表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/150

第135話-③ 聞く気はなかったけど、フォンミンの場合

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。


特に内容がないフォンミンの話終わりました。

何となく思い付きで書いたものですが、彼の、いつも楽しい方へ向かう、チャンスは逃がさない、そんな生き方は良いんじゃないかなって思いました。

 ユーリハ方面を目的もなく目指し始めて約十年の年月が経っていた。だから何だと言う事はなかったが、いざユーリハにたどり着いてみると、何となく感慨深いものがあった。


 ルッカやグランなどの大都市と比べれば、やや見劣りはする感じがするが、ユーリハの首都ナルクには活気があった。また、一年を通して気候も過ごしやすいと言う話だったので、ここで軍の仕事を探すことにした。

 探すといっても軍は一つしかないので、どうやって入り込むかを考えた。


 イズミール地方での軍人採用の方法は各国それぞれだったが、概ね紹介されて入隊するのが一般的で、コネや伝手つてがないと切っ掛けを掴むことも難しかった。


 昼間は語学学校の講師のバイトをして、夜は軍人がいそうな酒場に行った。空いている時間は街中を散策して過ごしていた。

 そんな日々が二カ月くらい続いただろうか、酒場で知り合いになったり、語学学校の生徒だったりと、軍に知り合いが増え始めた。

 徐々に、自分の南風やイルダルでの功績話とともに軍で働きたいと言うようなことも相談し始めると、自分の上司を紹介してくれるものも出始め、軍の中でもソコソコなポジションの知り合いも増えてきた。




 そんなある日、酒場に入ると、一人の女性に声を掛けられた。

 黒髪に青い瞳の女性、タユナ・ハイネンである。


 きれいな女性で、やさしく微笑みかけては来るが、冷たいと言うか、心が無いという言葉がしっくりくる感じがした。


「面白い東方人が、軍に入りたいと言っている。」と言う噂話を聞いて、ここでフォンミンのことを待っていたと言う。


 この軍のトップの役職は司令部司令官で、現在、司令官は不在、彼女は二カ月前に司令部に入り、司令部の立て直しの様な事をしていると話していた。


 彼女の話は何ともきな臭い話だった。


 自分は、イズミール地方を主な拠点として活動すると名前のない『ある組織』のメンバーだったが、組織分裂後に組織を離脱した。また、分裂後の組織はイズミール地方で何やら怪しいことを企んでおり、各国へも影響が及ぶ危険性がある。ということで、ユーリハの国王に掛け合い、軍の強化を図るべく自分を雇用してもらったと言う事だった。


 イズミール地方内で領地を巡って各小国が小競り合いをすることは時々あったが、ユーリハ国の周辺は、この十年くらいは争いもなく穏やかだった。その分、軍事に回す予算を削って、経済発展に力を注いでいた。一年前に前任の司令官が辞めて以降、そのポジションは空席だった。


 その空席の司令官のポジションにフォンミンを推薦すると言う話だった。


 初めて会った見ず知らずの人間をその国の軍のトップに推薦するなんて、頭がイカレテいるか、悪事に利用しようとしている以外にはあり得ない。


 その時何となく思ったのは、この女は、自分の邪魔にならない、お飾りの司令官を探している。


 小国の弱小軍の司令官ならば、自分の過去の経歴でも、まあ、推薦に値するかもしれない。それに、イズミールの国王は、異国の優秀なものを重職に起用することで、国家の多様性を計ろうとしているらしく、そのやり玉としては、自分は適格なのかもしれないとも思った。


 この女が何を企んでいるのかは分からないし、興味もないが、司令官にしてくれると言うのならばしてもらおうと、直ぐに腹をくくった。




「そして、俺はユーリハ国軍の司令官になった。」


 フォンミンはそう言って、二人の顔を交互に見つめて、二人の反応を待った。


 二人は何とも言いようがないと言う表情で黙って、フォンミンを見つめ返した。


「ど、どうした、これが俺がこの国の司令官になるまでの話だ、何かあるだろう、驚いたーとか、凄いわーとか、無いのか? 何か感想は?」


 そう言って、また二人の顔を交互に見た。


 エイナーが口を開いた。


「確かに、凄い話で、自分の頭が追い付けていないと言うか、心が処理しきれないというか…」


 ジェイドも口を開いた。


「…私も、何と言って良いのか相応しい言葉が見つからない。こんな複雑な気持ちになる話は初めてだよ。」


 そう言って、油っこい物を食べ過ぎが時の様な表情を見せた。




 数日後、ジェイドは、アリマにどう話を切り出せば良いのか悩んだ、そして、尋ねた。


「なぁ、フォンミンがグランに行くって話だけどさ、フォンミンはそこで誰かに会う予定があるんじゃないのか?」


 アリマが目をパチクリとさせた。


「グランで誰かと会う予定?」


「いや、何となく思っただけだよ、意味はない。」


 ジェイドがいささか挙動不審に答えた。


 そんなジェイドを見て、アリマが少し考えた。


「ハル君のこと?」


「…ハル君?」


「フォンミンの子どもだよ。グランに居る。きっと会うと思うよ。」


「アリマ、フォンミンに子どもがいるって知ってたのか?」


 アリマがまた目をパチクリさせた、そして笑って答えた、


「フォンミン、職場でもハル君の話しを良くしてるもん。以前は自慢話を聞かされて、うぜえなって思ったけど、今なら子煩悩で優しい人なんだなって思える。」


 そう言って「フフッ」っと笑った。

 ジェイドもそれにつられて「フフッ」と笑ったが、顔が引きつっていた。






今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

ヤバン将軍:モラン軍の将軍の一人で、アバガスに攻め入っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ