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第126話 アバガスでの戦い⑧

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

「敵の数が、確実に増えている。」


 見張りの兵士から報告を受け、夜明け間近の外を眺めてサムートが呟いた。




 第一城壁の上から、まだ薄暗い北西の草原で城を囲んでいる敵の集団を眺めながら、アシルとエイナーも同じことを思っていた。


「味方の士気が心配だ。昨日のヤバンの話は皆に聞こえているだろう。この戦いの意義について混乱しているかもしれない。それに、残りの物資の量も気になり始める頃だ。」


 珍しく真剣な表情でアシルが言った。


「そうですね。気を引き締め直さないと。」


 エイナーは自分に言い聞かせるかのように、昨日よりも遠くに感じる敵の集団と地上の境目を見つめて返事をした。


 そんなエイナーの横顔を見上げて、アシルが言った。


「だが、恐れる必要はない。ヤバンは、幸運にも頭が良くない。ただ…」


「ただ?」


 エイナーが聞き返した。


「彼の部下のグマンはあなどれない。今回の独立のことも彼がヤバンをそそのかしたのかもしれない。ただ…」


「ただ?」


「グマンは小賢こざかしいだけで、独立国なんて大それたことを望む男じゃないと思っていた。もしかすると、ヤバンを唆して別のことを考えているのかもしれないなぁ~。」


「別のこと? 例えば?」


「う~ん、何だろうなぁ~…。意外と野心家で自分が国王になりたいのかもしれない。」


 それを聞いた、エイナーも考えるのを止めた。




 日が昇り、ヤバン側から矢が射られるのを合図に、戦いが始まり、日没と同時に戦いは終わる。夜になると、敵陣営から兵士たちが大騒ぎをしている声が聞こえた。酒を飲んで騒いでいるようだった。




 そんな日が暫く続いた、とある夜。

 その夜は雨が降っていて、敵陣営の騒ぎ声がいつもより大きく、罵声や怒号も聞こえてきた。直ぐに内輪もめの喧嘩が始まり、それが飛び火して別の所でも喧嘩が始まった。


 この異変に対し、アバガス側も見張りの兵士を増やし、いつ攻撃が始まっても対応できるよう備えた。


「殺気だっているな。」


 サムートが外の状況を眺めて呟いた。


「怒りの矛先が、こちらに向かっているようだね。」


 アシルも一緒に外を眺めた。


 初めのうちはただの内輪もめの喧嘩のようだったが、それが段々と、アバガスを早く引き渡さないサムート側への不満へと変換されてしまっていた。


 外からは兵たちの抗議の声が聞こえてきた。城壁に石を投げつける者まで出てきた。


「アバガスを引き渡せ。」


「俺たちを、こんな所でいつまでも待たせるな。」


「このままじゃ、雨に濡れて風邪をひいちまう。」


「モラン国王なんて怖くもないわ、もうモラン国はなくなるんだ。」


 などなど、もっとひどい罵声がアバガスに向かって浴びせられた。


 暫くすると雨は止み、辺りは静かになった。




「静かですね。」


 エイナーとアシルは第一城壁の上から、真っ暗な外を眺めた。

 一部の野営には火が灯っているが、敵地のほとんどが真っ暗だった。


「疲れて寝たのか?」


「だったら、良いのですが……子どもじゃあるまいし……」


 夜明けまではまだまだ時間がある。味方の兵士たちを休ませようかと考えていると、南の城壁の方から声が聞こえた。


「こちらに、敵が向かっています。」


 石で塞がれた排水溝に向かって、敵の大群が押し寄せてきている。


「攻撃開始、南側から敵の襲撃。」


 エイナーの声と共に、アバガスも戦闘態勢になった。





今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

ヤバン将軍:モラン軍の将軍の一人で、アバガスに攻め入っている。

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