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第30話 ボヤーナの医者

始めまして、白黒西瓜シロクロ スイカです。

某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。


ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。

若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。


今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿

アラン2世:モラン国王


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下

「国境を超える前に、一度、ピブラナで状況を確認しようと思うんですけど。」


 一行は、現在のモラン国、以前のアルーム国の南西に位置するピブラナ国の首都ボヤーナに入ろうとしていた。

 その次の大きな都市は元アムール国の首都グレナディになる。


「状況を確認するって、何をどうやって確認するんだ?街の様子ならば聞いて回ればいいだろう。まあ、どこまで本当の事かなんて分からないが。」

 マチアスが少し呆れたような、不思議そうな顔でエイナーに尋ねた。


「ここに、イーロア国の王子とユーリハ国の王子が発行してくれた私の身元保証書があるんです。これを使って、ピブラナ国のお偉いさんに会って話が出来ればと思うのですが、ただ、誰に会うのが正解なのかが全く分からず。」


 隣で顎に手を当てて考え込むように、エイナーの話を聞いていたズーシュエンが

「まだ、そこに居るのか分からないのだが、ボヤーナにうちの堂出身で医者をやっている奴がいたと思う、探して話を聞いてみようか。以前はピブラナ王室の後宮で医師をやっていたこともあったと思うから、何かわかるかも。」


「いたるところに、出身者がいるんですね。」


「東方や西方だと家柄、血筋、性別なんかで職に就くのが難しい事も多いけど、イズミールは各国の方針によって、そう言うことを気にしない国もあるから、結構こっち側に散らばっているんだ。後、アルタにも多いかな。」

 そう言って、マチアスに目を向けた。


「確かに、時々出くわすなあ、東方や南風医学の医師や薬師、軍にもいる。あと、食堂や大工をやってるやつも多い気がするなあ。」


「凄いですね、正に職業訓練所ですね。」


 感心しながらもエイナーは、ズーシュエンがジェイドに言った言葉が気になって尋ねた。

「そう言えば、十二歳から戦地に赴くって話は本当ですか?少し早すぎませんか?」


「うちは孤児が多いし、いつ出ていくのも本人たちの自由でね、特に腕に自信があるものは早く堂を出て独り立ちしなければという気持ちが強い。早い子では十三、四歳には堂を出て行ってしまう。その後、きちんとした組織に入ることも出来ずに、身寄りもいない、そんな子たちが初めて戦地に行くとなると、心身共に大きな負担が伴う、誰も助けてくれる者もいない。そうなるよりは、堂を出る前に見習いとして堂士と一緒に戦地で実地訓練をさせたくてね。勿論訓練なんて生易しい物じゃないから、大怪我をすることもある。本人が希望して、こちら側も適性を見て判断するけどね。」


 そう言って、ズーシュエンは少し寂しそうな顔をしたが、直ぐに、いつもの少し微笑んだようなどこか真面目で、どこか飄々とした表情に戻っていた。


「彼女を探そう。ヤン・ジンウェン(楊金温)と言う名前で、東方・南風医学の医師をしているはずだ、少し聞いて回ろうか。」

 そう言って市場に向かった。


 市場にほとんど活気がなく、初めて訪れた者でも明らかに店の数が少なくなっているのが分かった。また、道端には、痩せ細り、汚れた服で寝ているもの、うずくまっているもが、あちこちに見られた。


 痩せすぎて異様に目がギラギラした子供が、道にしゃがみ込んでカラスに襲われながらも、道端に落ちた何かを食べようとしていた。


 ジェイドが、自分が持っていた非常食をその子どもに与えようとしたが、ズーシュエンがそれを止めた。


「他の子どもたちも集まってくる、可哀そうだが、ここで食べ物を出してはダメだ。」


「でも、何か食べないと死んでしまう。」


「あの子が食べ物を手にしても、食べられるとは限らない、他の子どもに奪われて、運が悪ければその時に殺されることだってある。人には助けられる命と、助けられない命がある。後者のことだけを考え過ぎてはいけないよ。残酷だけど諦めが必要な時もある。」


「だけど……」

 そう言って、ジェイドはその子どもに目をやり、直ぐに俯いた。


「酷い有様だな。」

 マチアスが目を細めて呟いた。何かを思い出しているようだった。




 ヤン・ジンウェンの居場所は直ぐに分かった。

 後宮医を辞めた後、街外れに自分の医院を構えて、今もそこに居るということだった。

 訪ねてみると、医院には人だかりが出来ていた。


 異臭に鼻が曲がりそうになりながらも、人だかりを抜けて医院に入った。

 中には『順番抜かしするな。』だとか『後ろに並べ。』と怒鳴るものもいたが、身なりが良い四人組を見て、患者ではないことを悟り殆どのものが大人しく通してくれた。


「ヤン・ジンウェンは居るかな?私は虚明堂のリュウ・ズーシュエンだ。」


 そう言って医院の中に入ると、奥の方に、少し白髪が混じり始めた黒髪を一つに束ねた女性が忙しそうに患者たちの対応をしていた。他にも数名の助手がいて、全員ひたすら動き回っていた。

 四人でその様子を暫く眺めていると、ジンウェンがこちらに気づき、少し間を置いて呟いた。


「見たことある顔だ……ズーシュエンか……?リュウ・ズーシュエンか?おお、良いところに来た、手伝ってくれ。他の三人も何か出来ること有るだろう?頼む。」

 そう言って、彼女は自分の患者の方に向きを戻した。



 ズーシュエンとジェイドは、助手と少し話をすると、直ぐに対応を始めた。


「これは追加料金だな。」

 そう呟きながら、マチアスは待たされている患者の所に置かれた番号を見て、数字の小さなものから順に対応を始めた。


 マチアスの対応を見たジンウェンが尋ねた。

「お前は医者か?」


「ああ、東アルタで医者をしている。」


「助かるよ、ここにあるものは好きに使って構わない。」

 そう言って、また自分の患者の方に向きを戻した。


 エイナーは戸惑いつつも、近くにいた助手に医学の知識がない者でも出来る仕事はないか?と尋ね、ひたすらお湯を沸かしては運び、器具を煮沸消毒した。




 夜になり、ひと段落ついた頃、やっとジンウェンと話をすることが出来た。


「いや、本当に久しぶりだな、元気そうだな。所で、こんな物騒なところに何の用なんだ?」


 ジンウェンは身長が高く、ややがっしりした印象で、少し白髪が交じり始めた髪を一つに束ねて、化粧っけもなく、日焼けした顔だが、精悍な顔立ちに輝く茶色の瞳には人を引き付けるものがあり、見つめられると吸い込まれそうになる。


「所用があって、モラン国を目指しているんだが、モランに入る前に、近隣国の状況を知りたくてね、誰か王室で信頼できる人物を紹介してもらえないだろうか?」


 ズーシュエンがそう言うと、訝し気にジンウェンが、


「生半可な所用で行くところじゃないだろう。まあいいや、信頼ってのは、ジャーダンの息がかかってないってことかな?」


「そう言うことだ。」


 ズーシュエンがそう言うと、ジンウェンが口に自分の拳を当てて、


「難しいね。皇后も王妃も既に取り込まれてしまっている。ほとんどの家臣が皇后に従っている。国王は、今やお飾りの存在だ……この国ももうすぐモラン国の配下に落ちる。時間の問題だ。」



 ジンウェンの話によると、皇后には三人の愛人がいたが、そのうちの一人、ヨナス・デスモンがジャーダンの手先だったようで、気づいたときには、皇后はヨナスの話にしか耳を貸さない状態になっていた。

 また、ヨナスは王妃にも上手く取り入っており、王妃もヨナスの話を信じ込んでしまっている。


 元々、皇后の権威が強く国王は皇后の言いなりになっていたが、ここ半年程の皇后の振る舞いは常軌を逸していて、自分たちには神の御加護がついているので、モラン国とは戦わなくても侵略されることは無いと言い張り、国境の武装を解除してしまった。

 その後、不思議なことに、本当にモラン国軍が攻め入って来なくなった。多分、それも皇后や王妃を信じ込ませる作戦の一つで、これから一斉に攻め入ってくるだろう。

 また、ほとんどの軍事費を削ってしまったにもかかわらず、国民からの徴税額が倍以上に膨れ上がり、多分、そのほとんどがモラン国に送られているらしい。

 国民はもう普通に生活することすらままならず、怪我をしたり、病気になったりしても病院にも行けない。まともな食事にもありつけない。そんな状態がもう三か月以上続いている。

 国民の不満は頂点に達していて、毎日のように城を囲んで抗議をおこなっているが、兵士たちに制圧され怪我をしたり、時には命を落としたりする者も出ている。


 モラン国が襲撃してくる前に、国民が城を襲うかもしれない。


 他の二人の愛人たちは、モラン国からのスパイの濡れ衣を着せられ、酷い拷問を受けた上に死罪になった。



「その、ヨナス・デスモンとはどんな男なんですか?」

 エイナーがジンウェンに尋ねた。


「ヨナスは芸術家だ。画家で詩人で音楽家だ。一年半程前に、王妃の肖像画を描く画家としてやってきたのだが、その肖像画を皇后が甚く気に入り、直ぐに皇后のお抱え芸術家となった。本当に彼の絵画を気に入ったのか、ヨナスを気に入ったのかは分からない。きれいな顔の男でね、透き通るような白い肌、青い瞳に、ブロンドの髪と典型的な色男だ。物腰も柔らかく、話し声も穏やかで甘い声をしている。」


「会ったことがあるんですか?」


「勿論。皇后や王妃が病気の時には、私が診るからね。ヨナスはいつも皇后と一緒にいる。私が診察している時も離れない。皇后が離さない感じだな。」


「ヤン・ジンウェン、お前はどうするつもりなんだ?このままここに残るのか?」

 ズーシュエンが心配そうな顔で尋ねた。


「今のご時世、何処に行ったって一緒だ、このままここで自分がやれることをやるよ。」

 少し寂しそうな表情だったが、彼女の瞳は輝いていた。

お読みいただきありがとうございました。

感想などいただけるととても嬉しいです。

次回は、8/17(土)14:30にUpを予定しています。よろしくお願いします。



台場にあるクレープ屋さんでヌテラとロータスクッキーだけという斬新なクレープを見つけました。気になって仕方なかったけど、ヒヨって普通の生クリームとフルーツ系のクレープを食べました。

ガンダムの後ろ側の日陰で、ガンダムのふくらはぎを眺めながら食べました。美味しかったです。

でも、食にもっとどん欲に生きたいと思いました。

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