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第102話 アバガスでの戦い①

背景説明地図と登場人物紹介は後書きにあります。

日が沈み、アバガスの周辺が暗くなり始めた頃、城塞から数キロの地点で花火が上がった。


「戻って来るぞ。全員配置に戻れ。」


見張りからの伝達が城中に伝わった。

今日の昼過ぎからずっと慌ただしかった城内により一層の緊張が走る。


「味方が西の大門に入ったことを確認したら、直ぐに門を閉じろ。追手への攻撃は相手の出方次第だ。」


アシルは、城壁の上で応戦待機している兵士たちに指示をした。


アバガスの城壁は半円周状の三層の城壁からなっていて、最も外壁にあたる第一層の城壁は一番高く、頑丈に出来ている。

一層目と二層目の間が一際ひときわ広くなっていて、一先ず逃げ込んだ味方の兵たちをここに収容し、西に面した大門を閉じる。

大門は頑丈な鉄製の扉で、一度閉じてしまえば、そうそう簡単に打ち破ることは出来ない。二層目に入るための門が二か所設置されていて、ここは大きな木製の扉になっている。

万が一、一層目に敵が侵入してしまっても、二層目に入れなければ侵入を防ぐことが可能である。


暗闇の中、馬に乗った大群の兵士たちが城に向かって押し寄せて来る。服装や掲げている旗から味方が向かっていることが分かった。

数十人で西の大門を開いて見方が駆け込んでくるのを待った。

間もなく、物凄い勢いで馬に乗った兵士たちが駆け込んで来た。


「奥に進め、止まるな。」


撤退してきた兵士たちを迎え入れる係が、大声で叫んだ。


城壁の第一の広間には赤や緑の軍服に身を包んだ兵士たちで埋め尽くされ始めた。


「順番に上の層に進め。」


兵士の中に黒の軍服を着たモラン国兵士がいないことを確認して、第二の広間への入口を開いた。


「怪我人は救護室へ、それ以外は指示があるまで食事と休憩を取れ。ただ、応戦が直ぐに始まるかもしれない、いつでも戦えるよう準備はしておくように。」


自分では歩けない重傷のものは担架で運ばれ、歩けるものは自分の足で救護室へ向かった。


殆どのアルーム、ムンド軍が大門をくぐったことを確認すると、鉄の大門を閉じ始めた。

門の外では、まだあちらこちらでアルーム、ムンド軍とモラン軍の兵士たちが争っているのが見えた。

また、その頃には、アバガスは黒の軍服の大群に囲まれ始めていた。




アシルはサムートと二人の将軍を迎えた。

三人は大きな怪我もなく無事に戻ってくることが出来た。


「三人に大きな怪我がなくて安心したよ。」


アシルが心から嬉しそうな表情を見せた。


「私たちは何とか無事だったが、兵士の三分の一近くがやられた。」


サムートが悔しそうな表情を見せた。


「一万強は戻ってこれたってことだね。」


アシルが穏やかに答えた。


「そう言うことになるな。所でエイナーは?持ち場にいるのか?」


「ああ、まだモラン軍からの攻撃が始まらないので、兵士たちを待機させている。いつ攻撃が始まるかわからないからね、僕も指揮に戻らないと。」


そう言うと、アシルはきびすを返して、エイナーの元に向かった。そして、思い出したかのように、


「そうだ、ここに来る途中でカリーナ王女の馬車と遭遇しなかった?」


「…いや。パレオスには道を通らず、草原を通って行ったからだと思うが、そんな馬車とすれ違った記憶はない。それに、戻って来るのに必死だったからな。」


サムートがアサヤとナフナに視線を向けたが、二人も首を横に振った。


一昨日おととい、君たちが出兵した後にカリーナ王女がここにやって来たんだよ。そしてエイナーを刺して帰って行ったんだ。」


アシルが端的すぎる物言いをしたため、サムートは理解に苦しみながら、尋ねた。


「…刺して帰った?」


「そう。」


「持ち場にいるって言っていたが、エイナーは大丈夫なのか? どうして刺されたんだ?」


「エイナーは大丈夫だよ、まだ少し傷は痛むらしいけど問題ないって。刺された理由は、カリーナ王女はエイナーがサムートをそそのかしたと勘違いしている。今回のダージャン討伐はエイナーに責任があると思っているみたいだった。」


「ああ全く、カリーナ王女…また、迷惑な勘違いを…兎に角エイナーに会いたい。」


そう言って、サムートは先を急いだ。


エイナーは城壁の上で弓矢隊と投石機隊の指揮に就いていた。サムートが声を掛けると、


「サムート。お帰り。」


本当は抱きつきたい気持ちを抑えて、エイナーが穏やかに答えた。


「刺されたんだって。大丈夫だったか?」


「大したことないよ、もうほとんど治ったし。」


そう言って傷の辺りを、自分の手で軽くたたいた。軽くたたいたつもりだったが、りきんで強めに叩いてしまったようで、痛かった。でもそのことは顔に出さずにこらえた。







今回のお話はいかがでしたでしょうか?

ほんのちょっとでも続きが気になるという方がいらっしゃったら、本当に本当にうれしいです。

よろしければ、いいね!ブックマークなどもよろしくお願いします<(_ _)>

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毎週水、土、日の14:30に新しいエピソードを更新しています。

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ざっくりとした世界観説明用地図と家系図を載せました。理解の参考にしていただけると幸いです。


地図 全体

挿絵(By みてみん)


地図 モラン国周辺拡大

挿絵(By みてみん)



家系図

挿絵(By みてみん)


登場人物が増えたので追記しました。

リュウ・ズーシュエン(劉紫轩):虚明堂の副堂長

ヤン・リーイン(楊日瑩):ムーランと同一人物

リュウ・ズーハン(劉紫涵):ジェイドと同一人物


マラト・ベルカント:ある組織の幹部、ジェイドの仇

ジャーダン・ナラハルト:モラン国王の娘婿、国王の摂政(マラトと組んでモラン国を拡大させていると言われている。)

アラン2世:モラン国王(体調不良で表には出てこないと言われている。)

カリーナ王女:アラン二世の娘、ジャーダンの妻


アクセル・ゲイラヴォル:軍でのエイナーの上官

ヴォルヴァ・ゲイラヴォル:アクセルの妻

テュール(8) 、マグニ(6)、ダグ(4)、エーシル(1):ゲイラヴォル家の子どもたち(年齢)


サムート・ハン:エイナーの文通相手だったアルーム国の王子

マルチナ・アリア:サムートの婚約者


ヤン・フォンミン(楊楓明):ユーリハ国王軍の司令官、ズーシュエンの母方の従兄

タユナ・ハイネン:ユーリハ国王軍の副司令官

アリマ:ユーリハ国王軍の女性兵士、ジェイドの友だち


ジョゼフ・テオ:ある組織の創設者


ヤン・シィェンフゥア(楊仙華):ズーシュエンの母親、虚明堂の前堂長

リュウ・シュエンュエ(劉轩月):ズーシュエンの父親、菓子屋

リュウ・ュエフゥア(劉月花):ズーシュエンの妹、虚明堂の現堂長

シャンマオ(バナジール):西山で洋食屋をやっている元(現役?)ハリスの部下

チャン・リーファ:(張李花)ズーシュエンの彼女

ワン・シア(王仔空):リーファの息子


ソフィアとその祖母:ナルクで出会った麦畑の少女とその祖母


師匠 マチアス・ジュノー:ジェイドの師匠、元軍医、東アルタ在住

ペペとムー:ジェイドの犬たち

ピン:ジェイドが飼っていた猫


ヤン・ジンウェン(楊金温):ピブラナ国の首都ボヤーナで医師をしている女性

ヨナス・デスモン:ピブラナ王室に送り込まれた、マラトの部下


バナム・アルマン:南モラン地区(旧アルーム国)の物資調達責任者、モラン国大臣代理

アルタイル(通称:アル):バナムの部下

カジャナ・ポナー:サムートの主治医

ナズ:カジャナ医師の助手

アスリ:カジャナ医師の助手

メイ・モーイエ(梅莫耶):旧アルーム国の首都グレナディで医者をしている女性


エレン・クム:元ムンド国皇太子

アシル・クム:元ムンド国第二王二

ルスラン八世:元ノンイン国王

アサヤ将軍:元アルーム国軍の将軍

ナフナ将軍:元ムンド国軍の将軍

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