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或るウイルスの物語  作者: RARUHI
5/5

1つの終わりと1つの始まり

今回の小説には特撮ネタや、特撮キャラをモチーフにした人物が物語中に登場します。

苦手なかたはブラウザバックを推奨します。

それでも大丈夫だと言う方は、ぜひお楽しみください。

「コイツぁ話して何とかなる相手じゃなさそうだな!」


「同感ね。でも、ここであまり長く足止めされる訳にもいかないわ。

そういえば、まだここからどうするかについては話してなかったわね。いい?弟くんと別れる時に渡したあの薬、あれは『SCウイルス』の進行を一時的に抑える薬なの。簡易的な物だからせいぜい2時間くらいしか効果は無いけど、でもワタシのラボの中にもっとちゃんとした物と、それを作る為のデータがあるの。それを回収するのが」


「俺たちの役目、だな?」


それを聞くと、分かってるじゃないの、と言ってニヤッと笑いムチを構えた。


「さて、それじゃあコイツをさっさと倒しちゃいましょう。もちろん、戦えるわよね?」


「もちろん。こうなる事も考えてちゃーんと武器は持ってるよ」


俺は笑いながら特殊警棒を取り出した。


「太陽に代わってお仕置きよ」


それを聞いた俺は一瞬呆気にとられた。(え?何言ってんのこの人。……どっちかっつーとアンタはつk)

そんな脳内ツッコミをさせる気は毛頭無いのだろう。男の方から攻撃を仕掛けてきた。

目の前のバケモノは大ぶりのナイフを持ったまま、俺の右にいた京水さんに突進した。しかし突進された京水さんは、ナゾのヌルッとした動きでそれを回避すると、すれ違いざまに背中にムチによる一撃を加えた。

その一撃は確かにすれ違いざまの無防備な背中に放たれ、少なからずダメージを受けたはずだが、そんな事はお構いなしに今度は俺に向かって突っ込んできた。

(コイツは薬物キめてる奴と一緒だ。痛いだけじゃ止まらない。なら)

俺はバケモノが力任せに放った横薙ぎを身体をかがめて避け、左脚の外膝を警棒で思いきり殴った。うまくいけばこの一撃で左足は破壊できる、と思ったがあまり効いていなかったのかソイツは左脚で蹴りを放ってきた。俺はそれを察知て両腕をクロスして何とか防ぎ切った。そして防がれたのが分かった瞬間さらに追撃しようとしたが、それは京水さんによるムチ攻撃で回避された。

(今のは予備動作があったから何とか対処出来たが、対処しても結構響くな。これ直撃したらまずいぞ)

そう考えながらも俺は、京水さんと対峙しているバケモノに後ろから奇襲を仕掛けた。京水さんもそれに気づいて、バケモノが放った突きを躱し、さらにその両腕をムチで縛りすぐには動けないようにしてくれた。

これで決める。バケモノは今俺に背中を向けて、京水さんに意識がいっている。この位置なら後頭部を警棒で殴り意識を飛ばす、場合によっては殺す事ができる。回避、まして反撃もできない状況

のはずだった。

バケモノは死角にいた俺に気付くと、縛られている両腕を力任せに振って、ムチを握っていた京水さんを俺にぶつけてきた。

俺も京水さんも完全に不意を突かれたせいで、受け身もまともにとれず壁に背中を打ちつけた。打ち付けた瞬間、肺から一気に空気が絞り出され目の前が真っ白になった。その直後バケモノは俺をナイフで突き刺そうとしたが、間一髪身体をよじって串刺しを避けた。

だが、間一髪で避けたのがまずかった。ソイツはそこから突きを横薙ぎに変えてきて胸元を切り裂かれ、結構な深傷を負わされた。

俺は京水さんから喰らった平手打ちの比にならないほどの痛みを感じながらも、これ以上の追撃を避けるために無理やり立ち上がった。京水さんも左腕を押さえてゆっくりと立ち上がった。


「どう……です。大丈夫ですか?」


京水さんは苦笑いしながら


「人の心配してる場合かしら?カッコ良かった服が台無しじゃなくて?」


「まー、血塗れになっちゃうのは回避不可能ですけど、これ以上血が無くなるのはごめんですね」


悲観的になったって仕方が無い。そう割り切って、痛みに耐えながらたたけるだけの軽口を叩いてみた。


「アナタのこういう状況でも笑いを忘れないトコロ、嫌いじゃないわ。じゃあこれ以上血が無くならないように、次をラストアタックにしようかしら?」


「いいですね。じゃあ作戦、聞かせてくださいよ」


そう聞くと俺のほうを振り向いてサムズアップしながら


「『男のコなら当たって砕けろ』よ?」


「それ誰の言葉ですか?」


すると京水さんは再び笑って、ワタシの言葉よ?とかえされた。予想外の答えに呆気に取られていると、流石にそんな事今回はしないわよ、と言われた。


「ノープランで突撃する訳じゃ無いわ。ワタシが合図したらワタシは正面から突撃するから、アナタは後ろから突撃して。そしたら…………」


作戦の中身は正直かなり一か八かだったが、もうやるしかなかった。


「い、いいですよ。上等じゃないですか」


「大丈夫よ。ワタシたちならできるわ」


そして俺と京水さんはゆっくりと武器を構えた。




「逝ってきまーす」


その京水さんの言葉を合図に京水さんは正面から、俺は回り込んで後ろから突撃した。

バケモノはまず正面から突撃してきた京水さんに狙いを絞り、ナイフで突きを放ってきた。そして京水さんはムチでバケモノの両腕を縛って動きを封じた。俺はそれを見て警棒を軽く握り、後ろから突撃した。

その瞬間バケモノは、さっきの一連の攻防を覚えていたためだろう、再び力任せに両腕を振った。

だが、


「残念だったな、想定内だ」


バケモノが両腕を振った瞬間に京水さんはムチの持ち手を手放し、一気に突撃した。

俺はこっちに飛んできた使い手のいなくなったムチの持ち手を左手で掴み、右手に持っていた警棒を京水さんに向かって投げた。

そしてムチで両腕を塞がれ、さらに力任せに振ったせいで体制を崩したバケモノは、後ろから京水さんの警棒攻撃、前からは俺の右回し蹴りを喰らい、痙攣するような反応をした直後、糸の切れた操り人形のようにバッタリと倒れた。

そう、これが京水さんの考えた作戦。

あの時の攻防をあえて布石として使い、体制の崩れたバケモノを前後からの同時攻撃で沈めるという、かなり大胆作戦だ。


「ほ、本当に成功しましたね」


「ワタシも正直驚いたわ。ここまでうまくいくなんてね」


バケモノは完全に沈黙している。京水さんにどうなっているのかを聞くと、どうやら先程の攻撃が急所を捉えており、首の骨が折れて死んだらしい。


「流石に力加減無しの攻撃を急所に喰らったら死んじゃうわよね」


そう言って俺と京水さんはその死体にむかって黙祷をした後、研究所にむかった。




研究所に着くと早速京水さんは、早速パソコンを使って何かを調べている。聞くと、ここに入っている『SCウイルス』の進行を最大限遅らせる薬のデータと最新の研究データを探しているらしい。


「……おかしい。ここにあるはずのデータが無くなってる」


「⁉︎そんなばかな、何かの間違いじゃないのか⁉︎」


京水さんは慌ててパソコンのログイン履歴を調べている。すると、


「今から10分位まえにワタシのパソコンに誰かがログインしてる。きっとその時に消されたんだと思う」


「それって……まさか」


「あの男の仕業で間違いないわ。でも安心して。消されてあまり時間が経ってないなら、データは復元できる」

それを聞いて少しほっとしたが、さらに最悪な事態に陥った。

俺が安心してふと横のパソコンを見てみると、液晶画面に言葉が写っていた。そこに写っていたのは

『コードΩ発令 直ちに研究員はここから脱出する様に』

と言うものだった。俺はその言葉の詳しい意味は分からなかったが、耳の奥で三田の嘲笑が聞こえた気がした。


「京水さん、これまずいんじゃないのか⁉︎」


パソコンの画面を見せると、かなり驚いた表情をして


「ええ、しかも最大級にまずい。『コードΩ』は研究所が何らかの危険に晒された場合の最終手段。内容を簡潔に言うとこの研究所全てを炎で焼き尽くす。ワタシたちも早く逃げないと炎に巻き込まれて大変な事になる!」


「データはどうなってる⁉︎」


「最新のデータは復元出来なかった。でも、最低限必要な弟くんのための薬のデータは復元できた。だから早く!」


そして俺と京水さんは研究所から脱出し、俺の車で京水さんの家で待っている淳たちのところへむかった。

車で向かう中で、俺は俺の母親について話した。俺の母親も4年前から原因不明の肺炎に悩まされているのだ。それと当時『旧新見国立病院』に通っていた事もあって、今回のこれと無関係ではない気がしたからだ。

すると京水さんは、母親の肺炎の原因が『SCウイルス』である可能性が高い事と『SCウイルス』について簡単に話してくれた。

『SCウイルス』は4年前に『旧新見国立病院』内で小規模ながらも、集団感染が確認されたウイルスらしい。当時発見されたのは感染能力も弱く、致死率も極めて低いもので、オリジナルと言う意味を込めて『o型』と呼ばれているらしい。

そして今回淳が感染したのが、感染能力が極端に低い代わりに、致死率を異常なまでに高めた『α型』だと言う。また最近、新たなウイルスの『β型』というウイルスも産み出されたらしいが、詳しい事は分かっていないらしい。




淳は薬を飲ませた事で何とか延命に成功はしたが、治療には成功していない。ちなみにあの後母親は『o型』に感染していた事が明らかになり、京水さんの働きもあって、京水さんの家で療養させてもらえる事になったが『SCウイルス』自体に治療薬が無いため母親も薬で延命しているカタチになっている。

聞いたところによると、パソコンの履歴に新たなデータが1度入っていた形跡があり、そのデータがあれば完全な治療薬が出来ると言う話だ。そしてその為には、あの三田という男からデータを奪わなくてはいけない。だが、いつになるのだろうか…………。




[EPILOGUE]

あれから3年が経った。

俺は未だにあの男の消息を追っていた。

だが今日、とうとう奴の尻尾を掴んだ。

もう、逃げられると思うな


[人体強化薬『F』と『SCウイルス』の解説]

『F』人体強化薬 とある人物の指令で制作が開始された薬。読んで字の如く、人体を強化する薬

主な効果は

1.肉体強化

2.集中力、反射神経の強化

3.戦闘及び死に対する恐怖の抹消

と純粋な人体だけでなく、精神にまで影響のある薬。ただし作中で出て来たものは使用者の知能を著しく低下させる副作用を持つ。また、強力すぎるその薬の力で今回のように使用者の身体が変形する場合も多く、実戦配備は見送られていた。

『SCウイルス』4年前に『旧新見国立病院』内で感染が確認され、そこから一部の人間のみその存在を知るようになったウイルス。

未だに治療薬ができていない。また、この『SCウイルス』には『o型』『α型』『β型』の3種類が存在する。

『o型』もっとも最初に発見された『SCウイルス』で、感染能力は低く感染しても症状はちょっとした風邪程度だが体質によっては重症化し、重度の肺炎を起こし最悪の場合死に至る。

『α型』『SCウイルス』の研究中に、特殊な環境下に置いた事で出来たウイルス。ウイルス自体はとても弱く、空気中では1分もただずに死亡するが1度感染すると重度の肺炎を引き起こし、90%以上の確率で死亡させる。

『β型』『α型』と同じく『SCウイルス』の研究中にたまたま生まれたウイルス。しかし、生まれたのがあまりにも最近すぎるせいで、どういうウイルスなのかはほとんど分からない。

残っていたデータによると、致死率はそこまで高くないが非常に高い感染能力を持つと言われている。

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