第21話 タユナの置手紙
始めまして、白黒西瓜です。
某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。
ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。
若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。
今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。
自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。
参考資料:
地図
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿
アラン2世:モラン国王
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
師匠:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
餅:ジェイドが飼っていた猫
ズーシュエンからフォンミンの家で夕食を作るから、良かったら来ればと言われ、ジェイドはとても行きたかった。しかし、今日はエイナーの所に行ったほうが良いだろうと思い、それを断り、後ろ髪を引かれる思いで城に戻った。
エイナーが部屋にいなかったので、フォンミンの執務室に向かった。
執務室でフォンミンとエイナーは、机の上に置かれた手帳のようなものを眺めていた。
「何やってるんだ?」
そう言いながら、ジェイドは二人の間に入って、二人の顔を交互に覗き込んだ。
「何だ、元気になったのか?」
フォンミンが尋ねると、ジェイドは答えた。
「まあね、蝉にはなりたくないからね。所で、この手帳は何だ?」
何事もなかったかのようなジェイドを見て、困惑しながらエイナーが答えた。
「蝉?あ、ああ、どうやらタユナの手帳らしいんだけど、フォンミンの机の引き出しから出てきたんだ。」
「もう、中は見たのか?」
そう言って、ジェイドが手帳を手に取り、開いた。
「ざっとしか見てないけど、簡単な日記みたいで、特に変わったことは書かれてなかったよ。」
そう言いながらも、エイナーは困惑してジェイドを見ていた。
「あの事件の後、タユナの家を調べたが、異様なくらい何も出てこなかった。元々なかったのか、自分で処分したのか、誰かが処分したのか。なのに、ここにこの手帳がある。何か意味があるはずなんだが。」
そう言いながら、フォンミンが頭を掻いた。
「タユナが入れたのならば、フォンミンならばわかると思って入れたんでしょうね。他の人が入れたならば罠かもしれないが…」
と、エイナーが言った。
その時、ジェイドが手帳の間に何かを見つけて、摘まみ上げた。
「イヌバラだ。」
ピンク色の押し花が、昨年四月末のページに挟まっていた。
それを見たフォンミンの表情が一瞬変わったことにジェイドは気が付いたが、何事もなかったように続けた。
「イヌバラの花言葉……分からん。赤い実が酸っぱいお茶になるやつだ。」
そういって、机の上に手帳を戻し、フォンミンに向かって言った。
「あ、ズーシュエンに明日のお夕食は食べに行くから、私たちの分も作るように言っておいてくれ。後、アリマも誘うかもしれない。」
それを聞いた、フォンミンが言った。
「明日は俺だ、食べに来てもいいぞ。アリマは誘わなくていいだろう。」
あからさまにジェイドが嫌な顔をしながら、言った。
「じゃあ、明後日にするよ。アリマも誘う。」
「明後日は、ジェイド、お前が作れ。食べることだけ考えるな。」
と、フォンミンが言うと、
「生憎、私は生粋のお嬢でね。料理は料理人がするから、したことがない。エイナーもだ。」
そう言って、ジェイドは嫌な笑い方をした。
「はあ、どの面下げてお嬢だ。お前の父親はなにをやってるんだ。育ての方な。」
「オヤジはスノースバンって所の領主をやっている。四十二歳だが妻は二十五歳でピチピチだ。そして五歳になる妹がいる。」
フォンミンが口をあんぐりさせているのをよそ眼に、ジェイドは続けた。
「そんじょそこらの二十五歳とは訳が違う、胸の張りが弾力が、正に珠玉。実家にいたときは、よく触りっこしていたものだよ、懐かしいな。ジェイドのお胸も掌に包めるくらいだから、丁度良い大きさよって褒めてもらった。」
そう言って、両手を自分の胸元で重ねて、暫しミレンナのことを懐かしんだ。
だが、直ぐに向きを変えて、
「エイナー帰ろう。」
そう言って、エイナーの手を引いて帰って行った。
「あいつは、何をしにやって来たんだ?」
そう言って二人を見送った後、フォンミンは手帳を手に取り、イヌバラの挟まっていたページを開いた。
「元気になったみたいで良かったよ。心配してたんだよ。」
と、手を引かれながらエイナーがジェイドに言った。
ジェイドは立ち止まり、掴んでいた手を放し、エイナーに自分の気持ちを吐露した。
「心配してくれてありがとう。タユナに自分の母親を重ねていたんだと思う。組織から足抜けして新しい人生を歩んで欲しかったんだけど、私にはそんな力はなかったし、どうしていいのか分からなくなった。ズーシュエンの話を聞いて、母上は最後まで私を守るために戦ったけど、自分にそんなことが出来るのかなって思ったら、自信がなくなった。でも、自信がない自分を認めたくなかった。認めまいとすると余計に怖くなった。」
そう言って、拳を握り締めた。
エイナーはジェイドの左手を自分の両手で優しく包みながら、
「話してくれてありがとう。」
そう言って、自分の右掌の上に彼女の拳を乗せた。
犬がお手をしているみたいになった。
ジェイドはお手をしたまま、話を続けた。
「それに、いつも誰かに守られて助けられているばかりで、一人じゃ何もできないって思うと、情けなくなった。」
そう言って、俯いた。
「私も同じだよ、いつも誰かに守られて助けられている。でも、それが今の自分だ。それでも、どうにか前に進まないとね。」
「エイナーもそうなのか。」
そう言って、ジェイドが顔を上げた。
「そうだね。一人で何でも出来るって勘違いすることも有るけど、気が付くと誰かに助けられてる。多分、今後もずっとそうなんだと思うよ。残念ながら。」
そう言って、エイナーは微笑んだ。
ジェイドも微笑んで、お手をしている左手を開いて、エイナーの手を握った。
翌朝、フォンミンは、ナルクの街とバラル湾が一望できる山の中腹にいた。
赤い実をつけたイヌバラの木が一面に生い茂っていた。
少し進むと、人の背丈よりも大きな石が等間隔で二列に並んでいる場所があり、その間を進んでいくと岩壁を掘って出来た遺跡のようなところがあった。フォンミンはその中に入って行った。
中は昼間でも暗いため、ランプに火をつけて中を見回した。
何もないがらんとした空間で、奥の壁に何か所かくぼんだ所があった。
その中の一つに手を入れ、中に入っている箱を取り出した、箱の中は空っぽだった。
箱の底板を外すと、そこには手紙が二通入っていて、どちらにも宛名がなかったが番号が振られていた。
フォンミンは外に出て、見晴らしのいい場所に腰を下ろして、先ず①と書かれている手紙の封を開けて読んだ。
そこには差出人の生い立ちと、これまで何をしてきたかが書かれていた。
差出人の名前は書かれていなかったが、タユナであることは間違いなかった。
そして、次のことが書かれていた。
人生で初めて好きになった人がこの手紙を読んでいる人であること。
本当は、その人に最後の悪事を止めて欲しいと思っているが、多分別の人が自分を止めるだろうと考えていること。
その人にもう一通の手紙を渡して欲しいこと。
人生の最後に人間らしい気持ちが持てたことへの感謝と、自分がいなくなっても、この手紙を読んでいる人の人生は続くのだから、その人には、ご飯を食べて、ちゃんと眠って、仕事をして欲しいと願っていること。
そして、最後に、
『この手紙を見つけてくれてありがとう。あの日のことを覚えていてくれてありがとう。』
と書かれていた。
手紙はフォンミンの涙で、所々滲んでいた。
今回はいかがでしたでしょうか?
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