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第133話 マチアスの場合

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

今回も後日談的なものです。

「なあ、師匠。師匠はなにかやりたいこととか、将来なりたいものとかってあるのか?」


 ムーのブラッシングをしていたマチアスがジェイドを見上げた。


「お前がそんなこと聞いて来るなんて、初めてだな。」


 そう言って、ちょっとだけ考えて


「今回、随分と稼げたからなあ、診療所の設備を整えたいなあ。マッティが手伝ってくれることになったし。」


 そう言いながら、ムーの腹の辺りをさすった。


「マッティって、一番上の息子か?」


「ああ、本当は、もっと都会の病院で経験を積んでからの方が良いと思うんだが、本人がそうしたいのならば、それでも良いんじゃないかなって。」


 腹をさすられているムーは嬉しそうだ。


「でも、師匠は嬉しんだろう? 一緒に働けて。」


「うん、まあなあ。そんな日が来るなんて考えてもみなかった。あんな片田舎の診療所、俺一代で終わりだと思っていたからな。片田舎とはいえ人は住んでいるし、他に診療所がないから自分で働ける間は働こうと思っていた。」


 喜ぶムーを撫でながら、マチアスも嬉しそうに目を細めた。


「師匠にも、この先やりたいことがあるのか……」


 複雑な面持ちでジェイドが呟いた。


「お前は無いのか? 折角、敵討ちの呪縛から解放されたってのに……まあ、当分はゆっくり考えれば良いんじゃないか? そのうち自然と思いつくさ。」


 そう言いながらマチアスは立ち上がり、ズボンに着いた枯草を手で払った。


「そんなもんなのか?」


「そんなもんだろう。それに、お前は無欲な人間には見えないぞ。やりたいことなんて自然と湧いて来るさ。あれはどうなった?」


 ジェイドが、不思議そうに眼を丸めてマチアスと見上げた。


「あれってなんだ?」


「綺麗で色気があって、品もある女になるってのだよ。」


「何だそれ?」


「お前が言ったんじゃないのか? エイナーを他の女に取られないようにって、媚薬を飲ませようとしたって、ズーシュエンが遠い目をしていたぞ。」


「ああ、あれかぁ…あの時は…確かに、とち狂っていたと思う…ズーシュエンめ、口が軽いな。」


「ははは、まあ、時間も金もあるんだから、好きなだけお洒落すればいいんじゃないか?」


「そんなこと、興味ないよ。」


「ふーん、だったら、今は何に興味があるんだ?」


「…仕事がしたい。ちゃんと働いて生活がしたい。」


 それを聞いたマチアスが、片方の眉を上げた。


「ない物ねだりだな。仕事って、例えば?」


「まだ、分からない。でも、自分が得意なことで、人に役立つことかなぁ。」


「得意なことで役立つことか? おまえならば沢山あるなあ、好きなことを仕事にすればいい。」


 そう言って、マチアスはジェイドを見下ろした。


「私が得意なことってなんだ?」


 そう聞かれて、マチアスが答えた。


「まずは、武術だろう。物怖ものおじしないし、嘘やハッタリも得意だ。後は、三つの公用語が使えるし、子どもや年寄りに好かれる…あとは…どこでも寝られる、いや、生きていける。」


「なあ、それって人の役に立つ仕事に関係あるのか?」


「大いにあるだろう、どれも、どんな仕事をするにしても重要なことだ。」


 力強くマチアスが答えた。


「そんなものかぁ?」


 ジェイドは首を傾げて呟いた。






今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

ヤバン将軍:モラン軍の将軍の一人で、アバガスに攻め入っている。

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