第26話‐② 医療サポート契約
始めまして、白黒西瓜です。
某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。
ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。
若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。
今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。
自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。
参考資料:
地図
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿
アラン2世:モラン国王
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
「本当に、毎日来るんだな。しかも新顔もいるし。」
とフォンミンが四人と二匹に向かって言った。
「ここなら何でも気軽に話が出来て、食事と酒も付いて来るって言うんでね、しかも犬たちまで、助かるよ。」
すでに出された酒を飲みながら、マチアスはその場に溶け込んでいた。
犬たちはと言えば、ムーはエイナーの足元に、ぺぺはズーシュエンの足元にいて、師匠から餌をもらって、今はのんびりと食後のひと時を過ごしていた。
「師匠の手からならば、こいつらは餌を食べるんだな。何か悔しいな。」
自分の足元に犬たちが来ないことも悔しいのか、ジェイドがそんなことを言った。
「その犬は何て言う種類なんだ?」
フォンミンはまじまじと犬たちを眺めながらマチアスに尋ねた。
「種類は分からないが、エルフの犬と呼ばれている。エルフがまだいた頃の太古の時代に栄えていた犬種で今はもうほとんどいない。昔はもっといろんな種類の不思議な力を持った動物たちがいたらしいが、今残っているのは犬と狐ぐらいだな。」
「エルフ?西方の神話に出て来るあれか? 不思議な力って何ができるんだ?」
半信半疑でフォンミンが尋ねると、
「こいつらは、大きくなれる。」
何を言ってるんだ?と言わんばかりの顔で、フォンミンは酒を片手に犬たちを観察していたが、暫くすると気が済んだのか急に興味が無くなったようで、手に持っていた串焼きの肉を頬張り酒で流し込んだ。
「大きくなるってどれくらいなんですか?」
足元にいるムーの頭をやさしく撫でながらエイナーが尋ねた。ムーは頭を上げて目を細めていた。
「うーん、立てばこの家の天井に達するかな。」
マチアスの答えに誰も何も言わなかった。多分ジェイド以外は誰もその話を信じていなかった。
「師匠たちとも無事に合流できたし、そろそろ出発の準備をしないとね。まずはアムール国を目指すとして、そこでサムートと何を相談するつもりだ?」
ジェイドにそう尋ねられて、エイナーはずっと考えていたことを話してみようと思った。
「サムートと会って何を話そうかって、ずっと考えててたんだけどね、サムートは今モラン国王の配下にいる、だから、現モラン国王のアラン二世からの正式な命を受ければ、ジャーダン・ナラハルトを国王への謀反の罪で討つことが出来るんじゃないかと思ってるんだ。立場的にはジャーダンはモラン国王の摂政だし、不可能な話ではないと思う。実際はどのくらいアラン二世側に付くものがいるかを見定めてからじゃないと、何とも言えないことだけどね。」
その話を聞いて暫くみんな考え込んでいたが、頬杖をついたままフォンミンが言った。
「敵討ちよりも壮大な話だな。それが上手くいけば、こっちも有難いけどな。」
「確かにそれも必要な過程かもしれない。ジェイドがマラトを討てたとして、そのまま、はいどうぞと帰してもらえるとは思えない。ジャーダンにとってマラトがどういう位置づけの人物か分からないが、仲間を殺害されたとあっては、何らかの報復は想定しておく方がいいだろ。」
ズーシュエンは右手を顎に当てて、呟くように言った。
「それって内乱を起こさせるってことだよね?エイナーがサムートを唆したってことになったら、今度はエイナーだった危険な目に合うことになるんじゃないの?」
既に出来上がりかけていたが、話を聞いて正気に戻ったアリマが、心配そうにジェイドとエイナーを交互に見ながら言った。
「サムートにその気がなければ成立しない話だし、このまま、モラン国が大きくなるのを隣国も指をくわえてみている訳にはいかないだろうし。それをわざわざ自分がする必要もないと思うけど、もしサムートにその気があるならば、手伝いはしたいと思てる。まずは彼の意志を確認したい。」
「サムートにその意志があったとして、どうするんだ?」
左眉を上げてフォンミンがエイナーに尋ねた。
「もし、サムートにその意志があった場合、隣国の協力も必要になると思うんだけど、その辺りフォンミンは何かコネクションとか持ってるのかな?」
「多少はあるけど、隣国だけにサムートの協力を要請する訳には行かないな。その場合、うちがモラン国を脅威と判断して自分たちがサムート側に付くという意思表明と伴に、強力を要請する必要がある。」
「もし、今サムートが行動を起こすとしたら、ユーリハ国は動けるんでしょうか?」
エイナーの眼差しが真剣なのを確かめて、フォンミンは答えた。
「タユナの件でジャーダンがユーリハも狙っていることが明確になった、後はそれをどう捉えて、どう動くかだな。」
「まだ、国内で深刻な影響が出てないし、何とも言えないですよね。」
「そうだな、兵を出すには躊躇する段階だな。だが、今後、益々モラン国の脅威は増だろう。国内のみならず、隣国とも今後の対応を検討しないとならない段階には入ったと思う。」
「もし、モラン国の脅威が増してユーリハも兵を出すとなった場合、念のためガイアム国にも協力を要請いただけないでしょうか?私は軍を辞めてしまったので一般市民の立場ですし、モラン国に入ればもう簡単にはフォンミンともガイアム軍とも連絡が取れなくなる。その時は、アクセル・ゲイラヴォル師団長に連絡をとってもらえないでしょうか?」
「アクセル・ゲイラヴォル……、ああ、あの若造か。まだ三十にもなってないのに師団長だもんな。」
「彼をご存じなのですか?」
「ご存じって程のものじゃないけど、二回ほど面識がある。向こうが覚えているかは分からないが。わかったよ、うちが兵を出すとなった際は声を掛けてみるよ。」
「ありがとうございます。」
この話の間、ずっと緊張していたエイナーだったが、フォンミンが意外とすんなり承諾してくれたので少し安心した。アリマという目付け役も横でこの話を聞いているので、そこも有難かった。
終始その話を酒を飲みながら、他人事のように聞いていたマチアスが、不思議そうな顔で尋ねた。
「フォンミンって、偉いのか?兵を出せる立場なのか?」
「一応、ユーリハ国軍の司令官やってるんでね。軍では一番立場が上だが、政治的にはそんなに力はないかもしれないけどな。」
そう言って、フォンミンは棚に置かれた白い布で包まれている壺に目をやった。アリマも彼の目線を追って同じ壺に目をやった。
「相変わらずエイナーはちゃんと考えてるんだな。無策と言われたときは腹が立ったが、確かに自分は無策だったかもしれない。」
肉串に辛いたれをこれでもかとたっぷり付けながら、ジェイドがちょっと恥ずかしそうに笑った。
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