私が愛する女たち 〜 私的小説考
私の作品に登場してくれた女性たち。
私の中には、それぞれに思い入れがあります。
一度、それをしっかりと見つめ直してみることにしました。
備忘録的な駄文ではありますが、今後の指針になるものとして、書き残しておくことにしました。
興味がおありの方は、読んでみてください。
小説考、というほど高尚なものではないのですが、自分の作品を読み返して感じたことを、ここでまとめておきたいなと思いまして、雑文をご披露いたしますことを、まずお詫び申し上げます。
感じたことというのは、やはり自分は「女性の描写がヘタクソだなぁ」ということでした。
はっきりと申し上げておきますが、私は女性というものが大好きです。それこそ色々な意味で。自分に無いものを持つ存在には大いに興味がそそられますし、男性にとっては未知なるもの、神聖たるものとして、永遠に「好き」の対象として存在するのだと、私は位置づけています。
その大好きな「女性」を、ストーリーの登場人物として書き起こしていく際に、なかなかうまくいかないように感じています。その理由として、まずは男性の自分と異質の存在として、なかなか理解が進まないこと、もう一つが「照れ」の感覚が邪魔をして大胆に表現出来ないこと、にあるのではないかと考えています。
私の持つこの「照れ」の感覚は、子供の頃から厄介な存在として私の心の中に居座り続けていて、恋愛においても失敗の元になってしまったことが何回もあります。それが私の作品にどのように影響して来たのか、作中の登場人物を掘り起こしてみることで考察してみたいと思います。
私の作品に登場する女性は、大きく分けると三つのパターンに分けられるようです。それは
①実在の(あるいは実在していた)人物に仮託したもの
②実在の(あるいは実在していた)人物から他の人格を作り上げたもの
③全くのオリジナルキャラクター
です。書き始めた頃の作品には、①のパターンばかりだったのですが、作品が増えていくにつれ多彩なキャラクターが生まれて来ていて、少しは書き手としての力量も上がって来ているのかな、と自画自賛してみたりもしております。
それではここで、自作の女性キャラクターについての考察をしてみたいと思います。
1.サヨ(池内小夜)
・登場作品 ヒトメボレ 〜 君はどこにいるの?
ヒトメボレ-β 〜 愛の営みセレクション
思いっきり①です。
サヨの元になったのは、高校生の時にずっと片思いしていた同級生。サヨと同様におとなしい感じの、素敵な女子高生でした。
私は彼女と恋仲になりたくて仕方なかったのですが、とうとうそれを叶えることが出来なかったので、自分自身を仮託した学生が、素敵な女の子と素敵な恋愛をするという、ある意味ベタな経緯でお話を創ってしまいました。
彼女の外見などの人物像には、当時愛読していた複数の漫画に影響されたところもあります。
2.ハルミ(二宮晴海)
・登場作品 ヒトメボレ 〜 君はどこにいるの?
ヒトメボレ-β 〜 愛の営みセレクション
彼女も実在の人物が元になっています。作中に主人公が学級委員になったというくだりがありますが、実際に私は1年時の学級委員をしていまして、その時一緒に学級委員をしてくれたクラスメイトが、ハルミの元になっています。
そのクラスでは、なぜか私が軽いイジメの対象になってしまったのですが、彼女はイジメのグループ側にいたにも関わらず、委員の仕事の際にはいつも笑顔で接してくれました。彼女へのその好印象が、作中での人物設定に大きく影響しているんだと思います。
3.エリカ(島田恵理佳)
・登場作品 ヒトメボレ 〜 君はどこにいるの?
彼女の元になったのは、高校1年生のときの同級生。
作中で主人公に食ってかかったりという、やや強めの人物設定になっていますが、実際にはまともに話したこともなく、どのような女の子だったのか、よくわからないままでした。ただ、童顔なのに大きな胸、というのは、作中のエリカと同じでした(笑)。
4.アヤ(片岡彩)
・登場作品 ヒトメボレ 〜 君はどこにいるの?
彼女の元になったのも、高校1年生のときの同級生。アニメ声で小作りな顔立ち、ほぼ本人を投影しています。
入学して最初の校外学習で一緒の班だったこともあり、比較的早くに友達になってたような気がします。
まあまあ仲良くしていて、お祭りも一緒に行ったりしたんですが、私がイジメの対象になった頃から疎遠になり、そのままクラス替えで会うこともなくなりました。
高校生活の最後の最後で、受験に向かう大阪行きのフェリーの中でばったりと再会し、船中でカップルのように過ごしたことが、甘酸っぱい思い出として残っています(その後何も発展することはありませんでしたが)。このことが、自作に登場させたいという思いにつながったのかもしれません。
5.ユウコ(黒田優子)
・登場作品 ヒトメボレ 〜 君はどこにいるの?
彼女の元になったのは、同じ高校の1年先輩。作中で「ミス南高」の設定がありますが、元になったこの人が、まさに3年間「ミス南高」だったんです。
確かに美人で、体育祭の応援団でもリーダーをしていたりして、大変に目立つ人物だったと記憶していますが、私自身との接点は全くありませんでした。
ここまでに登場した人物は、主人公とヒロインが恋仲になるというストーリー展開に必要となった人たちで、今後はおそらくお話に登場することはないと思います。ただ、ハルミに関しては、今後やや重要な役割を演じてもらおうかなんて、依怙贔屓な気持ちを持っていたりします。
6.高島美月
・登場作品 ヒトメボレ 〜 君はどこにいるの?
これは完全にオリジナルです。未熟なくせに大人ぶって、勝手に空回りする「悪女見習い」を書いてみたくなったんです。
田舎の高校にこんな強烈なキャラがいるわけない! と自分でも突っ込みながら、割と楽しく書かせていただきました。いつになるかはわかりませんが「営み」の方にも登場してもらって、大人ぶって空回りする姿を書いてみたいなとは思っています。
7.マヤ(橘真夜)
・登場作品 ヒトメボレ 〜 君はどこにいるの?
この人もオリジナル。愛読していた漫画の登場人物に、影響されたと言えばされたかもしれません。
主人公の母方の家から来た本家の跡取り、なんて面倒な設定をしてしまったがために、この人物を活かす方法がなかなか定まらず、ストーリーの展開に悩んだまま止まってしまいました。
「小夜」に対する「真夜」という、サヨとは真逆の人物として描いていきたいのですが、一度活動報告にも書きましたとおり、このままでは単なる陰謀キャラに堕ちてしまう可能性があり、魅力的なクールビューティとして活躍させるべく、もう一度熟考してみたいと思っています。
ここまでが「ヒトメボレ」に登場した愛すべき女たちです。続いて “Railways” シリーズの愛すべき女たちについての考察です。
8.青木里沙
・登場作品 昨日...今日...明日......
この人の元になったのは、大学時代にずっと好きだった人。サークル活動とかで割とずっと一緒にいて、すごく身近な存在だったにも関わらず、やっぱり恋仲にはなれなかったという、残念な現実が残りました。
快活で面倒見が良くて可愛くて... そんな誰にでも愛される要素を持つ人だったゆえに、私が行動を起こすことを躊躇してしまったのかもしれません。
とにかく好きでした。なるべく一緒にいたいと思っていました。作品に投影された主人公の思いは、そのまま私の想いが投影されたものです。
9.山口三和
・登場作品 わたし、待ってるから
彼女に、会いたい
この人の元になったのも実在の人物。二作品で目線を変えて書きたいと思うほど、私にとっては強烈な印象を残した女性でした。
作品中のエピソードは、ほほ実際にあったことを元に書きました。当時アルバイトをしていたバーに転がり込むように入店してきたこと(マスターの知り合いだったということが真相でしたが)、7つ年上だったこと、バイク乗りだったこと、そして一度しか身体を許してくれなかったこと。
話の最後の辺りの表現も、電話でのやり取りや新幹線「のぞみ」の窓から駅のホームに彼女がいたのを見たことなど、実際にあったことを下敷きにしています。
だからこそ、もう少しドラマチックに表現したかったという思いは強く、特に「わたし、〜」の方で女性目線で書くことについては、もっともっと読み手を引きつける書き方をしたかったと、忸怩たる思いがあります。
10.8時の彼女
・登場作品 明日、この場所で。
この人の元になったのも実在の人物なんですが、これまでとはやや色合いが違います。
東京駅京葉線コンコースで毎日見かけていた人ではあったのですが、実際の出来事はお話の前半部分のみ。本当にただ見かけるだけの人で、後半部分の素敵な展開は完全の僕の妄想です。
11.水原ゆかり
・登場作品 三日月 〜 恋の終わりに
ストーリー自体が「ヒトメボレ」のスピンアウトで、そこに登場するこの人は、主人公に報われない恋をするというオリジナルキャラクターです。
本当は大好きな人を想って悩むただの女子高生なのに、大人っぽいと自分を偽って他人に対することに疲れている、といったところをうまく引き出すことが出来なかったことが悔やまれます。
12.藤原まどか
・登場作品 まちぶせ
アンハッピーエンドなストーリーに挑んだ作品のヒロインは、実在の人物の名前から人物像を作り出したものです。ちなみに作中の人物像とご本人とは、全く関係がありません。
この人は、最初に主人公が抱いたイメージとのギャップが大き過ぎて、どうしようもなく不幸なヒロインになってしまったことが悔しいです。男目線で不幸な女を書くと、こんな悲惨なものになってしまうことを考えさせられました。
13.おかっぱの彼女
・登場作品 君が、好きだ。
この人の元になったのは大学の同級生。モデルのようなスタイルは作中人物のとおりで、どうにか自分の彼女にしたいと、男どもが躍起になっていたことが思い出されます。
ですが、実際に私がこの人に恋心を抱いていたということはなかったように思うし、何だか綺麗な人だよね、と友達と話す程度で、そこからこれだけストーリーを紡ぎ出せたのは奇跡的だと思います。
14.投稿サイトの彼女
・登場作品 君に、あいにいく。
この人の元になった人物は、ちょっと秘密にしておきましょう。
ただ、作品に起こしてみたいと思うほどの強い気持ちを、当時抱いていたことは事実だと思います。
15.わたし
・登場作品 旅立ち 〜 あなたの住む街へ
禁断の恋愛を続けて書くことにして、今度は完全に女性目線で書いてみようと目論みましたが、それが少しうまくいったかなぁ、と思えるものになりました。
あり得ないほど身勝手な二人の会話、それでも愛する男に抱かれる決心をした「わたし」。その揺れ動く心の襞を、まずまず上手く表現出来たのではないかと自負しています。
16.太陽のような笑顔の彼女
・登場作品 幸せの時間
この人の元になったのは、東京時代の会社の1年後輩。約半年の間、実際に駅からの道のりを連れ立って出社していました。本当に二人が付き合っていると思われていたらしく、実にもったいないことをした(笑)と思っております。
ですから、ストーリーの後半部分は私の妄想に因るものが強く、ハッピーエンドにしなかったのも、実際にはなかったことを書くことに抵抗を感じたからかもしれません。
17.美優
・登場作品 片思い、すれ違い
自分が体験してこなかった「アオハル」を書いてみたい! と念じて紡ぎ出した、オリジナルストーリーのヒロインは、本当にステレオタイプな幼馴染みの女子高生なのですが、何となく素直になれないところや、最後に好きな人に想いをぶつける可愛さなんかを、もっと上手に表現したかったように感じています。
ですが、読了の感想で「リリカルな表現が良い」という評価をいただき、少し自信にもなりました。
18.柏木美咲
・登場作品 ずっと、あなたと。
前後編オリジナルストーリーのヒロイン。6年越しの作品の中で、前編では名前のみが登場し、後編のこのストーリーで潜在意識下の語り手として登場した、大変難しいキャラクターでした。
前編を何度も読み返しながら、話の整合性をとりつつ美咲に語らせる作業は、大変に困難なものとなりましたが、小説を書くということへの姿勢について、改めて問いかけられたような思いにさせられました。
こうやって自分の作品について思い返すことは、自分の武器、自分の弱点をあぶり出す良いきっかけになります。
やっぱり私の弱点は「照れ」。特に女性の言葉遣いを上手に表現することが出来ず、それが作品中に不必要な影を落としていると感じられる箇所も散見されます。
今回これを書いたのは、自作を読み返してみてモヤモヤしたものを感じたことがきっかけです。ここで吐き出しておかないと、今後の作品に影響を引きずってしまいかねない、という思いを抱き、やや長文ですが書き残しておくことにしました。
今後表現に困ったら、この駄文を読み返し、書くことへの指針としたいと考えています。
なぜなら、私はやっぱり、女性を表現することが好きだから。




