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或るウイルスの物語  作者: RARUHI
3/5

廃病院の住人

今回の小説には特撮ネタや、特撮キャラをモチーフにした人物が物語中に登場します。

苦手なかたはブラウザバックを推奨します。

それでも大丈夫だと言う方は、ぜひお楽しみください。

こういう研究所というのは、時として癖の強い人間がいるようにマンガやラノベでは描かれるが……どうやらここも例外では無いようだ。




「あらあら子ネコちゃんたち、一体どこからここに入って来たのかしら?ここは一般人立ち入り禁止なのよ?」


その声を聞いた瞬間、俺と東は完全に固まってしまった。

声は明らかに男の声だが、口調は女。

これは明らかに……。いや、言わないでおこう。人には聞かれたく無いこともあるのだ。


「あんたオカマなのか?」


東がそう言った瞬間、思わず東を二度見した。

(お前はバカか⁉︎俺も確かにそこは気になったが、そこを敢えて聞かないのが大人というもんだろうが‼︎)

そんな脳内ツッコミをしていると、


「あら、レディに対してそれは失礼じゃあ無いかしら?私は男の度胸と女の愛嬌を合わせ持つ最強の『乙女』なのよ」


(あんたはあんたで、そんな風にのるな‼︎コイツが調子にのる‼︎)


「おとめはおとめでも、あんたはどっちかっつーと『乙女』や『淑女』じゃ無くて『漢女』だろ」


そこまで聞いて、俺は危うく東をぶん殴るところだった。

この東という男、見た目こそ細身の優男だが肝が太く、こんな風に初対面だろうと何だろうと人をいじる事が出来る。しかもコイツが凄いのは、いじっている相手がどんな人間か2、3言話しただけで分かり、なおかつそれに応じてチキンレースのように怒りの沸点ギリギリで相手を遊ぶのだ。

ただ今回は相手が悪い。

俺たちは極秘の潜入取材中で、目の前にいるこの男(本人曰く乙女)はおよそこの廃病院の人間だろう。もし俺たちが潜入している事がバレたら何をされるか分からない。


「とりあえず聞かせてくれ、あんた一体何者だ?こんな廃病院にいて、その上その格好なのにただの一般人な訳が無いよな?」


その格好というのが、研究員らしい白衣に濃い青のスーツにチノパンという、ある意味その道の人間だろうとすぐに分かる格好(1番大きな要素は白衣だが)をしていた。背もそこそこ高く顔立ちも整っている。髪は短髪で顎ひげを蓄えてはいるが、不潔な感じはない。


「そういう事を聞くなら、まず自分から名乗るのが筋ってものじゃないかしら?」


「なら、腹割って話そうじゃねーか。俺の名前は石井 敦、雑誌記者をやってる。ここに来た目的も一応言っとくと、ここでウイルスを応用した生物兵器の製造をしているってゆう噂を聞いて取材にきたのさ」


「ついでに俺も話しておこう。俺の名前は東 隆矢、大学生だ。俺はコイツの取材の手伝いのために首根っこ掴まれて、無理やり連れてこらされた」


「こら隆矢、俺はお前を首根っこ掴んで連れてきた覚えはねーぞ‼︎」


とりあえず話さなきゃいけないことは、少しぐだったが話した。さて、どうくるかな?と思っていると、目の前の男は口元に笑みを浮かべた。


「そこまで話すって事は、本当に腹割って話しに来てるのね。そんなに真面目だと、生きていくの大変よ〜。

でも、あなた達のそんな所嫌いじゃないわ」


「そりゃどーも」


予想外の反応が来て驚いた。だが、一応話をしてはくれそうだ。


「私の名前は小泉 京水。ここ『新見国立ウイルス研究所』でウイルスの研究をしているわ。こう見えてもここの研究員の取りまとめ役、つまり研究員のトップをしてるのよ」


さらに驚いた。まさかここで研究員のトップに出会うとは


「でも残念ね」


そう言いつつ苦笑いをして頭を掻いていた。


「どういう事だ?」


「あなた達はその生物兵器の製造の話を聞くことが出来ないから」


あーやっぱりか。(話を聞きたいなら力ずくで来いってか?上等だよ)

初めて見た時からずっと気になっていた。この男、研究員にしては随分とゴツいのだ。白衣を着ていても分かるほどガタイがいい。


「ならしゃー無いな。力ずくで聞かしてもらおうか。いくぞ東」


そう言って身構えると東が


「おーいお前、さっきのセリフはどうした?『記者魂にのっとって、至って紳士的な態度で話を聞く』んじゃ無かったのか」


「だから拳を使って紳士的に聞くんだろうが」


それは紳士的とは言わん、とツッコミを入れられつつも構えているあたり、東も乗り気だろう。さて、どう出るかな?


「ちょっとあなた達、少し勘違いして無いかしら?

確かに話を聞く事が出来ないとは言ったけど、そういう意味じゃないわよ」


どういう事かと少し唖然としているとやれやれと息を吐きながら、


「そもそも私たちがここで研究してるのは、ウイルス、もとい『SCウイルス』の特効薬を作るためよ?

生物兵器作ってる話なんて出来る訳ないじゃない」


「なんだって⁉︎そんなバカな。嘘だろ⁉︎」


「嘘を言ったって仕方ないでしょ?信じられないなら、ここの研究所案内してあげるけど?」


「本当か?」


「ええ。ここの責任者は別にいるけど、別に許可なんて要らないだろうし。それに、私自身ももっとこれについては知ってもらいたいしね」


そんな訳で、小泉さん(本人は京水と呼んで欲しいと言っていたので、これからは京水さんと呼ぶけど)の厚意により、この研究所の案内をしてもらえるようになった。

さて、こうなったら神垣さんにも連絡しないとなと思っていると、急に俺のケータイに神垣さんから電話がかかって来た。


「あー神垣さん、ちょうどいいところで電話してくれましたね。実は……」


「それどころじゃねえ‼︎お前の弟が‼︎」


明らかに焦っている声がケータイの向こうから聞こえて来た。


「淳がどうかしたんですか⁉︎」


「さっき廊下を歩いてたら正面から白衣を着た男がやってきて、淳くんに向かって変な液体をかけてきたんだ‼︎」


「何ですって⁉︎変な液体?それで、淳の様子は⁉︎」


「安心しろ、液体はすぐに俺の手持ちの水で流した。彼の話では少し口の中に入ったらしいが、すぐに吐き出したらしい。今のところ異変も無いしな」


それを聞いて、よかったーと安心したが、1人だけ俺に反して顔色が曇っていく人物がいた。京水さんだ。

京水さんは急に俺のケータイをひったくると、


「ちょっとあなた、さっき変な液体をかけられたって言ったわよね?」


「?あんた誰だ?」


そう聞かれていたが、それを制するようにいいから!とくいぎみに言った。その勢いに神垣さんは少し気圧された様だったが、ああ、そうだと返した。

そう返された京水さんは、少し考える仕草をして


「その液体は何かの入れ物に入れられていたでしょう?その入れ物って両端に青いラベルの貼られたガラスの容器だった?」


と聞いた。そう聞くと少し間が空いて


「いいや、確か両端には白いラベルが貼られていた。というか、あんた本当に誰なんだ?」


「何ですって⁉︎白いラベル⁉︎あーっと、あともう一つ。その液体をかけたのって、眼帯をつけた白衣の男かしら?」


「あ、ああ。その通りだ。というか再三聞くが、あんた誰だ!」


最後の質問の答えを聞くと京水さんは、俺にケータイを返して頭を掻きむしりながら大きく息を吐いた。

その間に俺は神垣さんに手短に京水さんの事を話した。


「ま、まぁ事情は分かったが。じゃあその人に聞いてくれ、一体何が起こってるんだ」


俺も気になって頭を掻いて明らかに焦っている京水さんに、思い切って聞いてみた


「京水さん、いい加減教えてくれないか。一体何が起こってるんだ?俺も東も神垣さんも気になってるんだ」


すると京水さんは、ゆっくりとこっちを振り向いて深刻そうな表情でこう言った。


「まず、その液体をかけた男は三田 九郎。この研究所のチーフをしている男よ。一言で片付けるなら『マッドサイエンティスト』。自分の研究意欲を満たす為ならどんな事でもする危険人物。

そして、その三田がかけた液体は恐らく『SCウイルスα型』、私たちが『SCウイルス』の特効薬を作ってた時に偶然作り出された『SCウイルス』の亜種で……感染すると90%以上の確率で死亡する。しかも未だ特効薬が作られていないウイルスなの」


[登場人物紹介]

小泉 京水(31)研究員 『SCウイルス』の研究員のトップとして、研究を取り仕切っていた人物。ウイルスに関する知識は、その道の人間にも勝る程。しかし、この研究所のチーフで自分を昔スカウトした三田にその知識を利用されていた。

怪我で退役したものの、軍人だった頃の強さは健在。得意のムチを使った格闘で敵と渡り合う。

軍に在籍していた時に、暴徒の1人に腹部をナイフで刺され瀕死の重傷を負った。その時に仲間に助けられ、そこからオネエになったのではないかと言われている。元々は関西弁を喋るオラオラ系の男だったとか。


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