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第107話 引き返すならば、今が最後(続き)

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。


今週は、水、土、日の14:30投稿が守れず、事前の連絡も出来ずに申し訳ありませんでした。

これから、クライマックスに向かって、もしかすると少し時間をかけて書くかもしれません。

でも、出来るだけ宣言している曜日時間を守りたいと思います。引き続きよろしくお願いします<(_ _)>

 二人は切り立った白い崖の前で崖を見上げた。何度ここに来たことだろうか。

 階段を登り、巨大な遺跡のような入口の前にたどり着いたが、誰も行く手を阻むものはいなかった。


 ぺぺとムーに入口で待つように指示を出し、二人は暗い入口の中に入って行った。




 暗闇の中、ズーシュエンが片手に持ったランプをかざして両脇の柱を見上げた。やはり巨大すぎて柱の上の方まではよく見えなかった。

 二人は用心しながらゆっくりと先に進んだ。


 広間の入口の大きな木製の扉は閉まっていたが、かんぬきは掛かっていないようだった。二人は扉に手を当てて、ゆっくりと押した。扉がキーと音を立てて開いた。


 中から明かりがこぼれた。


 広間の壁にはかがり火がともされ、部屋の中を照らしていた。奥の高い場所にある王座には男が一人座っていた。


 そこには、マラトには似ても似つかない、痩せ細った老人が項垂うなだれて座っていた。あの、かんぬきの守り番をしていた老人のようである。


 二人は辺りを見まわしたが、他には誰もいないようだった。


「罠か?」


 ジェイドが呟いた。ズーシュエンが老人を良く見ると、彼の右手に白い導火線のようなものが握られているのが見えた。


「あの老人の右手…、導火線が握られているようだ。」


 玉座のひじ掛けには小さな燭台しょくだい蝋燭ろうそくが灯されている。

 彼が左手を持ち上げて蝋燭ろうそくの炎に導火線の先をかざせば何かが爆発する仕掛けらしい。では、どこに爆薬が仕掛けられているのだろうか?


 背中を丸めて項垂れて座っている老人が腹の辺りに何か丸い物を抱えているように見える。


「あの腹にあるのは、火薬の玉か?」


 ズーシュエンがわずかに眉をひそめて、声を漏らした。


 その声を聞いたジェイドも男の腹の辺りを見た。


「どういう事だ?まさか、自分が爆発すると分かって、火をつけるって言うのか?」


 ジェイドはあからさまに顔をひそめた。


 その時、老人が二人の話し声に気づいたのか、頭を上げてこちらを睨んだ。深くくぼんだまなこからギョロギョロとした目がこちらを見ている。

 痩せ細った体、後ろで一つに束ねた白髪が、この男を一層なにかの妖や妖怪のように見せた。そして、右手を蝋燭の灯りに近づけようとしている。


 ズーシュエンは蝋燭ろうそくを切った。

 炎が付いた蝋燭が地面に落ち、地面の上で燃え続けた。老人は落ちた炎を眺めていたが、立ち上がり地面に屈みこんで右手に握った導火線の先を炎に付けた、導火線は勢いよく燃えた。

 老人は満足げな表情で、床に落ちた火薬玉に目をやろうとしたが、何処にも火薬玉がない事に気づき、顔を歪ませて必死になって辺りを探した。


 床をはいつくばって探している。


「これか?」


 ジェイドが老人に声を掛けた。

 そして、片腕に抱えた火薬玉を老人の方に向けた。

 老人はしばし、状況が把握できないといった表情をしていたが、状況を把握したのか、


「……返せ……そいつを返せ。」


 そう言いながら立ち上がり、よろよろとジェイドの方に近づいた。


 ズーシュエンは蝋燭ろうそくを切った後、直ぐに導火線も切っていたので、老人が立ち上がった際に火薬玉が落ちて、ジェイドの足元まで転がって来ていたのだった。


 よろよろと老人はジェイドに向かって歩いて来たが、戸惑う彼女の目の前から突然姿を消した。


 ズーシュエンが剣のつかで老人の頭を叩いて気絶させたようだ。


「困ったもんだ、前回はかんぬき、今回は導火線に取りつかれたのかな。」


 ズーシュエンがそう言って、ため息をついた。


「暗示にでもかけられてるのか?」


 ジェイドは倒れた老人を縄で縛りながら、ズーシュエンに尋ねた。


「そうだろうね。」


 そう言って、二人で縄で縛った老人を部屋の隅に運んで座らせた。

 二人は人の気配を感じて玉座に目を向けた。そこに黒い服の男が座っていた。


「全く、何の役にも立たない男だ。言われたことですら何一つ出来ない。」


 そう言って立ち上がり、部屋の隅に座っている男の目の前に立つと、この上なく憎しみがこもった声で言った。


「役立たずめ。」







今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

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