第116話 弔い合戦④
背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。
ジェイドが跪いているズーシュエンに駆け寄ったと同時に、岩は二人と老人の間に落ちて砕けた。
老人は自分の背中すれすれに岩が落ちてきたにも関わらず、気に留める様子もなかった。ただ、マラトに近づき何かを話し掛けていた。
マラトは、そんな老人を邪険に突き飛ばし、老人はその場に尻餅をついた。
そして、自分の胸に刺さった剣を抜き取り、ジェイドの赤い飾り玉をその剣で叩き割った。
叩き割られた飾り玉からは、赤い煙が立ち込めた。
怪物のような強靭な肉体を持った彼でも、流石に胸の傷はかなり痛手のようで、刺された傷口手を押し当て、表情を歪めてこちらに向かってゆっくりと歩いて来る。
まだ、壁の崩れは収まっていない。
こちらに向かってくるマラトを見て、ズーシュエンはジェイドに言った。
「……ジェイド、早く逃げるんだ。ここは時期に崩れる。早く……」
ジェイドが大きく首を振りながら叫んだ。
「ダメだ! 早く立て、一緒に行くんだ!」
自分の肩に置かれた彼女の右手を、自分の左手で掴み、肩から引き離しながら、諭すように言った。
「エイナーが待っている。君は帰るんだ。」
ジェイドは、ズーシュエンの左手を振り払い、彼の左わきに自分の右手を入れて、彼を持ち上げようとしながら、叫んだ。
「いいから、黙って立て。立って歩け。致命傷じゃないんだろう? 頼むから立ってくれよ。」
ジェイドの顔を見上げると、顔をくしゃくしゃにして涙を流していた。
その顔を見たズーシュエンは、何故かハッとして、諦めかけていた自分を少し恥ずかしく感じた。
「……分かったよ、ジェイド。一緒に帰ろう。」
ズーシュエンのその言葉を聞いたジェイドの表情が、パッと明るくなった。
ジェイドの背後から、崩れた岩を超えてゆっくりとマラトが近づいて来る。
自分が一緒では、彼から逃げきれるかどうか分からない。それでも必死に歩くしかない。そう思いながら、ズーシュエンはジェイドの肩を借りて立ち上がり、出口に向かって歩いた。
後ろは振り返らずに、ただひたすら出口に向かって歩いた。
洞窟の両脇に立っている大きな柱にもヒビが入っている、何かの拍子に崩れ出しそうな状態だ。
歩いても、歩いても、思うように前には進まない。しかし、マラトも近づいてくる気配がない。
ゴゴゴゴゴゴと言う地響きのような音が後ろから聞こえて来る。
一旦立ち止まり、二人は後ろを振り返った。
マラトは、背後から老人に羽交い絞めにされながらも、老人を引きずって歩いて来る。
しかし、老人の目は赤く光り、正気を失っているようだった。地面から赤い煙が立ち昇り老人の周りを囲んでいる様に見えた。
老人の細長い指がマラトの頭を強く掴み、徐々にその指は頭にめり込んでいった。
マラトは老人を払い落とそうと体を大きく揺さぶったが、老人は一層、指に力を込めた。
男の叫び声が聞こえた。
それと同時に、後ろから両脇の柱が崩れ始めた。
柱がマラトと老人の頭上に崩れ落ち、次々と手前の柱も崩れ始めた。
ジェイドとズーシュエンは必死に出口を目指して歩いた。
外の光が遠くに見える。その光の中に黒い影が二つ並んでいるのが見える。
「ペペ! ムー!」
ジェイドが叫ぶと、二つの影が近づいてき来た。
そして、二匹は大きくなり、二人を背中に乗せて光が差し込んでくる出口に向かって猛スピードで走り出した。
ジェイドは右手で、ズーシュエンは左手で彼らに必死にしがみついた。
柱は奥から順々にスピードを上げて倒れて来る。
二匹は洞窟の出口を出ると、そのまま走り続け、崖を飛び降り、草原を走り、村を目指して走った。
そんな彼らの背後で、洞窟の入口が大きな音を立てて崩れ落ち、砂埃が舞い上がっていた。
暫く走ると、村が見えてきた。
村の入口で、宿の主人と女将、そしてモーイエが立って、猛スピードで近づいて来るぺぺとムーを見て青ざめた表情をしていた。二匹が大きくなったところを見たことがなかったので、仕方がない事だが、三人には化け物が近づいて来るように見えていた。
だが、ムーの背中に乗ったジェイドが大声で三人に向かって声を掛けたのを聞いて、驚きと安心が混じったような表情をした。
「お~~~~い、私だ! ジェイドだ! ズーシュエンも一緒だ!」
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。
地図 全体
地図 モラン国周辺拡大
家系図
登場人物が増えたので追記しました。
リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長
ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物
リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物
マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇
ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)
アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)
カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻
アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官
ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻
テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)
サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子
マルチナ・アリア:サムートの婚約者
ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄
タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官
アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち
ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者
ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長
リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋
リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長
シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下
チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女
ワン・シア(王仔空):リーファの息子
ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母
師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住
ペペとムー:ジェイドの犬たち
餅:ジェイドが飼っていた猫
ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性
ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下
バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理
アルタイル(通称:アル):バナムの部下
カジャナ・ポナー:サムートの主治医
ナズ:カジャナ医師の助手
アスリ:カジャナ医師の助手
メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性
エレン・クム:元ムンド国皇太子
アシル・クム:元ムンド国第二王二
ルスラン八世:元ノンイン国王
アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍
ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍




