行っています。
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今回のお話はいかがでしたでしょうか?
ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。
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自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。
参考資料:
地図
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)
アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)
カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
マルチナ・アリア:サムートの婚約者
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性
ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下
バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理
アルタイル(通称:アル):バナムの部下
カジャナ・ポナー:サムートの主治医
ナズ:カジャナ医師の助手
アスリ:カジャナ医師の助手
メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性




