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第111話 池に映ったものは?

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

 この洞窟には三つの出口がある。

 一つは玉座がある広間から西に向かった出口で、正面玄関的なもの。もう一つは下まで降りて行った馬車置き場。

 そしてもう一つは東に向かうルートで、山を抜けて西夏せいかに向かう途方もなく長い長いトンネルの先である。

ディーフィンの話では、この三つ目の出口は外に出るまで丸三日は掛かると言う事だった。しかも何もない山の中に出るので、そこから最寄りの村に到着するのに三日は掛かると言う事だった。


「二手に分かれるのは止そう。相手は少なくとも三人、一人では分が悪い。」


 ズーシュエンが下に続く階段を覗き込みながら言った。それを聞いたジェイドが頷いた。


「もし、マラトがこの洞窟から逃げ出したとして、何処に向かうのだろうか?

 各地に散らばった部下の元か? それとも、他にも隠れ家を持っているのか?」


 ジェイドが独り言半分、ズーシュエンへの問いかけ半分で言った。


「彼は、ウズラ以外の部下を信用していないだろう。他にも隠れ家はあるだろうけど、ここを一番気に入っているんじゃないかな。」


「ズーシュエンもそう思うか? 奴は執着が強い性格のようだから、ここを離れないと思うんだ。ならば、この洞窟の中を徹底的に探す方が良いと思う。」


 それを聞いたズーシュエンが頷いた。


 二人は、暗い階段をゆっくりと降りて行った。

 途中に横穴があり、そちらの方から薄っすらと明かりが差し込んできていた。玉座がある広間に繋がっているはずだ。

 横穴を過ぎて暫く降りると、大きな池がある地下の馬車置き場に着いた。

 人の気配はなく静まり返っていた。気配はないが念のためウズラがいないかを確認するため二人は辺りを探った。


 ズーシュエンは、微かに嗅ぎ覚えがあるような匂いが漂っている気がしたが、それが何の匂いかを思い出せずにいた。


 池のほとりにジェイドが立ち止まっているのに気づき、声を掛けた。


「どうした?」


 ジェイドは何も答えず、ただそこに立ち尽くしているようだった。


「…ジェイド?」


 再びズーシュエンが声を掛けた。


「…燃えている…」


 ジェイドが一点を見つめて、震える声で呟いた。


 ズーシュエンはジェイドの横に立ち、池の中を覗き込んでみたが、何も変わった様子はなかった。ジェイドの顔を見ると少し青ざめている様に見えた。


「ジェイド、大丈夫か?」


 ズーシュエンはジェイドに声を掛けた、しかし、ジェイドにはその声が聞こえていない様子で、池のほとりにひざまずいて、必死に池の一点を見つめている。


「ズーシュエン……、城が燃えている……きっとこれはアバガスだよ。エイナーと師匠の身に何かあったんだ…」


 ズーシュエンはジェイドの横に片膝をついて、池の中を覗き込みながら優しく尋ねた。


「私には何も見えないよ。ジェイド、詳しく教えてくれ、城はどんな形で、何色をしてるんだ?」


 ジェイドはアバガスを見たことがない、幻覚を見せられているとしたら、実際の城とは違う想像の城を見ている可能性がある。


「…え? 形と色? 今はそんな話をしている場合じゃないだろう。ズーシュエンは二人のことが心配じゃないのか?」


「ジェイド、私が聞きたいのは、なぜアバガスが燃えていると思うんだということだよ。君が見ているのは違う城かもしれないだろう?」


 優しく落ち着いた口調で説明をしたつもりだったが、取り乱しているジェイドには理解してもらえず、彼女はより声を荒げて言った。


「こんな時に、何を悠長ゆうちょうなこと言ってるんだ! 他の城な訳がないだろう!

 ズーシュエンは二人のことが心配じゃないから、そんな暢気のんきに構えていられるんだ。そりゃあ、ズーシュエンに取ったらあの二人は他人だもんな。心配なんかしてないよな。」


 ジェイドはより声を荒げ、取り乱した。


 ズーシュエンは、取り乱すジェイドの両肩を掴み、強く揺さぶった。


「ジェイド、落ち着いて。君は幻覚を見せられているんだ。城は燃えていない、二人は無事だ。二人を信じよう。」


 ジェイドはズーシュエンの言葉に耳を貸すことなく、大声で叫んだ。


「幻覚なんかじゃないよ、私には見える。大きな白い城が燃えてるんだよ。炎の中を多くの兵士が逃げ惑っている。きっとエイナーと師匠もその中にいるんだ!助けに行かなくっちゃ!」


 そして、ズーシュエンの掴む手を無理やりほどき、池の中に飛び込んだ。

 そして、彼女はそのまま沈んで行った。

 直ぐに、ズーシュエンもジェイドを追って飛び込み、沈んで行く彼女を追った。

 ジェイドは泳ぐこともなく、ただじっと沈んで行った。





今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

↑ 今は更新頻度がこの通りではありません。申し訳ありません。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

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