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第108話 悪党の血

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

 苦々しい表情で老人を見下ろし、その痩せ細った体に蹴りを入れた。老人は小さく低い唸り声を上げて、その場に倒れ、動かなくなった。


 その姿を眺めながら黒い服の男が小さな声で呟いた。


「哀れだな。」


 そう言って二人を振り返えると、気だるそうに言った。


「お前たちは、運だけは良いな。その運の良さに甘んじて、大人しくしていれば良いのに。」


 そう言いながら、玉座に戻り腰を下ろした。そして、椅子にふんぞり返りながら、ジェイドに向かって薄ら笑いを浮かべて言った。


「今度は何の用だ?母親を返せとでも言いに来たのか?」


 ジェイドは黙っていた。


「何度も言わせるな、私を恨むのはお門違いだ。あいつは、自分が望んで死んだんだ。馬鹿な女だ。」


 そう言って、ジェイドに目を向けた。ジェイドは黙ったままだった。


「お前も死にたいのならば、望みを叶えてやろう。一つくらいはお前の望みを叶えてやらなくてはな、父親として。」


 そう言って薄ら笑いを続けた。ずっと黙っていたジェイドが口を開いた。


「三人も父親は要らない、二人で十分だ。あと、もう一人義理の父親はいるけど。それは、夫の父親だ。」


 穏やかな声で言った。それを聞いたマラトの目つきが一瞬鋭くなった。


「偉そうな、小賢しい小娘だな。大した実力もないくせに大口だけ叩いて、いい気なもんだ。孤児を集めて労働させて金稼ぎをする男の力を借りて、敵討ちのつもりか?お前は何か勘違いをしているようだな。」


 ジェイドは黙ってその話を聞いていた。


「お前は自分が正義だと勘違いしていないか?

 そもそも領主なんてものは、自分は何もせずに領民から金を巻き上げる悪党だ。その上、その領主をたらし込んで、まんまと妻の座に居座り、その上、他人の子どもを産んで、ぬくぬくと子育てをしていたお前の母親とは、さぞやふてぶてしい女だったんだろうな。

 お前の体のどこを探したって、正義なんてものはないと思え。

 お前は、生まれながらの生粋の悪党だ。それを忘れるな。」


 そう言って、マラトは再び薄ら笑いを続けた。


「私も私の親たちも悪党か?そう思う人もいるのかもしれないな。それならば、それで良い。ただ、悪党が悪党を切るだけの話だ。」


 ジェイドが穏やかに答えた。


「悟ったつもりか?」


 薄ら笑いのままマラトが言った。


「お前は、私のことも、私の両親のことも良く知ってるみたいだな。だったら、私もお前の両親のことを聞いてもいいか? どんな人だったんだ?」


「そんな話を聞いて何になる?」


「ただの興味だよ。自分以外の悪党にどんな血が流れているのか知りたくてね。」


 一瞬マラトの表情が暗くなったが、直ぐに口元に笑みをたたえて答えた。


「私にそんなに興味があるのか?だったら冥途の土産に教えてやろう。」


 そう言って、部屋の隅の方を指さした。


「そこに転がっているのが、父親だよ。」


 マラトの指さす先には、今しがたマラトが蹴り倒した老人が横たわっていた。











今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

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