第31話 モラン国をめざして
始めまして、白黒西瓜です。
某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。
ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。
若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。
今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。
自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。
参考資料:
地図
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿
アラン2世:モラン国王
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性
ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下
ヤン・ジンウェンの医院で、昼間は診察の手伝いをしながら、数日寝泊まりをさせてもらい、いよいよ明日は旧アムール国の首都グレナディへ向けて出発することになった。
「本当に行ってしまうのかい、ここで手伝ってくれたら本当に助かるのに。」
そう言って、ジンウェンは豪快に笑った。笑い終わると真面目な顔で、
「グレナディに私の知り合いの医者がいる、まだそこに居ると思うから、困ったことがあったら尋ねてみると良い。」
そう言って、その医者の居場所と名前、ジンウェンからのメッセージが書かれた紙を、ズーシュエンに渡した。
「ありがとう、尋ねてみるよ。ヤン・ジンウェン、元気で、次に会う時はもっとゆっくり話ができると良いな。」
「ああ、次に会う時は酒でも飲んで語り明かそう。リュウ・ズーシュエン、気を付けて。」
そう言って、何かを思い出したように、ジンウェンがズーシュエンの耳元に顔を近づけて、気になっていたことを尋ねた。
「ジェイドは君の娘かい?」
「……そんな感じかな。」
少し苦そうな顔で答えた。
その答えに、ジンウェンは少し不思議そうな顔をしたが、直ぐに豪快に笑った。
「他の皆も元気で、気を付けて。」
医院の門を出て少し歩き、振り返ると、満面の笑顔で彼女が大きく手を振っていた。
「本当に良い人でしたね、何だろう安心感があるというか。」
エイナーがズーシュエンに言った。
「ああ、強い人だよ。今も昔も。」
「自分の事よりも、何であんなに他人のために頑張れるんだ?それが強いってことなのか?」
ジェイドが誰へとはなく、そう呟いた。
「医者としての使命感なのかな?使命感が強いから医者になったのかもしれないし……」
エイナーも独り言のように呟いた。
「それもあるだろうね、元々、使命感が強い人だったから。彼女はとても苦労して育った。その間にいろんな人に助けてもらったから、その恩返しに、自分も人を助けたいと、いつも言っていたな。」
ズーシュエンが、昔を思い出すような、少し遠い目をしてそう返した。
「凄いですね、そう思っていてもなかなか実行出来るもんじゃないのに、彼女は有言実行なんですね。」
エイナーは素直に感心してそう言った。
マチアスは、沈んだ表情のジェイドを横目に、当然のように言った。
「誰のために頑張るかなんて、自分が決めればいいことだろう。強い弱いの話じゃない。俺は家族と自分のために頑張る。」
ズーシュエンは目を伏せて考えながら、言葉を選んだ。
「そういうのは、人それぞれだからね。今、何が一番大切かってことかな。」
エイナーは特に考えるでもなく、笑顔でこれまた当然のように言った。
「今は、ジェイドと自分のことしか考えられないな。人のことを考えている余裕とかないな~。」
「……私は、自分の事だけで一杯一杯だ。いつも自分の事だけ考えている。」
そう、寂しそうに呟くジェイドに、エイナーが能天気そうな笑顔を向けて、
「ジェイドは抱えているものが大きすぎるからだよ、余裕が出来ればまた変わってくるよ。きっと。」
モラン国との国境を目指し進んだ。
本来であればピブラナ国軍が国境防衛のために軍を配置するべきところを、皇后の命令で警備を解除してしまったため、現在は無法地帯と化していた。
女性や子供たちはどこかに連れて行かれ、男たちも殺害されたか、賊の仲間に引き込まれてしまい、集落には老人だけが残っている状態だった。
昼間、岩の間や洞穴を見つけて、そこで二人ずつ交代で眠り、基本的には夜に移動した。
昼間の方が賊の活動が活発で、夜の方が比較的安全に進むことが出来た。
無論、水や食料などを売っている場所はなく、分けてくれるような余裕のある集落もないため、襲ってきた賊を返り討ちにし、許す代わりに食料と水を分けてもらい凌いだ。
エイナーとしては、賊から食料を奪い取っているみたいで、あまり気持ちが良い物ではなかったが、他の三人は何も気にせず、必要な分は遠慮なく頂いた。本当にたくましく感じた。
また、マチアスとズーシュエンはサバイバル知識に長けており、通常だったら食料にしない様な植物や小動物をどうにか食べられるように調理してくれた。
ズーシュエンはどう思っているのかよく分からなかったが、マチアスは確実にこんな状況を楽しんでいるようだった。
謎の赤青縞々のトカゲの様なものを食べながら、エイナーがズーシュエンとマチアスに、
「本当に、二人がいなかったら、どうなってたことか。この変な生き物も食べ慣れてくると、この臭みがクセになるかも。」
ジェイドも、口から細い謎の生き物の尻尾を出しながら、
「本当にそうだな。この辺で飢え死にして骸骨になっていたな。マッチ棒の墓石すら建ててもらえなかったよ。でも、この臭みはクセにはならないな。」
「マッチ棒の墓石ってなんだ?」
一枚の小さな敷物みたいに捌かれた、謎のネズミともモグラともつかない小動物を炎であぶりながら、マチアスがジェイドに尋ねた。
「何でもないよ、こっちの話だよ。」
尻尾をスルメイカの様にかじりながら、ジェイドが答えた。
そんな日々を暫く過ごし進んでいくと、国境にある要塞が見えてきた。
あれが、モラン国との国境。
国境を越えれば次の大きな都は旧アムール国のグレナディである。
そこに、サムート・ハンが居てくれることを願って、エイナーは国境に向かって歩いた。
本日も読んでいただき本当にありがとうございました。
感想など教えていただけると嬉しいです。
次回は8/18 14:30のUp予定です。
自分はまだ耐えられる暑さでも、横で犬がハアハアすると、可哀そうになってエアコン付けちゃいます。
でも、何かそれを言い訳にエアコン付けている自分がいます。脱水予防に早めのエアコンと水分補給ってことで。




