第34話 正体
始めまして、白黒西瓜です。
某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。
ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。
若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。
今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。
自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。
参考資料:
地図
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿
アラン2世:モラン国王
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性
ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下
南モラン地区(旧アムール国)の物資調達責任者:バナム・アルマン
「サムートだ、無事だったんだ。」
ホッとしたような、嬉しそうな表情でエイナーが呟いた。
サムートとエイナーは無言で暫く見つめ合っていた。
サムートの表情は一瞬だけ嬉しそうにったが、その後は暗く、何かに怯えたような表情になり、城の中に戻って行った。
エイナーは、もしかするとサムートが下まで降りて来てくれるかもしれないと思い、その場で暫く待っていた。
しかし、彼は降りては来なかった。
「来てはくれなさそうだな。」
ジェイドがエイナーに申し訳なさそうに言った。
「そうだね、無事な姿が見られただけでも良かったよ。でも、かなりやつれてるように見えた。」
そう言って、二人は戻って行った。
エイナーは何度か振り返って、サムートが立っていた窓を見上げた。
ジェイドもその度に立ち止まって一緒に見上げた。
二人と入れ替えに、ズーシュエンとマチアスも城の敷地内を散策しに出かけて行った。
「どうして降りて来てくれなかったんだろう……。」
寂しそうに、エイナーが呟いた。
「どうしてだろうな。」
ジェイドが何となくそう返した。
エイナーは、ふと、ここが覗き穴のある部屋だったことを思い出し、会話を筆談に切り替えた。
(筆談『』、口頭「」)
『居場所がわかったから、忍び込んで会おうと思う。彼と話がしたい。あいつの方はどうやって探そうか。』
『あいつの方は、考えがある。後で話す。うまくおびき出したい。』
おびき出すという言葉にちょっと引っかかったが、彼女なりの考えがあるのだろうと、その時は、軽くうなずいた。
口頭ではどうでも良い話を続けた。
「腹が減ったな。どこで食事ができるんだろうな。」
「本当だな、そう言う説明が何もなく、この部屋に連れてこられたな。」
「閉じ込めて、飢え死にさせるつもりだったりして。」
「猛獣の餌にするのかもしれないな。」
『物資調達部署の男は知り合いか?』
そうジェイドに尋ねられ、急に不思議なことを聞いて来るなと、理由を確かめた。
『知らない。なんでそう思った?』
『お前があの部屋に入った時、あの男が、お前の顔を見て、何か思い出したような顔をした気がした。』
そう言われて暫し考えたが、何も思い出せない。
どうやら、自分は人の顔を覚えてないことが多いようで、ジェイドにも九歳の時に会っているということは分かったが、全くその時のことを思い出せていない。そう考えると、単に自分が忘れているだけかもしれないと、不安に気持ちになった。
『分からないな、記憶にはない。』
そう答えた。
そんなやり取りをしていると、ズーシュエンとマチアスが帰って来た。
「一階に食堂があるから、腹が減ったらそこで食事をしろだとさ。」
そう言いながら、マチアスがこちらに近づいて来た。
エイナーとジェイドの筆談の内容を覗き込みながら、不思議そうにエイナーの顔を見た。
そして、自分も紙に書きこんだ。
『俺も思った。向こうが一方的に知っているだけかもしれないな。』
それを読みながらズーシュエンも頷いた。
そんなに分かりやすく、あの生真面目眼鏡男は自分に反応していたのか。全く気付かなかった。ちょっと気恥しくなり、
「お腹すきましたね。食堂に行きましょうか。」
そう言って、四人で一階の食堂に向かった。
「待遇良すぎません?他に同じような商人もいないし。」
食事が思いのほか普通に美味しく、好きなだけ食べて言いと言われ、何なら追加でデザートを食べたり、酒も飲んだりしても良いと言われたため、益々、この待遇が怪しく思えた。
「良い分には、問題ないんじゃないか?心配し過ぎだな、若者のくせに。」
口ではそう言っているマチアスだが、内心は同じ気分だろうということは見て取れた。
「とりあえず、物資一覧に準備出来るものを記載して、明日にでも担当者に提出に行こう。」
ズーシュエンがそう言って、一覧をテーブルに広げた。
「ジェイドと自分はこれくらいかな。」
そうって、提供可能な物資に×をつけて、一回分の最大納品量を記載した。
「重複する必要はないから、私はこのくらいかな。」
そう言って、ズーシュエンは二か所に×を付けて量を記載した。
翌日、昨日訪れた建物に再度訪問すると、待合室では先に何組かの商人たちが待っていたにもかかわらず、直ぐに担当者のいる部屋に通された。
「お待ちしていました。昨日はゆっくりお休みいただけましたか?エイナーさん。」
眼鏡男がそう尋ねてきたので、エイナーは努めて朗らかに答えた。
「お陰様で、よく休めました。こんなにゆっくり休養が取れたのは何週間ぶりでしょうか。」
そう言って、物資一覧を眼鏡男に手渡した。
眼鏡男は、自分のメガネに手をやって、その一覧を眺めた。
「西山からいらっしゃった、そちらの方にお伺いしたいのですが、附子は扱っていますか?」
「附子は扱いが難しいのでうちでは取り扱っていません。鎮静、鎮痛を目的とした薬草ならば他に取り扱っています。ご要望によっては提供可能かもしれません。」
ズーシュエンは表情を変えずに答えた。
「そうですか、鎮静作用が強い薬草があれば、お願いします。」
ズーシュエンは軽くうなずいた。
「そう言えば、皆さまのお名前を伺っていませんでしたね。私は、この南モラン地区で物資調達責任者をしている、バナム・アルマンです。まずは、そちらのお嬢さんからお願いします。」
そう言って、バナムはジェイドの方を見た。
この近距離で話をすれば、ジェイドが女性であることは直ぐにばれると分かっていたので、誰もバナムの『お嬢さん』と言う言葉には驚かなかった。
しかし、次のジェイドの言葉に三人は自分たちの耳を疑った。
「私の名前は、リュウ・ズーハンだ。」
お読みいただき、ありがとうございます。
いかがでしたでしょうか?
感想、コメントなどなどいただけると、本当に嬉しいです。
次回は、8/25(日)14:30の更新予定です。
この話の第1話を読み返してみたら、1万7千文字くらいありました。
今だったら、絶対5話くらいに分けてUpしたなと、、、ちょっと後悔しました。
しかも、何故か句読点の点があまりない。
点が多いと、幼い文章に見えると信じていたのかもしれません。
改行もなくて読みにくい。。。
数か月差の若気の至り。




