第26話‐① 医療サポート契約
始めまして、白黒西瓜です。
某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。
ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。
若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。
今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。
自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。
参考資料:
地図
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿
アラン2世:モラン国王
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
師匠:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
餅:ジェイドが飼っていた猫
「その師匠って、どんな人なんだ?」
良く話には出て来るが、全く人物像がつかめない師匠とやらが気になり、エイナーは尋ねた。
ジェイドは後宮付きの女性兵士たちに武術訓練をしていて、今ちょうど休憩に入ったところだった。
ジェイドは水を飲んで一息ついてから答えた。
「ミレンナの憧れの人だった人。今もか?」
そういうことを聞いたつもりではなかったので、より具体的に質問した。
「見た目は?」
「背が高くて金髪で瞳の色は緑色。笑ったような顔立ちだけど目が笑ってない感じ。ぱっと見イケメン風、いやイケおじって言うのかな。四十代後半らしい。」
「医者って言ってたけど、どういう知り合いなんだ?」
「東アルタで医者をやっていて、怪我や病気の時は勿論、健康診断、健康相談、出産、などなど、うちは家族ぐるみでお世話になっている。昔は軍医だったとかで剣技も高いし、強い。息子も医者になったらしく、師匠が留守の間は留守番してくれるようになったから、長期の遠出も出来るようになったらしい。」
「東アルタか、魔法使った怪しい医術とか使うのか?」
「時々インチキ臭いことを言うことはあるけど、概ね経験やエビデンスに基づいた医療を提供してくれるから、まあ、その点は怪しくはないよ。」
「じゃあ、それなりに良い人そうだな。」
「概ね良い人だが、金や契約にうるさいところがあって、今回もオヤジと結んでいる契約に業務追加をして正式な業務として同行してくれるんだ。」
正式な業務?敵討ちの同行が?とエイナーは一瞬思ったが、考えれば、身内でもないものが何を好き好んでそんな危ないことに参加するだろうかと考えれば、それもそうだなと納得した。
「ビジネスライクな人なんだな。ちなみに業務って具体的に何をしてくれるの?」
「確か、私とその同行者二名までは追加料金なしで、怪我や病気をした際に医療処置をしてくれる、その後の経過観察やフォローアップも含まれる。あとね、感染病等の流行地域に入ることがある場合、その予防措置の対応も可能な限りしてくれる。とかなんとか。それと、死亡したときは遺体を可能な限り回収して死亡者の希望する場所に届けるとか、同行の際に起こる自己防衛のための戦闘対応は契約に含まれるものとして、今回は最危険地域への同行とみなしその分の額を予め契約に盛り込むとかだったかな。」
「あくまで医療のサポートなんだな、どれだけ請求されるんだそれ?」
「さあ、払うのはオヤジだから、額は知らない。」
流石は過保護オヤジだな…そして、妻の憧れの人と知ってのことなんだろうか?と考えると、何てお人好しなんだろうとエイナーは尊敬にも似た気持ちを抱かずにはいられなかった。
「名前はなんて言うんだ?」
「マチアス・ジュノーだ。」
「ところで、そのマチアスは、お前のことをどうやって見つけるんだ?ここで待ち合わせしてるのか?」
「ベレンからナルク経由でモランに行くことは言ってあるから、そのルートをたどって来れば、ペペとムーが私を見つけてくれるはずだ。」
「便利だな。」
「今度こそ二匹が大きくなったところを見せたいよ、きっと驚くよ。」
朝の稽古が終わり、女性兵士たちとジェイドは職場に戻って行った。何故かジェイドも彼女たちと一緒に仕事をしていた。給料は出ていない。
ズーシュエンはフォンミンに雇われていて軍の仕事をしていた。
エイナーも何気にトレイダーの仕事があったので、発注書の処理、支払手続き、報告書などの雑務を片付けるため、お茶が飲める丁度いい店を探して歩いていた。部屋で一人でこういった作業をしている時が滅入ってしまう。旅を初めてまだ一ケ月も経ってないが、大口二件のおかげでノルマは既に達成していた、それ以外でもそれなりに売り上げを上げていた。
商人をしながら旅をして、こんな生活も良いななどと思いながら手ごろな店を見つけ入ろうとした。
店の外にもテーブルが並んでいて、外でも食事が出来るようになっている店だった。まだ昼前なのでお客は殆どいないが、犬を二匹連れた男が外の席で食事をしていた。男は今朝ジェイドが説明していた人物と特徴が似ていて、犬は自分のことを覚えているらしく、こちらに向かって尻尾を振っている。
「あの、失礼ですけど、マチアス・ジュノーさんですか?」
男がこちらを向いた。確かに顔は笑ったような雰囲気だが、目の奥が笑っていない。
「私はジェイドの夫で、エイナー・ナーゲルスと言います。」
犬が自分の足にすり寄って来たので、頭を撫でていると。
「凄いな、犬たちもジェイドも手なずけるなんて。マチアスだ。」
そう言って、手を差し出してきた。握手をすると握力が強く手が痛くなった。
マチアスの隣に座り、お茶を注文していると、
「君たちはどこに泊まっているんだ?私も同じところに宿をとるよ。」
そう尋ねられたので、城に泊まっているのでマチアスの部屋も準備するように頼んでみると言うと。
「そうだ、君のお姉さんが王子の嫁さんだったな。是非、頼むよ。」
そう言って、途中になっていた食事を再開した。
「ジェイドと私の他にリュウ・ズーシュエンと言う方にも同行してもらっているので、これから先は四人で旅をすることになります。」
「リュウ・ズーシュエンか、懐かしいな。五年ぶりかな。にしても凄いメンバーだな、夫に父親、主治医を連れて敵討ちの旅か、お嬢様だな。」
そう言われて、エイナーも確かにと納得をせざるを得なかった。
「リュウ・ズーシュエンとは知り合いなんですね。」
と聞きながら、シャンマオから聞いた話を思い出していた。ジェイドを西山から逃がす際に船にはハリスの部下以外に医者がいたと言っていたなと。
「知り合いって程じゃないけどね、面識はあるよ。彼が同行とは意外だな。」
「私がお願いしたんです。ジェイドの助太刀が出来そうな人を探していて、ハリスから紹介されました。」
マチアスが驚いた顔で
「ハリスが紹介したのか…断腸の思いだったろうな。あの二人は顔が似すぎている。」
今回はいかがでしたでしょうか?
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