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第29話 荒野の四人

始めまして、白黒西瓜シロクロ スイカです。

某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。


ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。

若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。


今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿

アラン2世:モラン国王


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫

 比較的安全と聞いた南側のルートを通っていても、モラン国が近づくにつれ状況は殺伐としていた。

 集落に入いると、どの家も扉をきっちりと閉めて、外には誰もおらず、まるでゴーストタウンのようだ。時折、窓をほんの少しだけ開けてこちらを伺っているものいるが、それ以外人の気配はほとんどなかった。皆、何かの襲撃に備えているかのようだ。


 今更のことながら、エイナーは、ジェイドがこういう所に来ること自体を不安に思った。

 いくら強いとは言え、若い女性がふらふらして良い場所ではない。


「ジェイド、本気で男の子の振りをしてくれよ。」

 心配そうにエイナーが横を歩くジェイドに目やった。


「心配しなくたって、男の子に見えてるし、女に見えたところで一緒だろう。」

 ジェイドがちょっと不機嫌な顔でエイナーを見返した。


「用心するに越したことはない、人前では余り声は出さないほうが良いな。それと、男だからと言って安全な訳じゃない、エイナーも綺麗な顔をしているから気を付けたほうが良いんじゃないか。」

 マチアスが珍しく真面目な顔で言った。


「それを言ったら、マチアスだってズーシュエンだって、危ないかもしれないじゃないですか。人の好みはいろいろだから。」


 エイナーが冗談半分でマチアスに言い返した。


「そうかもしれないな、全員気を付けるに越したことは無いな。イケメンぞろいだからな。」

 そう言って、マチアスは豪快に笑った。


 ズーシュエンはそれを聞いて、少し困ったような表情をしながらも、鼻で笑った。




「さっきから、誰か付いてきてますね。三人かな。」

 エイナーは後ろには目を向けずに、表情を変えずに小声で言った。


「ああ、そうだな、多分、物取り的な賊だろうけど、素性がわかるまでは、このまま静かにしておこう。」

 マチアスも表情を変えずに、何食わぬ顔をでそう返した。


 暫く進むと、砂埃の先に人影が見えた。多分二十人以上。


「面倒臭いことになりそうだな。」

 マチアスがやる気なさげに呟いた。


「三十人いるかな?一人八人弱くらいだ、面倒くさくないだろう。」

 ジェイドが怪訝そうな顔で返した。


「おお、相変わらず口が減らないな。戦地での実戦経験はないだろう?ちょうどいい訓練だと思って、気張らずに行け。」

 マチアスが少しいじわるな笑い顔を向けて返した。


 すると、ズーシュエンが優しくジェイドに話しかけた。

「確かに、気張らずに、丁度いい手慣らしだと思えばいい。でも、ジェイド、君はそれなりに実戦経験を積んでいる。覚えてないかもしれないけど、十二歳の時には見習いの傭兵として戦地にも出向いたこともある。体が覚えていれば心配ないよ。」


「本当か?」


「ああ、大丈夫。でも無理は禁物だ、ある程度は周りに任せてしまっていい。」


「分かったよ。」


 ジェイドらしからぬ素直な態度に、エイナーは少し驚いてそのやり取りを見ていた。

 そして、十二歳で戦地か……そう思うと、少し胸が痛くなった。


 そんな自分の心を見透かしたのか、ズーシュエンがエイナーの方に視線だけを向けて、穏やかに言った。

「エイナー、ジェイドを気遣ったり、助けようとする必要はない。自分のことに集中しろ。」


 エイナーもそう言われて、我に返り自分のことに集中した。




 砂埃が風で吹き消され、人影がはっきりした。


 確実に賊だが、盗賊にしては身なりが良い気がする。頭に布を巻き、馬に乗った髭の男が三人、その真ん中がこの賊の頭で、烏合の衆と言う訳でもいようだ。


 確かにこれはちょっと面倒かもしれないと、エイナーも思った。


「随分と変わった四人組だな、女もいるのか?金品と女を置いていけ、そうすればここを通してやる。」

 頭の右側の男が、顎ひげを触りながらそう言った。


「通してくれなくても大丈夫だ、勝手に通るから。」

 女を置いていけと言われて、カチンと来たエイナーが死んだ魚の目をして答えた。


「生意気な女だな……女にしては声が太いな。男か?」


 自分のことか?と一瞬驚いたが、それならば、それで良いやと思い、より野太い声で言い返した。


「声が野太くてなんか文句あるか。」


「全員男か、ならば話は簡単だ、ここは通さない。」

 そう言って、手に持った剣を振り落とすと、賊たちが一斉に襲い掛かって来た。


 確かに三十人以上いる。しかも、全員そこそこ戦えるようで、一撃で倒すことが出来ず、少してこずっていると、脇から別の敵が襲い掛かってくる、もたついていると、四方を囲まれる恐れもあるため、一先ずマチアスと背中を合わせて、後ろを取られないようにして戦った。


 ズーシュエンは一撃で倒していく、しかも動きに無駄がなく、瞬く間に切り倒すため、敵が勝手に倒れている様にも見えた。じっくり眺めている余裕はないのでそう見えただけかもしれないが、兎に角、敵を確実に捌いている。


 ジェイドも、少してこずる事があっても、丁寧に一手一手を繰り出し、敵を倒していた。正面の敵を戦っている時の、脇からの敵の往なし方が少しぎこちなく感じて、エイナーはヒヤッとしたが、人のことを眺めている余裕はなく、どうしたものかと不安になっていると。


「目だけに頼るな。」


 ズーシュエンがジェイドに一言いうと、ジェイドも何かを察したようで、動きが数段に良くなった。


「撤退だ。」

 そう怒鳴る声が聞こえた、残った敵たちは一斉に撤退を始めた。




 敵が撤退するや否や、マチアスが堪え切れないとばかりに、腹を手で押さえて笑いだした。

「女を置いて行けって…フハハ…エイナーのことだったのか。」


「五月蠅いよ!笑うな。」

 何故か、そう言ってジェイドがむくれた。


「ごめん、ごめん。悪かった。」

 そう言って、マチアスは涙を指でぬぐった。勿論、笑い涙である。


「大丈夫だったか。」

 エイナーがジェイドに心配そうに声を掛けた。ジェイドの手を見ると震えてはいなかった。


「大丈夫だよ。」

 そう言って、ジェイドはエイナーの方を向いた。


「大丈夫そうだな。」

 そう言って、エイナーもジェイドの方を向いた。


「それにしても、結構統制が取れた賊でしたね。珍しい。」


「頭が軍人崩れかなんかだろう、その辺の烏合の衆でも、束ねる人間がいると厄介になってくるな。」


 そう言って、マチアスはジェイドの方を向いて、ちょっと嬉しそうに声を掛けた。

「舐めたこと言って悪かったな、もう師匠って呼ばなくていいぞ。」


 そう言われたジェイドが少し照れくさそうに

「師匠は師匠だよ。そして、ズーシュエンはやっぱりお母さんだ。」

 と、意味不明なことを言った。

いよいよ、エイナーとジェイドは本丸に向かって動き始めました。次回は…水曜日の14:30Up予定です。

引き続きよろしくお願いします。


この話を面白い、よかった、気になったなどと思った方は、いいね!などなど宜しくお願いします。

感想なども聞かせていただけると、嬉しいです。


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