病ンデル童話選【不思議の国のアリス】
グロ・サイコ・殺人・厨二病要素満載ですのでご注意。
ある日、ピクニックの途中に出会った1匹の白ウサギ。
一目見て、私はあなたを好きになったわ。
「なんて可愛い白ウサギさん! ・・・ねえねえ、白ウサギさん。そんなに急いでどこに行くの?」
「ねえねえ、白ウサギさん。私の声を聴いて」
「ねえねえ、白ウサギさん。私を見て」
「ねえねえ、白ウサギさん・・・」
「――私を無視しないでっ!」
――かくして私は白ウサギを追いかけて、ワンダーランドに迷い込む。
この世界は全てがデタラメで、全てがホントウ。
小さくなったり、大きくなったり、首も伸びたり。
私の体はめちゃくちゃよ。
でも私はくじけない。
奇妙で無礼な人達との何でもない日を祝うお茶会も。
不気味な芋虫が誘うままに怪しいキノコをかじるのも。
これも全部白ウサギさんと合うための試練。
あなたを振り向かせるためなら、私、いくらでも耐えられる。
いくらでも乗り越えてみせるわ。
そして、やっと追いついた場所はハートの王様と女王様の玉座の前。
布告役の白ウサギさんがラッパを吹いて開廷を告げる。
被告人はハートのジャック。
女王のタルトを盗んだ罪で死刑は開廷と同時に確定しちゃった。
・・・こんなインチキな裁判、聞いた事ないわ。
さあ、行きましょう白ウサギさん。
こんなバカげた裁判なんて抜け出して、私と楽しく遊びましょう?
第一、ハートのジャックが女王のタルトを盗んだなんて、私にはどうでも良いもの。
乱入した私に、怒ったハートの女王が声高らかに宣告する。
「この者の首をお刎ね!」
私に一斉に飛び掛かるトランプ兵。
でも私は彼らを手にしたフラミンゴで薙ぎ払う。
・・・ふふ。ふふふ・・・ああ、おかしい。
チェシャ猫は言ったわ。
「どこに行きたいかわからないなら、好きな道を行けばいい」って。
「だって、アリス。君がどの道を選んでも、必ずそこにたどり着けるんだから」って。
公爵夫人も言ったわ。
「世界を動かすものは、ほかならぬ愛」だって。
この世界では、私が選ぶものは全て正解。全てホントウ。
そして私の愛が世界を変えるの。
だから私は決めた。
この世界をハンプティダンプティみたいに粉々に砕いちゃおう。
そして私は女王になるのよ。
――赤い薔薇よりも、血よりも真っ赤な「赤の女王」に。
そうすれば、この世界は私の物。
そして・・・白ウサギさんも私のモノ。
だからね。
白い薔薇を赤く塗るペンキは――あなたの血よ、ハートの女王。
フラミンゴを一振りすれば、死刑執行人の剣に早変わり。
私は鮮やかにハートの女王様の首を刎ね、ハートの王様の首を刎ね、ついでに傍聴人の首を次々と刎ねる。
そして私は真っ赤に染まった玉座の前。
緋色の世界の住人は私と・・・白ウサギさん、あなただけ。
怯える白ウサギさんの可愛らしさに私の頬は思わず緩む。
ああ、私の可愛い白ウサギさん。
やっと私を見てくれた。
やっと私の声を聴いてくれた。
・・・ふふ、そんなに震えないで。
そして私は白ウサギさんをぎゅっと抱きしめる。
ああ、やっと捕まえた。
私とずっと一緒にこの世界にいましょう。
そう、ずっとずっと・・・2人だけ。
――ねえ、白ウサギさん。
私から逃げ出そうなんて・・・もう思っていないわよね?
私はチェシャ猫みたいにニイと笑った。
また逃げ出したら――あなたの首も刎ねちゃうわよ?