第28話 商人
始めまして、白黒西瓜です。
某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。
ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。
若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。
今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。
自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。
参考資料:
地図
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿
アラン2世:モラン国王
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
ユーリハ国を過ぎモラン国に向かって通過する隣国は、傍から見る分には穏やかな日常生活を送っているように思えた。
「まだこの辺りの国では、大きな影響は受けてないみたいですね。」
活気に溢れた市場を眺めてエイナーが言った。
「確かに、活気があるけど、少し物価が上がっている気がするな。」
市場の各店をのぞきながらズーシュエンが呟いて、野菜売りの男性に近づいて行って声を掛けた。
「最近どうだい?西山から来たんだけど、この辺りの景気は良いのかい?」
それを聞かれた男が、ズーシュエンを上から下まだじろりと見ながら答えた。
「戦乱に乗じて儲けようって感じかい?」
「まあ、そんな所だよ。」
「景気ねえ、とんとんかな。防衛費が増えた分税金も上がったし、治安も悪くなって来たから品物を運ぶにも護衛が必要だし強奪も増えたから、物価は上がったよ。だけど、モラン国の国境では戦乱も起こってるから、其の分、需要もあるからね。」
「どんなものに需要があるんだい?」
「何でもだよ、食料、衣類、馬、金銀、鉄、そしてやっぱり武器だね。お前さんは何を売ってるんだい?」
「まあ、いろいろだよ。ちなみに、情勢はどんな感じなんだい。」
男はズーシュエンに顔を近づけて、声を潜めて言った。
「モラン国の勢いは止められないね。隣国は抵抗してるが、飲み込まれるのは時間の問題だろう。」
「そうか、ありがとう。」
そう言って、その場を去ろうとするズーシュエンに男が言った。
「国境に向かうならば、ここから先は賊も多いし、治安が悪い、気を付けることだね。命か金かの世界だ。」
宿で出会ったモラン国から帰って来たという、商人からも似たような話を聞いた。
カウンターで一人で飲んでいる商人らしき男に、エイナーが声を掛けた。
「これからモラン国に行こうと思うんだけど、そっち方面から戻って来た人を知らないか?」
「おお、俺も運がよかったが、お前も運が良いな。丁度、そっちから戻って来たんだ。」
「それは有難い。状況はどうだった?」
そう言って、エイナーが彼に酒をすすめると、男は嬉しそうに、
「いいのか、遠慮なくご馳走になるよ。」
と言いながら、喉を鳴らして美味そうに酒を飲んで、一息ついて話を始めた。
「国境手前までは危険だね。取り敢えずたどり着いて、商談さえ成立すれば物資の搬送はモラン国軍の護衛が付くから問題ないんだけど、たどり着くまでが命懸けだ。国内に入ってしまえば、まあまあ落ち着いてるよ、軍人が好き勝手やってるところもあるけど、商売するにはそこまで大きな影響はないかな。」
「運がよかったって言うけど、それだけじゃ乗り切れないだろう?どうやってそんなに治安が悪い所を乗り切ったんだい。」
そう聞かれて、男は酒を飲みながら左の眉を上げて、
「うん、まだ比較的安全なルートがあってね、モラン国はユーリハ国側に向かって勢力を広げることに注力しているらしい、其の分、北と南側から入るルートは、戦乱が殆ど起こってない。商人たちは大体そのルートを使っている。モラン国が主張する国境には簡易の要塞が建てられているが、まだその先へも勢力を広げるつもりのようだから、その足掛かり兼、関所みたいな役割をしていて、関所を通過するにはちょっとした根回しが必要になる。」
「金かい?」
「そうだな、大体それで通してもらえるよ。」
男はそう言うと、酒を飲み干し、軽く手を上げて
「それでも、俺は護衛を五人雇ったが二人がやられた。せいぜい気を付けていくんだな。」
そう言って、男は立ち去った。
エイナーは席に戻り、三人に今聞いた話をし、
「南側から入ればアムール国に入れる。そのルートで行こうと思う。」
と提案した。
「商人ってことで入るんだろう、何を売りつけるつもりだ?」
マチアスが興味半分で尋ねた。
「何でもいいんじゃないかな?食料、馬、鉄、金。まあ、武器が一番売れすじみたいだけど、生憎そのラインナップがない。」
「そもそもラインナップがあるのか?」
特に興味もなさそうだが、話のついでと言わんばかりにマチアスが尋ねた。
「ああ、一応、ジェイドも私も領主お抱えの商人ってことで旅をしているから。」
そう言って、エイナーはトレーダーの割符をマチアスに見せた。
「ああ、それがあれば正に商人だな。準備が良いな。ところで、ズーシュエンは何を売ってるんだ?」
そちらには、興味深そうな表情で尋ねた。
「私もいろいろだね。それに、武器もあるよ。特に火薬の精製技術は定評があって、土木工事で使われることが多いけど武器にもなる。まあ、モラン国に売る気はないが。」
「火薬の威力はどのくらいなんだい?城壁も吹っ飛ぶばせるのか?」
右掌を上に向け、爆発するような仕草をしながらマチアスが尋ねた。
「上手くやれば、普通の城壁だったら一回で穴が開くだろうなあ。量も余り多くなくて良いから扱いやすい。」
横でそれを聞いていたエイナーが珍しく眉をひそめて
「こっちが攻める側ならば有難いけど、籠城する側だったら厄介ですね。」
「火薬はうちだけじゃなくて、他でもどんどん改良されているから、近いうちにもっと画期的な武器が出てくるだろうね。剣で戦う近接戦よりもそう言った武器を使った戦い方が主流になるのかもしれないな。」
「でも最後は人間対人間の戦いになるんじゃないのか?」
ジェイドはそう言って、ズーシュエンを見上げた。
「そうだね、そこは無くならないとは思うよ。でも、この先、どうなるかなんて誰にも分からないね。まあ、争いが無くなることが一番良いのだけれど。」
ズーシュエンは、穏やかな表情をジェイドに向けた。
「そうだな。それが一番だな。」
ジェイドはテーブルに置いた自分の手を見ながら、そう答えた。
今回はいかがでしたでしょうか?
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