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第17話 ジェイドが忘れてしまった記憶

始めまして、白黒西瓜シロクロ スイカです。

某鉄道会社のキャラクターが好きでこの名前にしました。


ロードオブザリングが好きで、その世界観をオマージュした小説を書いてみたいと思って小説に挑戦しましたが、全く違うものになりました。

若い夫婦の旅物語です。母の仇を打つべく自分を鍛え上げた娘ジェイドと、不本意ながらも彼女の復讐の完全成功に導くために頑張る結婚相手のエイナーとの旅物語です。


今の所、毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。


自分でこの小説を書いていても、人の名前や地名など混乱してしまうので、参考資料としてざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せておきます。理解の参考にしていただけると幸いです。


参考資料:

地図

挿絵(By みてみん)


家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿

アラン2世:モラン国王


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性武官、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長


師匠:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

 暫く、四人は黙っていたが、エイナーが呟くようにいった。


「そうだよな、七年間も自分の記憶がないなんて、辛いよな。自分が知っていることは限られている、もし……。」

 そう言って、ズーシュエンに目をやった。


「ええ、ジェイドが望むならば、お話しますよ。」


 と、ズーシュエンがため息交じりに言った。そして、付け加えて言った。


「ただ、貴方のお父様が、貴方に何も話をしていないのであれば、それは、貴方を危険に晒さないためにと考えてのことです。それは理解した上で聞いてください。」


「それは、理解してるつもりだよ。オヤジにとって私は幾つになっても五歳の娘のままだから。守ってやらなきゃいけないって思ってるんだろうな。」

 海の方を眺めながら、ジェイドが言った。


「それに……とても辛い話を聞くことになります。覚悟はありますか。」

 とズーシュエンがジェイドに言った。


「勿論だよ。それも大丈夫だ。」

 と、ジェイドは答えた。


 アリマが気にして言った。

「私、いない方が良ければ、帰るよ。」


「アリマが嫌じゃなかったら、ここに一緒にいてくれ。」

 と、ジェイドは言った。アリマは頷いた。




 ジェイドが虚明堂にやってきたのは、これから冬に向かう寒くなり始めた時期だった。彼女は、夜、一人で長い階段を上ってやってきた。


「だれか、ここを開けてください。」


 西方の言葉でそう言いながら門を叩く音が聞こえたため、その日の当直だった女性が、のぞき窓から覗くと、おさげ髪の小さな女の子が一人で立っていた。他には誰もいないようだったので、門を開けて中に入れた。


 その女の子は手紙を差し出しながら言った。

「この手紙を、リュー・ウーシェンと言う人に渡してください。」


 女性は、女の子を火鉢のある部屋に連れて行き、もう一人の当直に、リュウ・ズーシュエンを呼びに行かせた。


 ズーシュエンは手紙を受け取り、女の子がヤン・リーインの娘であると知り、この近くにリーインがいるかもしれないと考え、暫く辺りを探したが、誰もおらず諦めて帰って来た。女の子は疲れ切っていたようで、当直の女性が渡した饅頭を食べた後、当直室の寝床で眠っていた。



 翌朝、ズーシュエンは、起きてきた女の子と朝食を食べながら話をした。


「昨日は、一人で階段を上って来たのかい?大変だったね。」


「山の下の所で、お母様に一人で行きなさいって言われたの。ご用が済んだら迎えに行くから、それまではここでお世話になりなさいって。」


「お名前を聞いてなかったね。お名前は?」


 手紙には、彼女の名前はズーハン(紫涵)と書かれていたが、本人にも聞いてみることにした。


「ジェイド・ドゥゴエルよ。」


 と答えて、直ぐに何かを思い出し訂正した。

「違う、ズー……何とか。なんか変な名前なんだけど、思い出せない。」


「お手紙にはズーハンって書いてあるね。」


「そう、それ、ズーハン。変な名前でしょう。」


「素敵な名前だと思うよ。ここでは、リュウ・ズーハンと名乗りなさい。リュウはドゥゴエルみたいな家族のお名前だよ。」


「分かったわ。でも、どうしてお名前変えなくちゃいけないのかしら。ここでは、絶対にジェイドって名前を言ってはダメって言われたんだけど、そんなの無理よね。」


 ズーハンが持参した手紙には次のことが書かれており、赤いしずく型のピアスが同封されていた。(それは、六年前にズーシュエンがリーインに渡したものだった。)


 リュウ・ズーシュエン様

 この子の名前はズーハンです。年齢は五歳です。西方の言葉しか喋れません。

 暫くこの子を虚明堂で預かってください。用事が済み次第迎えに行きます。

 もし、大柄で左の口元に傷跡がある青い目の男が、この子を奪いに来ても、決して渡さないでください。

 ヤン・リーイン


「お母様とお買い物をしてたらね、大きな怖い男に追いかけられて、馬に乗って逃げてきたの。でも、お母様はとても強いの、あんな男すぐにやっつけて迎えに来てくれると思うから、何も心配してないの、私。」


 そう言って、ズーハンは黙々とおかゆを食べた。


「誰か具合が悪いの?」

 突然、ズーハンがズーシュエンに質問をした。


「誰も具合は悪くないよ。」

 と、ズーシュエンが答えた。


「具合が悪くなると、お母様がこれと同じものを作ってくれたの。お腹に優しいからって。」


 そういって、また黙々とおかゆを食べ続けた。




 ズーハンは、リーインが迎えに来るまで、他の子どもたちと一緒に暮らすことになった。虚明堂では三つの公用語を子どもたちに教えていたため、ある程度大きな子どもたちは、ズーハンと意思の疎通がとれた。



 ズーハンがやってきた十日後くらいに、ある男の使いだというものが虚明堂にやって来て、ノーサンストとイズミールの国境の街で、自分の主人が虚明堂の責任者と会いたがっていると言った。リーインの手紙に書かれた男かもしれないと断ろうとしたが、事情を聴くと、どうやらその男はハリス・ドゥゴエルという名前で、ジェイドの父親であった。


 ズーシュエンは一人でハリス・ドゥゴエルに会うことにした。


 ハリスは、リーインの手紙に書かれている男とは全く異なった容姿で、柔和な優しそうな男であった。


 ズーシュエンを見たハリスは、何かに驚いたようであったが、直ぐに平静に戻り、手短に挨拶をして直ぐに本題に入った。


「今、そちらにうちの娘がお世話になっていると思うが、もう暫く預かってもらいたい。それと、私の部下も一緒にお宅の堂に住まわせてもらいたいのだが、問題ないだろうか?」


「ええ、お嬢さんは預かっています。暫く預かるのも、側に誰かを置くのもうちは構いませんが、彼女は家に帰りたがっていますし、母親にも会いたがっています。」


 ハリスは暫し黙って、こう告げた。

「ムーランは、……彼女の母親は、亡くなった。」


「ムーランとは?」


 ズーシュエンが尋ねると、ハリスはことの経緯を説明した。


 ヤン・リーインとは6年ほど前に出会った。

 当時、彼女はある組織のメンバーで、自分の兄を殺害するために自分に近づいたのだが、そのことを知った後でも自分は彼女のことが諦めきれず、彼女の死を偽装して組織から足抜けをさせた。そして、ムーランと言う名前で夫婦になり、ジェイドが生まれ、平穏な日々を送っていた。

 しかし、二週間ほど前、少し遠くまで買い物に行くと言って、娘を連れて出て行ったきり帰ってこなかった。心配になって部下に探しに行かせたところ、五日前に彼女の遺体が西山とイズミールの国境で見つかった。


 周囲に聞き込みをすると、彼女の遺体が見つかる前日に、熙とイズミールの境にある村で、黒い服を着た大柄な男と小柄な女が、尋常ではない大乱闘を起こしていたという話を複数の者から聞いた。

 彼らの証言によると、次のような状況だったらしい。



 外が騒がしいので、外を見てみると、小柄な女が家々の屋根から屋根へと伝って走っていた。

 地上から大柄な男がその女に何か言いながら、手当たり次第に、鍋、丸太、斧、包丁などの物を投げつけて、進路を妨害しようとしていた。


 その男が言っている内容は「あの娘を殺して自分の所に戻ってこい。お前は優秀だから、戻ってくれば昔以上に優遇するから心配するな。早く降りて来い。」と言うようなことだった。言い方はどちらかと言うと優しかったが、それが逆におぞましく感じさせた。


 彼が投げる物で家の屋根や壁が壊わされ、壊れた壁から家畜が逃げたりして、その一帯は散々な状況になっていた。

 その女は逃げられなくなると、その男の上に飛び降りながら、持っていた剣で彼を刺そうとしたが、男は素手で女を薙ぎ払い、女は近くの家の壁に凄い勢いで激突した。しかし、女はすぐに立ち上がり反撃を続けた。切りかかっては吹き飛ばされ、フラフラになっても立ち上がり反撃を止めなかった。彼女の剣は、男の顔や腕を掠るもののダメージを与える程には至っていなかった。


 男は女に向かって笑いながら、「そんなに死にたいなら殺してやろう。そうだ、あの娘は俺が貰おう。お前のようなあばずれが、どこの馬の骨とも分からない男と作った子どもだ、お似合いの場所に売り飛ばしてやるから、安心ろ。」というようなことを言っており、その後も酷いことを言っていたようだったが、それについて目撃者たちは明言を避けた。


 始めのうちは、度を越えた夫婦喧嘩かとも思っていたが、男の言動が余りにも異常だったので、それを聞いているだけでも恐怖と嫌悪を感じ、村人たちは避難して、少し離れた場所から二人と、壊されていく家々を見ていることしか出来なかった。


 男は、立ち上がれずに膝立ちになった女の首元を持ち、女を高く掲げた。女が男の顔に血が混じった唾を吐きかけた。男は表情を変えずに女が持っていた剣を取り上げ、「お前が悪いんだぞ。」と言いながら、その剣で彼女の胸の辺りを四度貫いた。女を刺す男の顔はどこか悦に入ったような、恍惚とした表情だった。彼女は刺されるたびに血を吐き、最後は、ぴくりとも動かなくなった。


 男は、暫く、冷めた表情で動かなくなった女の顔を眺めていたが「私の言うことを聞かない、お前が悪いんだ。」と言って、女を地面に落とし、女の上に持っていた剣を投げ捨てた。そして、「服が汚れた。」と言って、男はそのまま歩いてどこかへ去って行った。


 すると、何処からともなく馬に乗った別の男がやってきて、女の遺体を回収し、大柄な男の後を追って去って行った。



 その話をするハリスの声は、涙声でかすれていた。


 そして、その周辺に娘が隠れていないかと探したが、全く痕跡がなく、もしかすると妻が育った西山にある堂に預けられているのではないかと思い訪ねたということだった。


 その話を聞いたズーシュエンは怒りに震えたが、深呼吸をして一旦落ち着き、

「分かりました。暫く、お嬢さんはうちで大切にお預かりします。」

 と、答えた。




 母が亡くなったことを知らないズーハンは、勉強や手伝いが終わって夕方になると毎日毎日、お母様はいつ迎えに来るんだろう、もしかしたらお父様が迎えに来るかもと言って、堂にある櫓に登って遠くを眺めていた。

 櫓の中は外部からはよく見えない作りになっていたので、自由に登らせていたが、夜になっても降りてこないこともあり、そういう時はズーシュエンが隣に座って、彼女の気が済むまで話を聞いたり、星座にまつわる話をしたりしなら過ごした。


 ハリスの部下たちは、堂の堂員(堂で働く職員のこと)や麓で商売をしながら、ズーハンを見守ることになった。ズーハンは、麓で商売をしているうちの一人と面識があったようで、他の子どもたちと麓に降りることがあると、彼の花屋に行ってお菓子を食べながら、愚痴をこぼしたりもした。


 三カ月が経つ頃には、彼女はすっかりここの生活に慣れ、以前のように頻繁には櫓に登らなくなった。そして、その時間を他の子どもたちと遊ぶことに費やした。冬が終わり、春になっても例の男がやってこなければ、ズーハンを家に帰そうとズーシュエンは考え始めていた。




 雪が積もった、晴れた寒い朝、突然その男はやって来た。


 朝の掃除をする時間だった。一人の男がやって来て、門の向こう側でこう言った。

「娘を引き取りに来た。門を開けろ。」


 副堂長のリュウ・ズーシュエンと、前堂長のヤン・シィェンフゥア(楊仙華)がその男の対応をした。

 様子がおかしいと感じた、シィェンフゥアの指示で、掃除をしていた子どもたちを近くの建物に避難させ、数名の堂士(堂で働く職員のうち、主に警備・警護を行う者)を門の前に呼び寄せた。武術が全く駄目な現堂長のリュウ・ュエフゥア(劉月花)も堂士たちと一緒に様子を伺っていた。


 寒い冬の日にも関わらず、袖なしの赤い道服を着た前堂長のシィェンファが返事をした。


「まずは、名乗っていただこう。」


「ヤン・リーインの夫と言えばわかるかな。」

 と、男が答えた。


 ズーシュエンはハリスと面識があり、門の向こうの男の声が、ハリスのものではないとすぐに分かったため、


「うちでは、貴方の娘さんは預かっていませんね。お引き取り下さい。」

 と答えた。


「大人しく渡せば、ここに危害を加えるつもりはない。言っていることが分かるだろう。」

 そう、男が答えた。


「わからないね。いないと言ったらいないんだ。帰ってくれ。」

 シィェンフゥアが、少しイラついた声で言った。


 シィェンフゥアは途轍もなく気が強く、脅されれば脅されるほど、意地になる質だった。



 すると、男は、子どもに呼びかけるように言った。


「出て来い。お前がここにいると、他の皆に迷惑を掛けることになる。お前のせいで、他の子どもたちも死ぬことになるんだ、お前の母親のようにな。お前の母親は本当に優秀な私の部下だった、私の下で働き続けていれば、もっと幸せになれたのに、お前を産んだせいで自分の人生を台無しにしたんだ。お前は償わなければならない、さあ、出て来て私と一緒に行こう。」


 ズーシュエンは低い声で、男の話を遮った。

「黙れ、ここに、お前の娘などいない。」


 それを聞いた男は、突然、ヒヒヒと気味の悪い笑い声をあげて、大声で話を始めた。

「ヤン・リーインを、あの女を刺した感触が忘れられなくてね。何度も胸に剣を突き刺してやった。刺すたびに苦しそうな顔で血を吐き、息絶えていく姿を。ああ、もっとぐちゃぐちゃに刺してやればよかったなあ、その方があいつも喜んだだろうに。」


 聞くに堪えなくなったシィェンフゥアも、男の話を遮った。

「欲求不満のイカレゲス野郎だな。気色が悪くて反吐がでるよ。」


 男はシィェンフゥアの言葉を無視して、怒鳴るように言った。

「早く出て来い、ヤン・リーインの娘。お前さえ生まれてこなければ、お前の母親は俺に殺されずに済んだんだ。お前なんかを守ろうとするからああなった、自業自得だ。代わりにお前を連れて行く、さっさと出て来い、くそがき。」


 ズーシュエンが遮るように、大声で言った。

「いないものは、いない。他に答えようがない。」


 男は何も答えなかった。


 すると、二人の男が、堂外から壁の上に飛び乗って中への侵入を試みた。

 数名の堂士が矢を放ち、男たちは矢を剣で撥ね退けたが、そのうちの一本が一人の男の肩にあたり、男は壁の上でうずくまった。シィェンフゥアは壁の上に飛び乗り、その男を外に蹴り落した。蹴りを入れた時に、男の首がグギッと変な音を立て曲がった。男は下に落ちて動かなくなった。ズーシュエンも壁に飛び乗り、もう一人の男を切り捨てた。その男も、外に落ちて動かなくなった。


 シィェンフゥアとズーシュエンが塀の上から、外を見下ろすと、門の前には、落ちた二人の男以外、誰もいなかった。あの男は逃げたようだ。


 階段に積もった雪の上には、無数の足跡があった。五人はいたようだった。三人がいた気配は感じていたが、それ以上に人がいた気配を感じていなかったため、二人はそれを怖く思った。


 その後、辺りを探したが誰も何も見つからず、山を下りたところに馬車が走り去った後が残っていた。麓の町の状況も確認したが、特に変わったこともなかったようだった。その後、警備を厳重にしたが、あの男は二度と現れなかった。




 シィェンフゥアは、ヤン・リーインのことを高く買っていたので、もし、彼女が戻ってくることがあれば、ここの堂長を継いでほしいと本気で考えているほどだった。また、ズーシュエンが物心ついた頃から憧れていた年上の女性とは、ヤン・リーインのことであった。


 二人はリーインの死を心から悼んでおり、彼女を殺した男のことを本気で憎いと思っていた。しかし、それ以上にズーハンのことが心配で、自分たちが感情を露わにしていては彼女に悪影響を及ぼすと考え、心を平常に保つよう努めた。


 また、変にズーハンに気を使うと、あの男が殺した女性が彼女の母親であることに、ズーハンが気づいてしまうことを恐れ、何事もなかったようにズーハンと接していた。


 しかし、ズーハンは、例の男が来た時に、高台にある納屋に隠れており、ヤン・リーインと言う名前は聞いたことがなかったが、その男が自分のことを言っているような気がして、納屋の窓から一瞬だけ外を覗いた。窓から遠目に男の横顔が見え、母親と買い物をしていた時に出会った男だと分かり、この男が殺したと言っているヤン・リーインが自分の母親のムーランのことであると、何となく気が付いてしまっていた。


 とても怖いことがあった後だったので、子どもたちは怯えていつもより大人しくなっていたが、午後になると、ほとんどの子どもたちはいつも通りに戻っていた。


 ズーハンは、午後になっても大人しいままだった。その後、数日経ってもズーハンの様子はおかしいままだった。


「ズーハン、具合でも悪いのかい?なんだか元気がないように見えるね。」


 と、ズーシュエンが声を掛けた。暫く考えてズーハンが言った。


「あの男が、お母様を殺したの?私のせいで殺されたの?」


 そう聞かれて、愕然としたズーシュエンだったが、今、嘘をついてもいずれ分かってしまうことだと考え、


「残念ながら、君のお母さまは亡くなった。でも、君のせいじゃない。」


 それを聞いた、ズーハンは呆然としたかと思うと、呼吸が荒くなり、過呼吸になってうずくまってしまった。ズーシュエンが彼女の背中をさすりながら、ゆっくり呼吸をするように教えると、少しずつ落ち着きを取り戻し、ズーハンはズーシュエンの腕にしがみつきながら声を殺して涙を流した。


 その姿が、余りにも痛々しく、

「ジェイド、声を出して泣いて良いんだよ。」

 と、ズーシュエンが声を掛けると、ジェイドは大声を出して泣いた。



 ズーハンは、その後数週間くらいは呆然として何事にも上の空だったが、暫くすると、今まで参加を拒んでいた剣術や武術の稽古に参加をするようになった。


 そして、誰よりも真剣に取り組むようになった。

今回はいかがでしたでしょうか?


ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。


よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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