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第109話 ここであったがうん年目(つづき)

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

 凄まじい勢いと力で振り下ろされる二刀流の剣に翻弄されながらも、ジェイドはどうにかそれをかわし、反撃の隙を伺った。彼の剣が振り下ろされた先はことごとく木っ端みじんに砕け、床にも壁にも穴が開いている。


 部屋の奥に薄暗い大きな広間があり、そこには人の背丈の三倍程ある石像が三体立っていた。ジェイドはその中の妙に首が長い女の像の上に飛び乗った。


「高いところに逃げればどうにかなると思っているのか?浅はかさは母親譲りだな。」


 マラトが冷ややかに言った。


「馬鹿と煙以外も登るんだよ、こうやって、上からお前の間抜け面が拝めるんだからな。」


 ジェイドも冷やかに言い返した。


「口が減らないのは、誰に似たんだろうな。知性も品性もない可哀そうな娘よ。」


 そう言うと、マラトは剣を振りかざし、石像の足元に二打うち込んだ。石像が左斜めに下がって行く。

 ジェイドは石像の両肩に自分の両足を乗せ、片足で後ろの壁を蹴って、強く石像の頭を両手で押した、前に立つマラトに向かって石像が前に倒れだした。


 目の前の広間に石像が倒れて真ん中から二つに折れた。

 マラトは倒れてきた石像を避けて脇に立って上を見上げている。


 ジェイドは石像が倒れ始めると同時に隣の石像に飛び移り、今度は首の異様に短い男の石像の上から下を見ていた。


「意外と素早いな。当たらなかった。」


 ジェイドがそう言うと、マラトは無言のままジェイドの方を見上げて、鼻で笑った。


 下ではズーシュエンが部下の男と戦っていた。

 ズーシュエンの方がやや優勢ではあるが、かなり手こずっているように見える。実際、ズーシュエンも今まで戦ったどのウズラたちよりも手強いと感じていた。


 残った二人のウズラたちは、マラトにとっては腹心中の腹心なのだろう。流石に強い。その分、ここで彼を仕留められればそれだけ有利になる。

 そう考えていた矢先、なにやら殺気を感じて、そちらに注意を向けると、大きな石の塊がこちら目掛けて飛んで来るのが見えた。それと同時にジェイドの声が聞こえた。


「ズーシュエン、危ない。」


 マラトが、半分に割れた石像をズーシュエンに向かって投げつけたのだ。


 化け物だ。


 そう思いながら、ズーシュエンは部下の攻撃をかわして、その場を離れようとした。石は、部下の目の前に大きな音を立てて落ちた。


「ズーシュエン、大丈夫か?」


 ジェイドが大声で叫んだ。


 返事がない。


「ズーシュエン。」


 さっきよりも大きな声で叫んだ。


 それでもズーシュエンの返事がない。


 マラトは自分の投げた石の方を、真剣な表情で見つめている。


 彼の部下が何かをかわそうと動いた、ジェイドたちからは見えない、彼の左側から何かが攻撃して来たようだ。


 部下がこちら側に背を向けると、彼の左腕から血が流れているのが見えた。


「ズーシュエン!」


 今度のジェイドの声は、喜びに満ちていた。


 マラトは苦虫を潰したような表情で言った。


「一先ず、撤退だ。」


 すると、部下は先ほど投げつけられた石の上に飛び乗り、煙球を数個出して地面に投げつけた。

 当たりは煙幕に包まれた。


 ジェイドは石像から飛び降りてマラトを追ったが、煙幕に巻かれたマラトを見失ってしまった。


「またかよ。」


 そう言って、ジェイドが地団駄を踏んだ。


 煙幕が落ち着くと、ズーシュエンが大きな石の側で、口にそでを当てて立っているのが見えた。


「ズーシュエン、怪我はないか?」


 そう言って、ジェイドはズーシュエンに走り寄った。


「ああ、大丈夫だ。」


 それを聞いたジェイドはほっとした表情になり、


「ならば良かった。それにしても……

 そう言って、大声で叫んだ。


「この期に及んで逃げるなんて卑怯だぞ!」


今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

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