第39話 指輪の秘密
始めまして、白黒西瓜です。
某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。
ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。
若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。
今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。
自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。
参考資料:
地図
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)
アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性
ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下
バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理
アルタイル(通称:アル):バナムの部下
カジャナ・ポナー:サムートの主治医
ナズ:カジャナ医師の助手
アスリ:カジャナ医師の助手
エイナーがサムートの部屋に潜入している間、ジェイドたちは城の西側を探索していた。アルが言う通り西側には倉庫が立ち並んでいた。
「凄い数の倉庫だな。南と北から入って来る物資で国全体をカバーしているのか。」
立ち並ぶ倉庫を見上げながら、マチアスが呟いた。
三人で扉が開いている倉庫があれば中をチラ見しながら、どういったものが保管されているのかを何となく見回っていた。そのうち、アルが止めに来るだろうと思っていたが、彼は姿を現さなかった。
急にジェイドが立ち止まり、自分の左手の薬指に付けている黒い指輪を見た。
「どうしたんだ?虫にでも噛まれたか?」
冗談交じりにマチアスがジェイドに尋ね、彼女の指輪が極薄く青く光っているのに気づいて、再び尋ねた。
「黒銀の指輪か、もう一つはエイナーが付けているのか?」
「そうだ。」
「そのくらいの光ならば、大したことはなさそうだな。」
「これはどういう意味なんだ?なんか少し冷たい感じがする。」
「お前、それを知らずにその指輪をつけていたのか?」
マチアスは少し呆れたような顔をしたが、指輪が青く光る意味をジェイドに教えた。
「同じ石から取った指輪を付けていると、片方の人間が不安や恐怖を感じている時に、もう一人の指輪が冷たくなって青く光るんだ。近くにいるときはそうならないけど、離れている時にそうなる。」
その話を聞いて、ジェイドは指輪をまじまじと眺めながら不思議そうにマチアスに尋ねた。
「じゃあ、今、エイナーは何か不安や恐怖を感じてるってことなのか?」
「そうだな、でも、かなり光が弱いから、ちょっと心細いくらいだろう。どこか暗い通路にでも迷い込んだんじゃないか?でも、指輪を優しくさすって念を送ってやると良いよ、相手に届くから。」
「念?」
そう言いながら、ジェイドが指輪に右手で触ろうとした途端、青い光が消えていつもの黒い指輪に戻った。
「もう、落ち着いたようだな。通路から出られたんじゃないか?」
「なぜ、通路縛りなんだ?」
「ん?じゃあ、シンプルに迷子になったとかにしとくか?」
折角の師匠の丁寧な返しを無視して、ジェイドは指輪を眺めて、謎に嬉しそうな表情をしていた。
「お前、意味不明にニタニタして気持ち悪いな。」
そんな師匠の声も、今のジェイドには届いていなそうだった。
エイナーはサムートの部屋を出ると、そのまま何食わぬ顔でエントランスを抜けて表玄関から外に出た。そして、城の西側に向かって歩いた。
サムート生気のない表情、乾いた唇、光のやどらない瞳を思い出すと、心がやすりで擦られたかのようにヒリヒリした。
そのまま、ずんずんと西に進んでいくと倉庫が立ち並ぶ場所にやって来た。
そう言えば、三人は大人しく西側を散策すると言っていたことを思い出し、彼らの姿を探した。直ぐに、異国からやって来た感が漂う、割と目立つ三人組が遠くから歩いて来るのが見えた。
自分たちはこんな感じで、城の敷地内をうろついていたんだなとちょっとだけ反省した。
「お、エイナーじゃないか。お前、暗い通路に迷い込んでなかったか?」
何の脈略もなくマチアスが尋ねてきた。
「え?何でそれを知っているんですか?」
ドンピシャで言い当てられて、エイナーが戸惑いながら答えた。
「俺の魔力だ。」
ニタニタした笑いを浮かべて、自分の額に押し当てた右手の人差し指と中指を投げキッスのようにこちらに向けながら、マチアスが答えた。
ジェイドとズーシュエンも、首を縦に振ってそれを肯定した。
「……魔力?そんなものあったんすか?」
真面目なエイナーですら、真面目に答えるのが阿保らしくなってしまった。
なぜ自分が暗い通路に迷い込んでいいたことが分かったのかについては、マチアスが指輪の話をしてくれたので、納得することが出来た。
何故かその横でジェイドがホクホクとした嬉しそうな顔をしていた。
「さっきから、こいつ、指輪を眺めてニタニタして気持ちが悪いんだ。」
マチアスがジェイドを指さしながら言った。
「ナルクに居た時、怖い夢を見るといつも誰かが励ましてくれている気がしたんだ。エイナーだったんだな。」
そう言って、ジェイドはエイナーを見上げた。
「そうだよ。半信半疑だったけど、本当に私の思いが届いてたんだね。」
エイナーもにっこり笑って、ジェイドを見つめた。
ズーシュエンとマチアスは、少し呆れたような、嬉しいような表情で二人の様子を眺め、その目線をどこか遠くにやった。
「他にもこの指輪には秘密があるんですか?」
エイナーが、わざとらしく遠くを眺めているマチアスに尋ねた。
「ん?他にか?……雷に打たれても無傷でいられると言われているが、本当かどうかは知らん。」
エイナーは、自分で聞いておいて、返す言葉がないのは申し訳ないと思い、「そうなのですか。」とだけ答えて、サムートの部屋に潜入した話を三人にした。
「医療助手たちの話から察するに、先代の王であった父が亡くなり、アルーム国がモラン国に占領されてしまったショックで心の病となり、今は鎮静剤などを投与されて静かにしているそうなのですが、あんな生気のない、虚ろな目をするほど鎮静する必要があるのでしょうか。それでも薬の量を増やすとか、より鎮静作用の強い薬に切り替えるという話をしていました。」
そう説明しながら、エイナーは居た堪れない気持ちが込み上げて来るのを感じた。
「病気の治療と言うよりは、大人しくさせて、部屋から出られないようにしているだけだろうな。」
マチアスが呟いた。
「やっぱり、そう思いますか?ただ、主治医のカジャナ医師は悪い人ではない様なのです。医療助手の話によると、カジャナ医師は、元々はモラン国王アラン二世の主治医だったそうなのですが、何かの理由で主治医が変更になり、その後、アラン二世の容態が悪くなったそうなのです。」
「そのカジャナ医師が主治医だったころは、アラン二世も元気だったと?」
「はい、そう話していました。なので、サムートが無茶をして、ジャーダンに目を付けられないように大人しくさせているのかもしれませんが、はやり、あんな姿のサムートを見るのは居た堪れない。」
そう言っている寂し気なエイナーを見て、マチアスとジェイドはどうしたものかと首を傾げた。
「サムートがそんな状態では、エイナーの計画も相談することができないね。」
ズーシュエンもそう言って、どうしたものかと首を傾げた。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?感想などなど教えてもらえると嬉しいです!
先日、文房具屋で400文字の原稿用紙を目にして、こんなに小さかったっけ?と驚きました。
夏休みの宿題で読書感想文3枚とか言われると、途方もなく長い文章を書かなければいけないと、これまた途方にくれたものですが、PC使うと1200文字なんてあっという間に書けてしまう。内容はともかく。
手書きで小説書くってどれだけ大変なんだろうと、しみじみ思いました。




