表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/150

第136話 エイナーの場合

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

「なあ、エイナー、エイナーはなにかやりたいこととか、将来なりたいものとかってあるのか?」


 フォンミンの話に少しばかり胸やけを感じた二人は、海岸方面へ散歩に向かった。

 少しでもさわやかな風に当たりたかったのかもしれない。


「うーん、まだ、明確にこれとは言えないけど、漠然と考えていることはある。それに、ジェイドとは相談しながら決めて行かないと、とは思っている。」


「それは、どんなこと?」


 エイナーは少し考えてから話を始めた。


「きっとこの先、サムートはアルームの国王になる。彼の覚悟を思うと、いろいろ考えてしまうっていうのかなぁ、自分も父の後を継いで領主になるってことを真剣に考えなくちゃいけないのかなって……国王と領主じゃ比べもにならないけどね。」


「ふーん、エイナーは領主になりたくないのか?」


「うーん、なりたくない訳じゃないけど、正直まだ実感が湧かないよね。それに……自信もない。」


「エイナーでも自信がないなんて思うことあるんだな。」


「えー、なに言ってるの。自信なんかないよ、いつも。」


 冗談っぽく言ったつもりだったが、言葉にすると実際にそうだなと実感してしまう。ネガティブな言葉は口にするものじゃないなと少し後悔した。


「自信、なくたっていいんじゃないか?」


「そうかな。自信ある人を見ると羨ましくなるよ。例えば、マチアスとかフォンミンとか、自信ありげじゃない?」


「フォンミンは知らないけど、師匠は、振舞っている所もあると思う。自分でもそう言っていた。」


「振舞う?」


「ああ、自信がないと思う時ほど、自信があるように振舞うって、そうすると段々その気になって来るって言っていたよ。」


「元々の心が強いから出来ることだよね。」


「うーん、まあそうかもね。後は訓練とか慣れとか、年齢とともに段々そうなるとかとも言っていた。」


「訓練ねえ。」


 海が見える場所に座って二人で海を眺めた。

 遠くに煙が上がるのが見えた。あの時と同じ状況だけど、立場が逆だなとエイナーは何となく思った。


「何ていえば良いんだろう、でも、自信なくたって良いんだって思えた。」


「どういう事?」


 エイナーは隣のジェイドを見下ろした。


「口では大きなこと言ってたけど、全然自信なかったんだ。怖くて怖くて仕方なかったんだ。だけど、エイナーに助けてもらって仇を討つことが出来た。他にもいろんな人に助けてもらった。何て言うのが良いのかわからないけど、そう言うもんなんだなって思った。」


 海を見つめてジェイドが言った。

 エイナーも海を見つめて答えた。


「それは、ジェイドの情熱に動かされたんだと思うよ。だから助けたいって思ったんだ。きっと、皆もそうだと思う。」


「情熱? そんなかっこいい物じゃないけど、似たようなものはあったかもなあ。仇討ちが良いことかなんて今になっても分からない。それに結局、自分でとどめは刺せなかった。」


 エイナーはジェイド再び見下ろした。ジェイドは海の方を見ていた。


いが残った?」


「いや、ホッとしたんだ。自分でとどめを刺せなかったことを、何故か良かったって思ったんだよ。腰抜けだなって、自分でも可笑しくなった。」


 ジェイドが少しうつむいた。暫しの沈黙の後、彼女はエイナーを見上げた。


「なあ、エイナー、私は何がしたかったんだろう?」


 そう尋ねられて、エイナーは一瞬何と答えていいか分からず、ジェイドを見つめ返した。そして、目を閉じて少し落ち着きを取り戻してから答えた。


「ごめん、私にもわからないよ。でも、意味はあったと思う。その意味はこれから少しずつ分かって来ることだと思う。こんな返事しかしてあげられなくて申し訳ないけど。」


 そういって、立ち昇る煙に目をやった。


「意味は、あった……」


 ジェイドは小さく呟いた。そして我に返って話を続けた。


「ごめん、エイナーの話をしていたのに、自分の話にすり替えてしまった。

 そう、自信がなくたって、やればどうにかなったよ。だから、大丈夫。思いもよらない方向に行くかもしれないけど、どこかにはたどり着けるよ。」


 エイナーは笑顔になって答えた。


「そうだね。所で、ジェイドはどうなの? 何かやりたいことは出来た?」


「うーん、私も漠然とだけど、何か人の役に立つことで仕事がしたいって思った。具体的にこれって言うのはまだないけどね。」


「そっかあ。やりたいことが見つかるといいね。」


「うん。」


 ジェイドは元気よく答えた。


 その後、海を眺めながら少し話をした。主にフォンミンの生い立ち話に対する感想を述べあい、お互いの消化不良を吐露し合った。


 立ち上がりながらジェイドがエイナーに尋ねた。


「さっきの話だけど、エイナーは、この後は実家に戻って領主修行を始めるのか?」


「うーん、その事なんだけどね、もう少しいろいろな所を行商しながら周るのも良いかなって思っているんだ。それに、他の領主の元で勉強してから、父親の元に戻るのもありかなって考えてる。」


「ふーん、面白そうだな。」


「そう思う?ジェイドも一緒に来てくれる?」


「ああ、勿論だよ。」


 ジェイドが明るい笑顔で答えた。

 エイナーも心の底から嬉しい気分になって笑顔になった。







今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

ヤバン将軍:モラン軍の将軍の一人で、アバガスに攻め入っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ