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第22話 アリマの揺れる思い

始めまして、白黒西瓜シロクロ スイカです。

某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。


ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。

若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。


今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿

アラン2世:モラン国王


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長


師匠:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ピン:ジェイドが飼っていた猫

 アリマとジェイドは、後宮が管理する畑に向かっていた。


 アリマは後宮付きの兵士なので、後宮管理の土地で問題が起これば派遣されて然りなのだが、何故かジェイドが同行することになった。

 ジェイドは周りからはやたらと強い暇人と認識されていて、身元も確かなので、便利に使われている。


 いつもならば馬で向かう場所だが、たまたま、そっち方面に向かうという知り合いの馬車の荷台に乗せてもらえることになったため、二人で荷台に乗りながら朝ご飯を食べていた。


 ジェイドはここ数日の自分の態度が良くなかったことを、アリマに謝った。


「あんなことがあった後だし、気持ちが沈むのも仕方ないよ。でも、立ち直りが早かったね。」

 そう言って、アリマはジェイドのここ数日の態度を許した。


「多分、周りの根回しがあってのことだね。一人だったら蝉になっていたと思う。」

 と、パンを頬張りながらジェイドが答えた。


「蝉かぁ、それは随分と潜っている時間が長いね。そうならなくて良かったね。」

 そう言って、アリマはコロコロと笑った。




 二人は、後宮が管理する麦畑に幽霊が出るという噂があり、その真相を確認するために派遣されていた。


「幽霊なんて本当にいるのかな?」

 干しあんずをかじりながら、アリマが言った。


「いるね。」

 と、ジェイドも干しあんずをかじりながら答えた。


「また、適当なこと言って。見たことあるの?」


「見たことはない。でも、幽霊ってこの世に未練を残して死んだ人の霊だろう。あの世で『富くじ』みたいなのがあって、その特賞が幽霊になって未練を晴らすってのだったらありえるかもよ。」


「うけるね、あの世ってどこよ?」


 そう言って、二人でコロコロと笑った。


「でもさ、そんなんでも良いから、お父さんとお母さんに会いに来てもらいたいな。」

 と、アリマが言った。


「そうだな、会いに来てもらいたいな。」

 ジェイドも言った。


「そういえば、お菓子屋さんになりたいって話はどうしたんだ?」

 とジェイドがアリマに尋ねた。


「うん、成りたいけど、タユナの後釜が潜入しないとも限らないし、もう少し落ち着くまではここで働こうと思う。それに……」


「それに?」


「実は、もしかすると……私……ヤン・フォンミンのことが好きになったかもしれない。」

 と、アリマが頬を赤らめて答えた。


 ジェイドは絶句した。


「…どこが良いんだ?何もしない男ナンバーワンだぞ。」


「司令官なんて自分で動いちゃ駄目なんだよ。部下を信じてちゃんと仕事を委ねられる人がなれるものなんだと思うよ。」


 また、ジェイドは絶句した。


「…まあ、そこは議論してもどうしようもない、切っ掛けは何だったんだ?」


「タユナを火葬した日に、フォンミンとズーシュエンと飲みに行ったの。後からエイナーも来たんだけど。帰りにフォンミンが私のことを背負って帰ってくれたの。背中が広くって、匂いも大人の男の人って感じで、ドキドキしちゃった。途中で気が付いたけどそのまま寝たふりしてた。朝ごはんも作ってくれて。あの後から、フォンミンに会うとドキドキしちゃうの。」


「家に行ったのか?」


「うん、でもズーシュエンもいた。あの二人はどういう関係なの?」


「あの二人は、従兄弟だって。」


「親戚かぁ、じゃあ、私とジェイドも親戚になるかもね。」


「はあ?でもまあ、フォンミンは独身だし仕事してるし、別に悪いところはないのか……そういえば、今日のお夕飯当番はフォンミンで、食べに来いって言っていた。さっさと幽霊をとっ捕まえてお夕飯を食べに行こう。」


「何それ!行くよ。おじさん、急いで。」




 畑に着くと二人は管理人が住む家を訪ね、話を聞いた。

 管理人はやや高齢の人のよさそうな夫婦だった。


「わざわざ、お越しいただき申し訳ありません。こんなに可愛い二人が来るって分かっていたら、お菓子でも用意しておいたんですけどね。」

 そう言って、妻が微笑んだ。


 二人の話によると次のようだった。


 ここ二週間ほど前から、夕方になると麦畑に女の子の幽霊が現れるようになったという話を、ここで働く農民や近所の人から聞くようになった。女の子は七、八歳前後の金髪の女の子で、白いワンピースを着て、クマのぬいぐるみを抱いている。声を掛けると逃げて行ってしまう。いつも、夕方の少し暗くなり始めたことに現れるということだった。

 何か悪さをするわけではないが、こうも頻繁に見かけると気味が悪いということで、管理人夫婦に相談にやってくる人が増えたらしい。


「私たちも一週間前から毎日、夕方麦畑に張り込みをしてその子を待ちました。毎日現れるんです。でも、私たちの存在に気が付くと逃げて行ってしまって。」

 と、夫が言った。


「それ、生きた人間じゃないの?なんで幽霊だと思ったの?」

 と、アリマが尋ねた。


「何て言うんですかね、その女の子はカゲロウの様なのですよ。儚いというか、まるでお伽話に出て来るエルフの子どものような。」

 と夫が答えた。


「金髪に淡い色の瞳、白い肌?」

 と、ジェイドが尋ねた。


「そうです、多分、金髪というか銀色に近いかもしれません。暗くて良くわかりませんでしたが。」

 と、妻が答えた。


「ごく稀に、生まれつき肌や髪の色素が少ない人がいるらしいんだよ。もしかすると、その子はそういう子なのかもしれない。」

 とジェイドが言った。


「じゃあ、幽霊じゃなくて、普通の生きている女の子だってことですか?」

 と夫婦が口をそろえて聞いた。


「多分だけど、普通の女の子が夕方に麦畑にやって来て、何かを待ってるのかもしれない。近所にそういう子が住んでるって話を知らないか?」

 と、ジェイドが尋ねた。


「エルフのような女の子ですか?」

 夫婦は首を傾げた。


 それを見てジェイドが尋ねた。

「もしくは、最近、この辺で誰か亡くなったりしていないか?子供に限らずだ。」


 暫く考えて、妻が答えた。

「そう言えば、この近くに、とある商人の別荘がありまして、病気がちの奥様がそこで療養していることが多かったそうなんです。丁度、一カ月ほど前にその奥様が病気で亡くなられたそうです。葬儀は自宅のある市街で行われたそうなので、すっかりそのことを忘れていました。確か、そのご夫婦には娘さんがいると聞いたことがあります。でも、年齢も知りませんし、姿を見たことはありませんでしたね。」


「その別荘はどこにあるんだ?案内してもらえるか?」

 と、ジェイドが夫婦にお願いをした。




 二人は、夫婦に案内されてその商人の別荘に到着した。

 二階建てのなんとも品の良い別荘で、周りも木々に囲まれており、確かに療養にはうってつけな場所に思えた。


 アリマがドアをノックすると、中から使用人らしき男が現れた。


「国王軍の後宮勤務のものです。最近この近所にある後宮管理の畑で起こっている幽霊騒ぎについて話を伺いたいのですが、ここの主と話をすることは出来ますか?」


 アリマがそう尋ねると、使用人は主に確認を取ると言ってドアを閉めた。暫くすると使用人が戻って来てアリマとジェイドを中に通した。


 応接間には、やや高齢の品のよい女性が待っていて、


「ここの主の母です。主はいつも市街の自宅にいるか、仕事で出かけてしまっているので、ここには私が滞在しています。お話の幽霊騒ぎとはどんなことでしょうか?」


 アリマが管理人夫婦から聞いた話を説明すると、主の母は困惑した顔で答えた。


「そうですか、そんな騒ぎになっていたとは。多分それは孫のソフィアです。毎日夕方に出かけて行って、勝手に出歩いてはダメと言っているのですが、言うことを聞いてくれず、私も困っていました。」


「そのお孫さんと話をすることは出来ますか?」

 アリマが尋ねると。


「騒ぎになってしまったことは申し訳ないと思いますが、あの子が何か悪いことをした訳ではないのでしょう?であれば、本人と話をする必要はないと思いますけど。」

 そう言って、主の母である祖母は孫との面会に懸念を示した。


 しかし、アリマは諦めずにお願いをした。

「何か問い詰めようという訳ではありません。麦畑に来る理由が分かれば、何かお手伝い出来ることがあるかと思います。いかがでしょうか?」


「私が尋ねても教えてくれなくて、このまま毎日出歩かれるのも困りますし。分かりました、でも、あの子に詰問の様なことするようであれば、直ぐにお帰りいただきますからね。」

 祖母は困惑しながらも渋々了承した。




 ソフィアは、雪の妖精のような女の子で、白い肌、薄い青色の瞳、銀色の髪の美しい少女だった。

 この子に黄昏時に出会ったら幽霊と勘違いする人間がいてもおかしくはなかった。


「麦畑では何かを待っていたの?」


 とアリマが優しくソフィアに尋ねた。ソフィアは少し躊躇していたが、


「お母さんが、黄金色の麦畑を見せてくれるって約束してくれたの。だから、毎日、麦畑で待っているの。」

 と、答えた。


 今まさに、麦畑は収穫の時期を迎えて黄金色に輝いていた。あと数日で収穫が始まるところであった。


「そうだったんだね。でも、暗くなってから行ったら黄金色が分からないんじゃないの?」

 とアリマがソフィアに尋ねた。


「昼間はお外にいられないから、暗くなってから行っていたの。」

 と、ソフィアが答えた。


「この子は肌が弱くて、直接日光が肌に当たると肌が赤くなって痛みが出てしまうんです。そのため、天気が良い日の日中は、外出を極力控えています。」

 と祖母が答えた。


「そうなのか、黄金色の麦畑を見せてあげたいんだけどね。あと数日で収穫になってしまうから。どうしたものかな。」

 と、アリマが言った。


「馬車の中からじゃ駄目なのか?直接日光が肌に当たらなければ大丈夫なんだろう?」

 と、ジェイドが尋ねた。


「お外で見たい。麦畑の中を歩きたい。」

 そう言って、ソフィアは泣き出してしまった。


「そうだよね、お外で見たいよね。麦畑に入って駆け回りたいよね。多分、それは怒られると思うけど。」

 と、アリマがソフィアに声を掛けた。


「黒い長そでの上着と長ズボン、あと、つば広の帽子ってありますか?」

 と、ジェイドが祖母に尋ねた。


「あると思いますけど、何に使うんですか?」


 祖母はそう言って、使用人に準備をさせた。


 ソフィアがそれを着て、首元にも黒いスカーフを巻き、それを口元まで持ち上げると、小さなマダムギャンのようになった。全体的にはちびっこギャングだが、つば広帽子がマダム感を出してしまう。


「何か品があって格好良いな。これだけ対策すれば、昼間に外に出ても大丈夫じゃないかな?一先ず、近くまで馬車で行ってみようか。」

 と、ジェイドがソフィアと祖母に言った。


「こんなに日が照っている時間に外に出るなんて出来ません。駄目です。」

 と、祖母からストップがかかってしまった。


 少し悩んで、ジェイドが言った。

「だったら、明日の早朝はどうだ?昼間より日差しは弱いし、黄金色もわかるだろう。明日の早朝にまた来るから、その時すぐに馬車を出せるように準備をしておいてもらえないだろうか?」


 祖母は難色を示したが、ソフィア、ジェイド、アリマの三人に懇願されて、渋々承諾した。


 アリマとジェイドは、明朝再び来ることをソフィアに約束し、祖母にお礼を言って商人の別荘を後にした。




 お昼過ぎに城に着いたので、フォンミンを探し夕食の約束を取り付けて終業時間まで仕事をした。ジェイドには仕事はなかったが、アリマの手伝いをして過ごした。


「ああ、何を作ってくれるんだろう。楽しみだな。」

 と、気持ちが浮き立ったアリマが言った。


「あいつ、ちゃんと料理出来るのか?どう見てもやらなそうに見えるぞ。」

 と、ジェイドが全く興味なさげに言った。


「え、朝ご飯美味しかったよ。でもさ、フォンミンはタユナのことが好きだったんだって。どういう関係だったんだろう。」

 と、急にアリマが沈んだ声で言った。


「さあな、二人が一緒にいるところを見たことがない。私には分からん。」

 と、またも、全く興味なさげにジェイドが答えた。


「まあ、いいや。考えても仕方ない。でも、落ち込んでるだろうな、好きな人が死んじゃったんだもんね。」

 と、窓の外を見ながらアリマが言った。


 ジェイドは黙っていた。


「勿論、ジェイドのせいじゃないよ。悪いのはタユナなんだし……本当はフォンミンがやるべきだったと思うし。」

 と、アリマは窓の外を見ながら言った。


今回はいかがでしたでしょうか?


ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。


よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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