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ボドゲ日和  作者: A
6/7

おばけキャッチ

仕事が終わり家に帰る。


鍵を開けて扉を開いたときだった。


真っ暗な玄関に体操座りでこちらを見つめる青年の姿があった。


一気に全身に鳥肌が立つ


「きゃーっ」


思わず女みたいな声で叫んでしまった。



……


……ぷっ


「あははははっきゃーって姉貴相変わらず脅かし甲斐があるなあ!笑」


この顔には見覚えがあった


「れ〜ん〜!!!」


弟の蓮だった。私は蓮の頭を腕でロックするとグリグリと怒りを込めて攻撃した。


「いたたたっ!ごめんごめん!謝るから許して」


「許さない!私がおばけとか弱いの知っててやってるだろっ」


「だって姉貴のリアクション面白いんだもんっ笑」


「だいたい来るならLINEくらいしてよ!」


「LINEしたら脅かせないじゃん」


「蓮っ!」


「あはは!笑 まあまあ、部屋も綺麗に片付けてあげたんだから許してよ」


確かに散らかってた部屋が綺麗になってタバコの匂いもしなくなってる。


「仕方ない、この働きに免じて許してやる」


蓮の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「あっご飯もできてるよ!」


「お前は嫁かっ!笑」


部屋着に着替えてリビングに行くと、いい匂いがする!


「カレーっ!」


「正解〜!」


蓮はカレーをよそってテーブルに並べてくれた。ライスには乾燥パセリがまぶされていてお洒落な仕上がりだ。


一口食べる。


「美味いっ!また腕を上げたな、来年はレストランにでも就職するの?」


「うーん、まだわかんないかなぁ…レストランよりカフェとか開きたいっても思ってるんだぁ」


カフェかぁ


「明日ちょうどカフェに行くんだけど一緒にくる?」


「え?行くっ!でも姉貴がカフェとか珍しいね。」


「最近可愛い友達が出来てね、その子に教えてもらった。」


「姉貴に友達!?全身タトゥーとピアスまみれとか?」


「そんなんじゃないよ!普通に可愛い、ガッキーに似てるかな?」


「ガッキーって、そんな可愛い子とどこで出会ったの?」


美咲ちゃんとの馴れ初めを蓮に話す。


「姉貴らしいなぁ、その美咲ちゃんって子にも会ってみたいかも」


「美咲ちゃんにも多分明日会えるよ」


ピコン


「おっ!話しをすればだな」


美咲ちゃんからだった


『明日どうですか?』


『大丈夫だよ!弟が遊びに来ててカフェに興味あるらしいから、明日は久しぶりにパンケーキも食べに行く?』


ピコン


返信が早い


『行きます!』


『決まりだね!じゃあまた明日、駅で待ち合わせね』


ピコン


『はぁい!おやすみなさい!』


『おやすみー』



「蓮、今日は一緒にベッドでねる?笑」


「寝ないよ!!俺はソファーで寝る!」


「可愛いくないなー!昔はお風呂にも一緒に入ってたじゃん」


「昔の話だろ!」


私は蓮をからかった後に寝室に行き一服する。


赤ちゃんだった弟も、いつのまにか大きくなってなんだか感慨深いものがあった。


「さぁて寝ようかな」


明かりを消して目を閉じる。


わたしはその夜、昔の夢を見た。


走ってる私に幼い蓮が付いてくる。


転んで泣く蓮に私は何かを伝えると、蓮は涙を拭き立ち上がった。


目を覚まして、ふと考える。


何て言ったんだっけな?


過去の記憶を遡っているとドアがノックされた。


「姉貴、朝飯の用意できたぞー」


「はーい、今行くーっ」


まっ、いっか。わたしはリビングに向かい蓮の作ってくれたお味噌に口を付ける。


「美味いっ!母さんの作ってくれたお味噌の味に似てる!」


「俺は、母さんのご飯の味なんて覚えてないはずなのにね…」


母さんは蓮の幼い頃に、病を患って亡くなってしまっていた。


母さんが亡くなってからは私が母さんの代わりになろうと躍起になっていたもんだ。


ご飯を食べ終え、まだ時間があったので、私はバッグを漁り二ムトを取り出した。


「姉貴、それ何?」


「いわゆるボードゲームってやつさ」


「ボードゲーム?」


私はボードゲームのことや最近の出来事を蓮に話した。


「へぇー、パチンコばっかりだった姉貴がボードゲームねー。そんなに面白いの?」


「やってみたらわかるさ」


それから2時間近く私たちは二ムトにハマり込んでいた。


「あー!また負けたー!姉貴ずるしてない?」


「蓮の顔を見りゃだいたい何出そうとしてるかわかるんだもん!笑 少しはポーカーフェイスを覚えな?」


「ポーカーフェイスね…ムッ」


「その顔疲れない?」


「疲れるし顔がツリそう…」


「あははっ!ポーカーフェイスなんて嘘の付けない蓮には難しいよね!笑」


「悔しー…もうひと勝負!」


「残念ながら、もう時間だわ!支度して駅まで行くよ!」


私と蓮はバイクに乗り駅へと向かった。

しばらく待っていると可愛らしい女の子が手を振りながら走ってきた。


「椿さーん」


「美咲ちゃん!おはよー!」


「この子が例の…確かにガッキー…」


「ガッキー?」


「…あっ!コッチの話!笑 コイツは弟の蓮、コッチは美咲ちゃん」


「ども」


「初めまして」


顔を真っ赤にする蓮。


「酢蛸かお前は!笑」


「うるせぇ!カフェ行こうカフェ!」


「はいよ!そこのカフェにまずは行こうか!」


私たちはカフェに入り、天使のパンケーキを注文する。


「こんなお洒落なカフェ入るの初めてだ」


「ここのパンケーキはすごく美味しいんですよ!」


「へぇー、普通のホットケーキと何が違うだろう?」


「食べてみればわかるさ、私も最初は同じ事を思ったから。」


そうこうしてると天使のパンケーキが3つテーブルに並んだ。


「いただきます。」


蓮はパンケーキにナイフを入れると異変に気づく。


「柔らかすぎる…しかも口に入れた瞬間に…溶けて無くなる!」


「美味しいでしょ?」


「美味い!どうやったらこんなの作れるんだろう。レシピが気になるー!」


「変わった弟さんですね!笑 でも気に入って下さったみたいで良かったです!」


「蓮!今日はカフェをもう一軒梯子するよ!」


「もう一軒?」


私たちはパンケーキを平らげると、ねこ屋へと向かった。


「カードandカフェ ねこ屋?カードってトランプとか?」


「トランプもあるかもしれないけど、もっと面白いものがいっぱいあるんですよ!」


「ここはボードゲームが出来るカフェなんだ!ほら、朝二ムト一緒に遊んだろ?あーいうゲームがいっぱい置いてあるんだ!」


「へぇー」


カランカラン


扉を開けると様々な猫グッズに蓮は目を輝かせた。


「すげー!」


「いらっしゃい!…お?初めて見るお客さんだね!」


「いらっしゃいましたー!コイツは弟の蓮って言います!蓮、この人がこの店、ねこ屋のマスターさん」


「初めまして」


「こちらこそ初めまして!ゆっくりしてってよ!」


私たちは、カウンターに座ると各々好きな飲み物を注文した。


「ティーカップもティースプーンもねこだー!」


「マスター、ガンナガン貸してー!」


「椿さん、ガンナガンは2人用なんだ。どうせなら3人で出来るゲームにしたら?」


「マスターなんかおすすめある!」


「あるよー!あるある!」


店の奥から奥さんが小さい箱を持ってきた。


箱の名前に私はギョっとする。


「おばけキャッチ?!」


「姉貴の苦手なおばけだね!笑」


「椿さんおばけ苦手なんですか?意外!笑」


奥さんは箱を開けると5つのコマを並べた。


「おばけって言っても可愛いおばけなの」


「本当だ、可愛いっ!」


「このゲームは白いおばけ青い本灰色のネズミ赤い椅子緑の瓶を使います。で、このカードの束から一枚をめくり正しい色のコマがあったらそれを早く取った人にカードが得点として配られます。」


「もし正しい色がなかったら?」


「その時には絵にない物と色のコマをとります。例えば、緑のおばけと赤いネズミなら青い本を取った人に1ポイントです。」


「あー、こんがらがりそう」


「確かに難しそうですね…」


蓮は1人興味深々にコマを見ていた。


「このコマ全部木で出来てる…すごい細かい。」


「おっ蓮くんは見る場所が違うねぇー!それもこの、おばけキャッチのいいところなんだ。」


「まずはやって慣れましょ!」


私たちは囲める丸テーブルに移ると、おばけキャッチを始めてみた。


「赤い椅子と青いおばけ」


サッ!


奥さんが素早く赤い椅子を取る。


「はえー」


「はやっ」


みんな驚く反射神経。奥さん手加減する気ないな!


「初心者相手に本気だすなし!」


マスターが突っ込む。


「いえ、今ので私火が付きました。」


美咲ちゃんの目が燃えている…


「青いおばけと灰色の椅子」


「はいっ」


美咲ちゃんがいち早く緑の瓶を取る


「はやっ」


「なんか、わかってきたかもです。」


「流石、美咲ちゃん!飲み込みが早いね」


私も負けていられない…武道をやってた者として反射神経で負けるわけにはいかないのだ。


「赤いネズミと白いおばけ」


「はいっ」


私は目の前の白いおばけを手に取った。


「早いっ」


「私も負けてらんないからね!」


それから私たちは僅差でカードを奪い合ったりチョンボしてカードを渡したりしながら最後の一枚になった


「緑のおばけと灰色の椅子」


「はいっ」

「はいっ」


蓮と美咲ちゃんが同時に手を出し、お互いの手に触れる。


「あっ」


双方思わず手を引っ込め顔を赤くする


「いただきっ」


最後の一枚は奥さんがゲットした。


「さあ全部取り終えたらカードの枚数を数えてください。1番多い人の勝ちです。」


奥さんからカードを数える


「21枚!」


次に私


「15枚」


次に美咲ちゃん


「20枚」


最後に蓮


「4枚」


「蓮弱すぎ!笑 4枚て!笑」


「うるさい!皆んなが強すぎなんだよ」


「確かにやり慣れてるし、1番得意なウチの嫁がここまで僅差に追い詰められるのは初めてみたよ!」


「うー、最後の一枚が取れてたら…」


思い出したように蓮と美咲ちゃんは目を合わせると、サッと視線を外し顔を赤らめた。


ほー。


この2人はもしかしたらもしかするかもしれない。


不意に蓮が口を開く


「あの、マスター!」


「はいっ!」


「弟子にしてください!」


「はいっ?」


「俺、カフェを開きたいって思ってて、このねこ屋みたいなカフェを開きたいんです!休みの日にアルバイトとして雇ってください。」


「いーよ!」


『いーのっ?』


みんなが一斉に声を揃える。


「うち実はあんまりコロナの影響受けてないんだよね、人手は嫁使うくらい足りてないから、ちょうどよかったよ!」


「ありがとうございます!」


無事、蓮のアルバイト先が決まり私たちはそれぞれの家路に着いた。


ピコン


あら?美咲ちゃんかな?


蓮だった。


『今日は、ありがとう!すっごく楽しかったよ!…あと、美咲ちゃんのLINEって聞いたら引かれるかな?』


おうおう、ウブやなぁ〜


ピコン


今度は美咲ちゃんか


『今日も楽しかったですね!…あの、蓮くんが嫌じゃ無かったらグループLINE作りませんか?』


美咲ちゃん考えたな


『グループLINEいいね!蓮も喜ぶと思うよ!じゃあ私が作るね』


グループ名は何にしよう。


ふと頭に浮かんだフレーズをグループ名にした。


『ボドゲ日和』


その夜、ウブな2人のLINEを見せつけられ続けた私は思わずミュートにして眠りについた。


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