第125話 アバガスでの戦い⑦
背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。
「敵の様子がおかしいと思わないか?」
敵に囲まれている城外を眺めながらアシルがエイナーに言った。
「はい、以前より騒がしい気がしますね。」
エイナーが答えた。
ここ数日、夜になると大騒ぎをしている兵士たちの声が良く聞こえた。
既に勝った気にでもなっているのだろうか? それとも自暴自棄にでもなったのか? とエイナーも不思議に思っていた。
その夜も、兵士たちの騒ぎ声がアバガスの城内まで聞こえていた。
翌朝は敵からの攻撃がなく、様子を伺っていると、外から大声でこちらに呼び掛けている声が聞こえた。
「私はヤバン将軍だ。だが、たった今からヤバン国王になる。アバガスを占拠して、ここに我らの独立国を作る。我々に素直に城を明け渡し、協力するのであれば、これ以上の危害は加えない。」
第一城壁の上から敵の攻撃に備えていた、アシルとエイナーが自分たちの耳を疑った。
「良く聞こえなかった。今なんて言ったの?」
アシルがヤバン将軍に向かって大声で叫んだ。
ヤバン将軍(自称、ヤバン国王)は咳払いをして、再び大声を張り上げた。
「我々はアバガスを占拠し独立する。お前たちは大人しく、我らにアバガスを引き渡せ。」
それを聞いたアシルが大きな目をパチクリとさせた。
「エイナー聞こえた? ここに独立国を作るんだって。 僕の聞き間違いじゃないよね?」
エイナーは困惑しながら答えた。
「私にもそう聞こえました。」
再び、アシルはヤバンに向かって大声を張り上げようと、胸壁から身を乗り出そうとした。
そんなアシルをエイナーが後ろから引っ張った。
「そんなに身を乗り出したら、敵の矢で射られますよ。」
大人しく身を乗り出すのを止めたアシルが、大声で尋ねた。
「どこから独立するんだ?」
「どこ?……モラン国からに決まっているだろう。」
ヤバンが答えた。
「なんで、そうしようと思ったんだ?」
アシルが再び大声を張り上げた。
ヤバンは躊躇したが、直ぐに答えた。
「お前らには関係のない話だ。城を明け渡して、大人しく我らに従え。」
「関係なくないよ。急にそんなこと言われても、こっちにだって事情ってものがあるんだ。ちゃんと説明してくれ。」
苛立ちを見せたヤバンが怒鳴った。
「アシル・クム……お前は、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、早く、城を明け渡せ。」
アシルは言い返すのを一旦止めて、エイナーにジトっとした視線を送った。
エイナーもジトっとした視線で彼の視線を受け止めた。
「ヤバンたちは、モラン国を敵にまわしたってことだよね? だったら、彼らはモラン国から物資や兵士の調達が出来ないどころか、モラン国から攻撃を受けることになる。」
アシルが、目の前の四人に向かって言った。
「ですが、ここ数日、兵士の数が増えている気がします。」
ナフナ将軍が答えた。
「私も、思っていました。ですが、兵士の数が増えたからと言って、攻撃力が上がった訳ではなさそうだったので、気のせいかとも思っていました。それと、数日前から、敵の兵士たちが夜中に大騒ぎをしているのも気になっていました。」
アサヤ将軍も同意した。
「何が起こっているのだ?」
腕組をしたサムートが溜息をついた。
「そういった変化が起こって数日たっていますが、モラン国が彼らを攻撃してくる気配がありませんね。これからですかね?」
エイナーが言った。
「彼らの独立と私たちは無関係ですよね、彼らの目的が独立だとしたら、私たちが戦い続ける意味とは……」
アサヤ将軍が言い難そうに言った。
「ダメだよ、ムンド国の一部を占拠なんてさせないよ。しかもアバガスは絶対に明け渡さない。」
アシルが言い返した。
「そうだな、ここに独立国を作ることは許容できない。」
サムートも同意した。
「しかし、少し困ったことになったな。私の使命はジャーダン討伐だ、この状態でそれをどうやって成し遂げればいいのだ。」
アシルに同意しつつも、現状にどう対処すべきかサムートは困惑していた。
「ただ、こんな反乱を起こされるなんて、パレオスで何か起きているとしか考えられない。」
エイナーがサムートに言った。
「確かにそうだよ。本当にジャーダンがカリーナ王女に罷免されたのかもしれない、そして、モラン国は戦いを止めようとしているのかもしれない。でも、ここで考えていても確かなことは何もわからない。だから、自分たちが今やるべきことをやろう。援軍が来るまで私たちでアバガスを守るんだ。」
アシルの意見にその場にいた全員が同意した。
「そうだな、援軍が来るまでここを守り切る。その後、パレオスで状況を確認しよう。」
そう言って、サムートは城壁の上に上り、敵の兵士を見渡した。アサヤ将軍とナフナ将軍はサムートに続いた。
エイナーとアシルは自分たちの持ち場に帰る前に、マチアスの所に寄って、今、話をしたことを説明し、カラスが戻ってきていないかを確認した。
「訳の分からん状況になったな。カラスはまだ戻っていない。ヨナスの所に帰ったのかもしれないな。」
お茶をすすりながら、そう言った。
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。
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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。
地図 全体
地図 モラン国周辺拡大
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)
アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)
カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
マルチナ・アリア:サムートの婚約者
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女
ワン・シア(王仔空):リーファの息子
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性
ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下
バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理
アルタイル(通称:アル):バナムの部下
カジャナ・ポナー:サムートの主治医
ナズ:カジャナ医師の助手
アスリ:カジャナ医師の助手
メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性
エレン・クム:元ムンド国皇太子
アシル・クム:元ムンド国第二王二
ルスラン八世:元ノンイン国王
アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍
ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍
ヤバン将軍:モラン軍の将軍の一人で、アバガスに攻め入っている。




