XENO
仕事が終わり、家路に着く。
タバコに火をつけると、私はスマホでボードゲームについて調べていた。
「世界三大ボードゲーム?」
囲碁、将棋、オセロとかかな?
『カタン、ドミニオン、カルカソンヌが世界三大ボードゲームと言われています。』
あ、ドミニオン!へぇードミニオンって有名なボードゲームなんだ。
後のやつはわからないけど、ドミニオンと同じくらい面白いんだろうな、きっと。
私は、未知のゲームにワクワクさせられていた。
そんなとき。
ピコン
LINEが届いた。
美咲ちゃんだ
『明日は待ちに待った日曜日ですね!13時に、ねこ屋で待ってますね』
『了解!またドミニオンやるの?』
ピコン
『明日は違うゲームをしましょうか。何をするかは明日のお楽しみです。』
違うゲーム?カタンってやつかカルカソンヌってやつかな?
『楽しみにしてる!』
っと。
私はタバコの火を消すと、灯りを消してベッドに横になる。
…眠れない
って遠足前の小学生かっ!
とりあえずスマホを開き、またボードゲームについて調べる。
『ラブレター』
へぇー、お姫様にラブレターを渡した人の勝ちか、面白いみたいだけど内容が私向きじゃないわ…ラブレターとかむず痒い。
横になったまま目を閉じているといつの間にか落ちていた。
〜翌日〜
ねこ屋に向かうと、美咲ちゃんがすでに待っていた。
「椿さーん」
満面の笑みで手を振る美咲ちゃん…可愛い。
「ごめん、待った?」
「いえ、今来たとこですよ!さあ中に入りましょうか。」
カランカラン
「いらっしゃいませー」
中に入ると可愛らしいちっこい女性が席に案内してくれた。
「ここマスターだけじゃないんだね?」
「あー、あの人はマスターの奥さんですよ?」
「奥さん!?あの優男結婚してるのか」
「結婚してますよー。で、たまに奥さんがお手伝いにくるんです。奥さんもボードゲームお強いんですよ!」
「へぇー」
とりあえずホット2つ注文して、美咲ちゃんが奥さんに何かをたのんだ。
「はーい、ホット2つとお待ちかねのXENOですよ!」
「ありがとうございます」
「XENO?初めて見るゲームね」
「結構新しいですからね、でも凄く面白くて奥が深いです!」
美咲ちゃんは箱を開くとテーブルにカードをスーッと広げる。
「凄く絵が綺麗!」
「ですよね!」
あれ?私は異変に気づく。
「このカード説明が何も書かれてない!」
「そうなんです!スマホを出して貰えますか?」
言われるがままスマホをだして、カードのQRコードを読み取る。
「なんか近代的ね!」
「このカード、作ったのは中田敦彦さんなんですよ」
「って、オリラジのあっちゃん?」
「そうです。ラブレターってカードゲームを元に中田さんが作られたんです。」
「ラブレター?…ああ、知ってる」
「有名ですからね!さて始めてみましょうか!」
そう言うとまずは1枚ずつカードを引いて公開する。
私は6美咲ちゃんは8
美咲ちゃんの先攻で勝負は始まった。
「まずは山札の上から1枚目を山札の下に横向きにして起きます。これは転生カードと呼びます。使い方はおいおい説明しますね、そしてお互いに1枚づつ引いてそれを手札にします。」
私の手札は英雄のカード!
凄く美人な女性のイラストが描かれている。
点数は10点と1番大きい。効果はっと…スマホで説明を見る。
使えないの!?
どうやらババのようなモノを引いてしまったようだ…
「では、私から…山札を1枚引いて、呪術師のカードを使います。椿さんの手札を見せてください。」
わたしは渋々、カードを公開する。
「英雄ですね、わかりました。次は椿さんの番です。」
私は山札から1枚引くと、少年のカードが出た。数字は1、効果は…1枚目は効果を発揮しない?何それ?
英雄は使うことができないので、少年を切る。
「では私の番、一枚ひいて…兵士のカードを使います」
「兵士?」
「兵士は相手の手札を当てたら勝利のカードです。」
「…ってことは?」
「椿さん、そのカードは英雄ですね?」
「…正解!負けたーっ!早っ!」
「XENOの勝敗は早いときは早いですからね!二回戦行きますか!」
「望む所よ!」
それから何戦か繰り返し、XENOの奥深さ、読み合いの楽しさに私はハマり込んで行った。
「椿さん…読み合いになると強いですね!」
「美咲ちゃんも戦い慣れしてるのが伝わってくるわ」
「いい時間になりましたから次をラストにしましょうか?」
「最後は勝って気持ちよく終わりたいわね」
「ですね!では始めますよ!」
先に美咲ちゃんが山札を引き次に私が山札を引く。
少年のカード…微妙すぎる…
美咲ちゃんの先攻で始まった。
「では、私は1枚引いて…乙女のカードを使います」
乙女は次の自分の番まで相手のカードの効果を受けない能力だ。
私の番、1枚引くと貴族のカードがきた。
貴族はお互いの手札を出し合って数字の大きい方が勝ちという能力。しかし乙女を使われている上、手札が1の少年なので絶対勝てない。
「じゃあ私は、少年のカードを使うわ。」
少年は1枚目だと何の効果もない。
「私も少年のカードを使います!公開処刑の発動です!」
2枚の少年は公開処刑。私は1枚引いて手札を見せ2枚のうちどちらかが捨てられる。
1枚カードをめくると英雄のカードがでた…
もし私の番なら貴族で勝負して勝ちだった所なのに…悔しい。
「貴族と英雄ですか…英雄は残しとくと後々危険そうなので英雄を捨てます。」
あー!
しかしここで英雄の効果が発動する。
皇帝による公開処刑の場合英雄を切られると負けになるのだが、それ以外のカードで切られると転生カードによって蘇ることができる。
わたしは恐る恐る転生カードをめくると兵士のカードが出た。
貴族を使っても2の兵士では勝負にならない。
「ここは、兵士のカードを使わせて貰うわ!」
「椿さん、流石にこんな序盤に当てられないでしょ?」
「どうかしらね…」
皇帝は多分ないわ、あったら英雄を切ったりしないはず。
少年のカードは2枚でてるからもう無い。
もしかして、貴族?1枚は私が持ってるから確率は少ない…でも私の感が貴族だと言っている気がする。
「もしかして…貴族?」
…
…
……
「….どうしてわかったんですか〜」
美咲ちゃんが手札を公開すると貴族のカードだった
「いったい椿さんは何分の1を当ててるんですか」
「女の感よ!」
カランカラン
その時扉が開きマスターが現れた。
「あっマスター!」
「お邪魔してます!」
「おーっ美咲ちゃんと椿さんだったかな?また来てくれてありがとう。今日はXENOかい?」
「はいっ!ちょうど帰ろうかと最後の勝負をして、負けちゃったとこです…ところでマスター、買い出しですか?」
「うん、知り合いのボードゲーム屋があってね、新しいボードゲームを買って来たとこなんだ」
そう言うとマスターは大きな袋から、大きな箱を取り出した。
カルカソンヌ
「あっ!カルカソンヌ!」
「椿さん知ってるんですか?」
「うん、世界三大ボードゲームですよね?」
「椿さん詳しいね!そう、カルカソンヌはカタン、ドミニオンと並ぶ世界三大ボードゲームの一つなんだ。」
これが、カルカソンヌか…
「マスター!一回だけ遊ばせてくれませんか?
」
ついマスターにお願いしてしまった。
「椿さん、残念ながらもうそろそろ店じまいでね…カルカソンヌは初心者がプレイすると1時間はかかっちゃうし、また今度ね」
ガクっ
今までに無いくらい落ち込んでしまった。
「椿さん完全にボドゲ沼にハマってしまったね!結構結構!」
「ボドゲ沼?」
「ボードゲームはあまりの面白さに遊んだ人は軒並み沼にハマってしまったようにどっぷりハマっちゃうんだよ笑 美咲ちゃんもそのうちの1人だね」
「私を沼にはめたのはマスターでしょ?」
「そうだったね!初めてうちの店に美咲ちゃんが来たときの事を今でも覚えてるよ。今とは比べ物にならない目に光が無くてね、その美咲ちゃんの目に光を与えたのが、このドミニオンってわけさ。」
目に光のない美咲ちゃんなんて想像できない。
「椿さんも初めてうちに来たときより比べ物にならないくらいに輝いてるよ?」
私が輝いてる?
毎日、何の為に生きているのかわからないで、ずっと独りで過ごして来た。
そんなある日、美咲ちゃんと出会って、ボードゲームと出会って、私は知らないうちに変わっていたみたいだ。
「これもドミニオンの力ですね!」
「だね!」
私たちは店を後にするとまた遊ぶ約束をした。
家路に着きタバコに火をつけ深く吸い込む。
ボードゲームの後の勝利の一服がたまらない。
ピコン
LINEだ。
『カルカソンヌ楽しみですね』
『うん、世界三大ボードゲームだしね!すごくやりたくてうずうずするわ』
何を言ってるんだ私は
ピコン
『椿さんは、やっぱりボドゲ沼の住人ですね笑』
『美咲ちゃんもね!笑』
私はタバコの火を消すと、カルカソンヌについてスマホで検索してみた。
美咲ちゃんより一歩先に出たいからだ!
大人気ない?ちがう、ライバルに対する礼儀だ!
その日私はカルカソンヌの遊び方について一晩中勉強した。
その翌日、仕事で死ぬ目に会ったことは言うまでもないだろう。