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或るウイルスの物語  作者: RARUHI
2/5

院内探索

今回の小説には特撮ネタや、特撮キャラをモチーフにした人物が物語中に登場します。

苦手なかたはブラウザバックを推奨します。

それでも大丈夫だと言う方は、ぜひお楽しみください。

7月という事もあってか6時になっても未だに空は明るかった。俺は車で淳と共に神垣さん達との待ち合わせ場所にやってきた。

着くともう既に着いていた俺の友人の東が話しかけてきた。


「よお久しぶり。こんなとこに呼び寄せて、まーた悪さするんじゃねえだろうな」


東は俺の友人の中でもかなり親しく、高校でもしょっちゅうつるんでいた。それもあって高校卒業から2年経った今も時々会って飲んだりしている。ただ仕事を手伝ってもらった事はあまり無く、特に今回のようなモノは手伝ってもらうのは荷が重いため断られると思っていた。


「仕方ないだろう、乗り込もうとしてる場所が場所なんだから。頼りにしてるぜ戦闘要員としてな」


実は東は体格こそあまり大きく無いが幼少から空手を習っている。

無いとは思うがもし戦闘になったら共に闘ってもらおうと呼び出した。


「まあお前と俺の2人がいるなら、そこらの不良くらいなら何とかなるだろ」


「いるのが不良ならいいけどな。今回行くのはこの国が関わっているかもしれない、とてもきな臭い相手だからな」


そう言うと東は、同感だと言いながらやれやれと首を横に振った。

そうこうしていると、神垣さんがやっと合流した。


「やあーすまんすまん。ちょっと道具を探していたらすっかり遅くなっちまった」


「大丈夫ですよ、集合時間ぴったりです」


これでなんとか全員が揃った。そして神垣さんは俺たちを見渡して


「よし、これからこの4人で探索していくぞ。具体的に言うと俺と淳くんでここの東棟を、敦と友達の東くんで西棟を調べるように。

多分中には誰もいないとは思うが、万が一のこともあるから基本は2人で行動すること。何か見つけたら携帯を使って連絡するように」


「いつまで調査しますか?東棟と西棟だけじゃなくて中央病棟の調査も必要ですよ?」


「それなら一応考えたが、とりあえず1時間半をめどにしようと思う。あまり大きい訳じゃないからもっと早く終わると思う。終わったら1階ロビーに集合して、もう片方を待つって感じで」


そこまで確認すると早速二手に分かれての探索が始まった。が、ここである意味で問題が起こる。


驚くほど何もないのだ。

いや、全く何も無いと言えばそれは嘘になる。

俺と東の調べている西棟は東棟と同じ入院用の病棟で、当時使われていたベッドはほとんど当時のまま残されていたが、いくつかあるはずの場所から無くなっていた。数にして十個ないくらいだった。ひょっとすると、この無くなったベッドがまだ見ぬウイルスの実験に使われているのかも知れないが……。


「な、何もねーな」


東が苦笑いしながらこっちを見てきた。


「ああ、ここまで何も無いとは俺も思わなかった」


正直ここまで何も無いと回り回ってむしろ怪しい気もするが、どこをどう怪しむかと聞かれると……むちゃくちゃ困る。

このまま何も無いとすぐ終わるかなぁ、と考えていると足元にA4サイズの少しボロボロになった紙が落ちていた。


「あーずまー、これ何かわかるかぁ?」


紙を見せると、少し考える素振りを見せ


「これってカルテだろ。日にちは……っと、これ1週間前じゃないか⁉︎」


マジで?と思って見てみると本当に1週間前の日にちが書かれていた。


「あ、本当じゃん。じゃあ東、とりあえずこれ持っといてくれよ」


そう言うと東はかなり嫌そうな顔をしてきた。何で俺がみたいな顔をしているが、ダメ押しで頼むよと言うと渋々ポケットに収めていた。面倒事は東に丸投げするのがイチバンだ。




「でもよく見えねーな。何でか分かんねーけど、名前とか生年月日とか個人情報が書かれてるとこがかすれてるし。なになに……『試験薬F投与実験結果』?なんじゃそりゃ?」


「そんなの書かれてたのか?」


歩きどうしで疲れたので、ナースステーション跡らしいところで休みつつ、さっき拾ったカルテらしき物を改めて見直していた。どうやらこれには『F』という薬を投与した結果が書かれていたらしい。


「うーん、どうもこの『F』ってのは人体強化薬の類っぽいな」


「人体強化薬?ドーピングみたいなやつか?」


そう聞くと微妙な表情をしながら首を傾げた。なんと言ったらいいか考えているみたいだ。


「多分そんな感じに捉えていいと思うんだ。だけど結果を見る限り、そんな生優しいもんじゃないと……」


そこまで話すと急に東の目つきが鋭くなった。その原因はすぐに分かった。


「何かいるな」


「ああ、数は……1人かな?どうする?」


「俺としては記者魂にのっとって、至って紳士的な態度で話を聞きたいと思うんだけどなー。どうよ?」


緊張を和らげる為に笑いながら聞くと、つられたように笑いながら


「さんせーい」


と返してきた。

さっすが判ってるわー、とニヤニヤ笑いながら廊下の奥から近づいてくる人影を静かに睨みつけた。





[登場人物紹介]

石井 淳(20)大学生 敦の弟。兄に学費を負担してもらいながら大学に通っている。いつもは敦を少し小馬鹿にするような言動が目立つが、心の底では兄を尊敬している。

東 隆矢(21)大学生 敦の高校時代からの友人。神垣とは同じ部活動でお互いに知り合い。淳とも以前から面識があった。幼少期から空手をしており、腕も確かなもの。

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