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第18話 ズーハンとの別れ

始めまして、白黒西瓜シロクロ スイカです。

某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。


ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。

若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。


今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿

アラン2世:モラン国王


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性武官、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長


師匠:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

 ズーシュエンは話を止めて、言った。

「もうお昼も過ぎましたし、今日の所はこの辺にしておいて、続きは後にしましょうか。」


 終始、表情を変えずに話を聞いていたジェイドが言った。

「私は、大丈夫だから、続きを話してくれ。」


「分かりました。でもここからは、いろんなことがあり過ぎて、全てを話すことは出来ません。」


 そう言って、ズーシュエンはわずかに微笑んだ。


「貴方の母親、ヤン・リーインが私にとって特別だったこともありますが、貴方は私にとって特別な子でした。えこひいきは出来ませんでしたが、日々、成長していく貴方を側で見ることが出来たことに心から感謝しています。それに、私は自分が教えられる全てを貴方に教えたと思っています。」


 そんなズーシュエンを見てエイナーは、どう考えてもジェイドの本当の父親はズーシュエンなのに、なぜハリスにそこまで遠慮をするのか不思議に思った。

 だが、ジェイドの母親を組織から足抜けさせ、彼女に平穏な暮らしを与えたハリスへの感謝と敬意からくるものなのかもしれないとも思うと、何とも切なくなった。

 愛する人を幸せにしてくれた人、自分では出来なかった……ということなのだろうか。


 そしてズーシュエンは話を続けた。

「貴方にとっては辛いことも多かったかもしれませんが、日々の生活は楽しいことも沢山ありました。それは思い出して欲しいな。」


 そして、次のような話をした。


 ズーハンが七歳の時に堂に迷い込んできた茶トラの子猫を、ピン(餅)と名付けて面倒を見ていた。

 その猫は高齢になったが今も堂にいて、妹のュエフゥア(月花)が面倒を見ている。

 ビンはズーハンにとても懐いていたので、彼女はまたズーハンに会いたいと思っているかもしれない。


 シーツを洗って干すと、干したシーツの間を迷路代わりにして子どもたちが遊びまわり手垢を付けてしまうため、結局は汚れたシーツで寝ることになる事が度々あった。

 ズーハンも良くそうやって遊んでいたが、少し大きくなると、そうやって遊んでいる自分よりも小さな子どもたちのことを「シーツが汚れるから、あっちで遊べ」と追い払い、その子どもたちに「鬼ばばあ」呼ばわりされて、自分もシーツの迷路で子どもたちを追い回し、結局はシーツに自分の手垢も付けていた。


 弓術が得意だったズーハンは、弓矢自体の威力を高めるために、弓幹や弦の素材や取り付け方などを研究して、自分が連続で放てる最大限の張りの強さに調整した。

 それを持って狩に出かけたが、打った獲物が木っ端みじんとなり、一緒に狩に行った堂師(堂で働く堂員のうち、主に講師をしているもの。)も、他の子どもたちもドン引きだった。

 後で、熊退治の時に役に立ち汚名返上が出来きた。


 週に一度、ズーシュエンの父親のリュウ・シュエンュエ(劉轩月)が、堂にお菓子を持ってきてくれた。その日によって月餅、麻花、ゴマ団子など種類が違ったが、ズーハンはマーラーカオの日を当たりと呼んでいた。


 食事の準備の手伝いで、どれだけ早く野菜の皮をむけるかを競い合うのが流行っていたが、何故かズーハンはどれだけ多くむけるかを競いだしてしまい、ほとんどの芋の皮をむいてしまった。

 その後、皮をむいた芋を消費するために毎日芋を食べることになった。


 ズーシュエンの母親で元堂長のヤン・シィェンフゥアの稽古はスパルタで、彼女の体に木刀が掠るようになるまでは、一方的に嘔吐するほど叩きのめすという稽古を行っていた。

 一対複数でもなかなか掠る事すら難しく、若い弟子たちは、毎日毎日、叩きのめされていた。

 ズーハンは早くに彼女から一本取っていたが、ことあるごとに「くたばれ、くそばばあ」などと暴言を吐いて、彼女を怒らせていたため、その後もひたすら叩きのめされ続けていた。

 ズーハンが十一歳になる頃には、ほぼ互角で手合わせが出来るようになり、それは既に手合わせではなく、ただの喧嘩で、最後は誰かが止めに入る必要があった。

 シィェンフゥアは、何かにつけてズーシュエンに「ズーハンがここに残って堂長になってくれたらいいのに。」とぼやいていた。




 そして、次のように続けた。


「貴方は、貴方の母親が十六歳まで虚明堂で修行を積んだ話を聞いて、自分も何があっても十六歳まではここで修行を続けると言っていました、しかし、そうもいかない状況になってしまったのです。」


 それは、ズーハンが十二歳の時のことであった。


 ズーシュエンたちは、麓の町で怪しい男がズーハンのことを聞いて回っているという噂を耳にした。


 その男は大柄ではなく、ごく普通の三十代半くらいの男で特にこれと言った特徴もなく、その男と話をした人たちは、何故か顔はよく覚えてないと言った。

 服装からするとこの辺の人間ではなく、多分イズミールの方からやって来た人間で、左手だけ黒い指なしの手袋をしていた。


 その男は最初に、この堂で一番強い女の子は誰だということを聞いて来きたので、町の人たちは、それはリュウ・ズーハンだと答えた。

 その男が、詳しくズーハンのことを聞きたがったので、怪しく思った町の人たちは、ズーシュエン達にこのことを伝えに来たのだった。


 ハリスの部下たちとズーシュエンは、もし、また、あの男がやってきた時は、ズーハンを死んだことにして、ジェイドをハリスの元に帰すという計画を立てていた。


 ズーハン本人の協力が得られれば、それも実現可能であるが、当の本人が十六歳までは帰らないと言っており、それに、あの男がやって来たと知れば、自分から会いに行ってしまうことは明白だった。


 ズーハンを眠らせて、病気で亡くなったことにしてスノースバンまで運ぶことも考えたが、ズーハンは睡眠薬が効かない体質であった。以前、ズーハンが自分で自分の体に睡眠薬への耐性を付けようと、少量から飲み始めるという実験をしたことがあったが、いくら飲んでも眠らなかった。


 また、仮死状態に出来るような薬がないか探したが、探し当てることが出来ず、もし、見つけられたとしても危険すぎて多分使わなかっただろう。


 弱冠十二歳の娘ではあるが、今では、五十代になり若い頃と比べれば、力やスピードに衰えが出てきたとは言え、経験値でその辺りをカバーできている元堂長のヤン・シィェンフゥアと、ほぼ互角に渡り合えているズーハンを殺すことが出来るのは、ごく限られた堂士しかいなかった。


 また、本当に殺すのではなく、死なない程度に傷を負わせ、崖から川に突き落とすとなると、それはかなり難しいことであった。


 実際にそれをするときは、自分がやることになるだろうとズーシュエンは覚悟していた。

 また、それを自分がすることで、彼女は二度と虚明堂には戻ってこないだろうとも考えていた。


 まだ、あの男が背後にいるのかどうか定かではなかったが、一先ず、ズーハンが悪事を働いているという噂を流し、いざとなった際に、罰として殺害する口実を作ることにした。

 虚明堂では、どこかの組織や国などとの癒着を禁止しており、個人的にそう言った所に便宜を図り、その見返りを貰うという行為は、それだけで追放、場合によっては死罪となる重罪とされていた。

 ズーハンが西山の武官と結託して、虚明堂の武力を西山のためだけに使えるよう便宜を図ることを約束し、その見返りに多額の金品を貰っているという話をでっちあげて、そのデマを流したのだった。


 十二歳の女の子にそんなこと出来るはずないと、普通であれば誰も信じない話であるが、ズーハンならば不可能ではないかもしれないと思わせる何かがあり、その話は少しずつ、真実味を持って話されるようになった。


 ズーハンは、自分は何もしていないのだから、そんな噂気にする必要ないと言って、特に弁明もせずに普通に過ごしていた。




 ある日、ズーシュエンが所用で麓の町を歩いていると、突然後ろから声を掛けられた、声を掛けられるまで気配を感じなかった。


「リュウ・ズーシュエンさん、私の主が貴方に会いたいと申しております、一緒にお越しください。」


 振り返ると、町の者たちが話していた男のようで、確かに三十代半ばくらいの特徴のない男だった。

 左手に指なしの黒い手袋をしていた。顔はごく普通というか、観ている間は認識できるのだが、何か違和感があった。


「貴方の主とは誰ですか?」


 ズーシュエンが尋ねると、男は答えた。


「私の主の名はマラト・ベルカント。七年ほど前にお宅の堂に伺ったものです。主はそろそろ娘を引き取りたいと言っています。こちらにお越しください。」


 ズーシュエンは黙ってその男について行った。


 暫く歩くと、石切場の跡地に着いた。


 上を見上げると、崖の上に、黒い服を着た男が一人立っていた。


「あれが、主のマラト・ベルカントです。」

 と、男が言った。


 マラトがズーシュエンに向かって話を始めた。

「リュウ・ズーハンを引き取りに来た。と言っても、簡単に渡してくれるとは思っていない、まずはお前から始末しようと思って、ここに呼んだ。」


 そう言うや否や、マラトの横から二人の男が現れ、手にしている導火線に火をつけた。

 二本の導火線はマラトの足元の崖の方に向かっていて、その先は岩場の窪みに入っていた。多分そこに火薬が仕掛けられているのだろう。


 もし、岩場で火薬が爆発すれば、自分は崩れて来る岩の下敷きになってしまう。そう思い逃げようとしたが、気が付くと、後ろから男に羽交い絞めにされて身動きが取れなくなった。

 この男は本当に気配が分からないなとズーシュエンは少し恐怖を感じた。


 ズーシュエンが男に言った。

「このままだと、お前も一緒に岩の下敷きになって死ぬぞ。」


 男は何も言わずに、そのままズーシュエンを羽交い絞めにしていた。


 その男の力はかなり強く、簡単に抜けられそうになかったため、脇を強く締めて、男が身動きでないようにしてから、思いっきりその男の顔に頭突きを喰らわせた。

 自分の頭が割れるかと思うほど痛かったが、その甲斐あってか、男がふらついた。その隙に男の腕をすり抜けて、その男を切り、自分は出来るだけ遠くに逃げた。


 振り返ると、爆発とともに崖が崩れていた。

 多分、あの男は岩の下敷きだろう。

 崖の上を見ると誰もいなかった。


 どうやら、マラトと言う男は去ったようだった。


 崖崩れが落ち着くのを待って、男の生死を確かめに行ったが、もう、何処にその男がいるのか分からない状態だった。

 あの特徴のない男は自分を殺すために、自らも死ぬ覚悟だったのかと思うと、ズーシュエンはぞっとした。




 マラトがズーハンを狙っていることが確定したため、急いで堂に帰って、かねてからの計画を進めることにした。


 下に川が流れている崖にズーハンを呼び出した。他の堂の者たちも何事かと集まって来た。

 ズーハンに悪事を働いている証拠の証文を突き付け、彼女を崖の方に追い込んだ。


 ズーハンは予想もしていなかった展開に唖然としながら言った。

「何かの間違いだ。私がそんなことをするはずがないのを、一番分かっているのはズーシュエン、お前だろう。」


「ここに証拠があるのに白を切るとは、呆れたよ。恩を仇で返すとはこのことだな。言い訳など聞きたくない、お前を信じていたのに。」


 そう言って、ズーシュエンはズーハンを切った。


 ズーハンはそのまま崖から足を滑らせて、川に真っ逆さまに落ちて行った。


 周りで見ていた者たちの中には、悲鳴を上げて崖に走り寄ろうとするものもいたため、ズーシュエンは振り返って彼らに言った。

「裏切り者の肩を持つのか?ならば、お前たちにも裏切り者として罰を与えることになる。それが嫌ならば、ここから去れ。」


 崖の下では、ハリスの部下たちがズーハンを川から救い上げて、船で彼女を運んで行った。


今回はいかがでしたでしょうか?


ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。


よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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