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明日は晴れると思う  作者: 奏路野仁
6/13

6話

六話

挿絵(By みてみん)

誕生日。

誰かにプレゼントを貰えるなんて思ってもいなかった。

ただ悪い気はしなかった。

誰かの誕生日の贈り物を考える自分がいる。

これも悪くない。


01 朝 江戸紫アパート内。

  シャルロがキッチンで目玉焼きを作る。あくびをしている。

  トーストを運ぶブランシェア。あくびをしている。

  バターを置いてブランとすれ違うようにキッチンに戻る江戸紫。

  シャリが一度居間を覗き、ブランがテーブルのセッティングをしている姿を確認。

  シャリが江戸紫に話し掛ける。

  シャリ「オッチャン。」

  江戸紫「オッチャンて言うな。」

  シャリ「今度ね、ブランの誕生日なの。」

  江戸紫「今度ていつ?」

  シャリ「14日。」

  江戸紫「すぐだな。で?」

  シャリ「プレゼント贈りたいけど

    いつも一緒にいたいから買えないの。」

  江戸紫「いいよ。何買ってくればいい?」

  シャリ「何買ったらいいの?」

  江戸紫「へ?」

  シャリ「何買ったらいいのか判らないよ。」

  江戸紫「んー。心が篭っていれば何でも喜ぶと思うよ。」

  シャリ「そーゆーのいいから。」

  江戸紫「予算は?」

  シャリ、首からさげている金魚の形をしたガマグチを取り出し開けて小銭を出す。

  じゃらじゃら

  シャリ「こっそりおつかいのお駄賃貯めたの。」

    「コレで買える物ある?」

  江戸紫「もしかしてシャリの全財産?」

  シャリ「(ニッコリして)うん。」

  江戸紫小銭を数える。3,000円くらい。

  江戸紫「でも全部使ったらシャリのお小遣いなくなっちゃうよ。」

  シャリ「欲しいモノあるときはブランに言うと買ってくれるから。」

  江戸紫「そうか。」

  ブランの声がする。

  ブラン「おーい目玉焼きまだかー。トースト冷めるぞー。」

  江戸紫「今できたよ。」

    「(シャリに)ちょっと考えてみるよ。」

  シャリ「うん。」

  江戸紫、シャリ目玉焼きを持って居間へ。


02 江戸紫アパート前、

  シャリ「行ってきまーす。」

  江戸紫「行ってらっしゃい。」

  途中で分かれ道、シャリ、ブランシェアが学校へ。

  江戸紫は二人の後姿を少し眺めてから駅方面へ。

  俯いて歩き、時折空を見る。


03 頼代駅。改札。

  江戸紫の視点。私服の青山と親しげに話す女子高生。

  青山は江戸紫に気付かず。

  江戸紫はそのまま電車へ。


04 電車の中。考え込む江戸紫。


05 図書館。机上の本は開かれているが江戸紫手付かず。


06 杉本書店内

  本の整理をする江戸紫、周囲を見渡し客のいないのを確認。

  シャリ、ブランシェアもいない。

  杉本はカウンター内で帳簿をつける。

  江戸紫「あの。」

  杉本「うん?」

  江戸紫「誕生日に貰って嬉しいモノって何です?」

  杉本「ワタシの誕生日まだ先よ。」

  江戸紫「それはまた近くなったら聞きます。」

  杉本「で?誰?彼女?」

  江戸紫「いや、シャリがね、」

  杉本「シャリちゃん誕生日なの?」

  江戸紫「いや、ブランシェアが。」

  杉本「どっちなんだこの野郎。」

  江戸紫「ブランシェアの誕生日にシャリが何か贈りたいって。」

    「それで何がイイか聞かれたんです。」

  杉本「なるほど、早く言いなさいよ。」

  江戸紫「何がイイですかね?」

  杉本「心が篭っていれば何でも喜ぶんじゃない?」

  江戸紫「ソレはなしで。」

  杉本「エドが貰ってイチバン嬉しかったのって何?」

  江戸紫「貰った事ねぇっす。」

  杉本「寂しい奴。」


07 オラ店内。

  全員揃っている。食事中。

  江戸紫は考え込んでいる。

  松田「(江戸紫に)どうしたの?」

  江戸紫「ん?いや。」

  東雲「恋の悩み?」

  江戸紫「オマエは黙っとけ。」

  江戸紫、シャリとブランシェアを見てから。

  江戸紫「これからは平日の夜はココに来ない事にするよ。」


08 オラ店内。各自ドリンクを飲む。

  ブラン「ただ飯が~。」

  シャリ「が~。」

  青山「なんだよ急に。」

  江戸紫「ココで食事すると帰るのがかなり遅くなる。」

  桜井「そう?」

  江戸紫「まぁ皆はそうでも無いだろうけど」

  シャリとブランシェアを見る江戸紫。

  ブラン「何?ワタシ達?子供だから?」

  シャリ「えー。」

  江戸紫「朝眠そうだなぁって。」

  ブラン「朝はいつでも眠いだろうが。」

  江戸紫「それにしても小学生の起きている時間じゃないよ。」

  ブラン「古い、古いよおっさん。」

  江戸紫「オッサン言うな。」

    「そのかわり、週末来るから。」


09 夜。頼代駅前中央通り。帰り道。シャリはあくび。

  ブラン「なぁ。」

  江戸紫「うん?」

  ブラン「オマエはそれでいいのか?」

  江戸紫「ソレって?」

  ブラン「週末だけっての。」

    「インチキDJとの打ち合わせとかあるんだろ?」

  江戸紫「打ち合わせは週末にできる。」

    「今までだってネタのノート渡していただけだから。」

    「バイト帰りに寄って渡せば済むよ。」

  ブラン「ならいいけど。」

  江戸紫「君が責任感じる事じゃないよ。」

  ブラン「責任なんか感じてないっ。」

  シャリ「ねーむーいー。」


10 朝、頼代駅。

  江戸紫が改札へ向かっている。

  青山「エド。」

  振り向く江戸紫。私服の青山と昨日も一緒だった女子高生。

  青山「(隣の女の子に)こいつが昨日話したエド。」

    「(エドに)この子オレの付き合ってる子。」

  軽く頭を下げる女の子。

  江戸紫も軽く頭を下げる。

  青山「同じ電車らしいからさ、一緒に行ってこいよ。」

  江戸紫「はい?」


11 電車内。入り口付近に立つ江戸紫。その隣に俯いて立つ制服姿の女子高生。

  江戸紫「えーっと、学校はどちらですか?」

  女子「隣町の女子校です。」

    「エドさんはどちらに?」

  江戸紫「エドさんて言われたのは始めてだ。」

  女子「あ、ゴメンなさい。」

  江戸紫「あぁ、いや、そんなつもりじゃないよ。」

    「僕も隣町。女子高生じゃないけど。」

  女の子がクスクス笑う。


12 駅改札をでる二人。

  女子「それじゃ。失礼します。」

  江戸紫「はい。行ってらっしゃい。」

  女子もう一度頭を下げて歩く。

  江戸紫はソレを見てから別方向へ。

  江戸紫「名前聞いてないな。」


13 図書館。江戸紫本とノートを広げる。

  ノートには3,000円。指輪、花、ペンダント、ケーキ、ぬいぐるみ等々記入されている。

  窓の外を眺める。

  雨。


14 駅の改札。駅の時計3時10分。

  階段を下りる江戸紫。駅出口。雨。

  外へは出ない。


15 頼代駅。青山の彼女。階段を下りる。江戸紫の後ろ姿を確認。

  女子「エドさん?」

  江戸紫「(振り向きながら)はい?」

  女子「あぁ良かった。」

  江戸紫「よかった?」

  女子「人違いだったら恥ずかしいじゃないですか。」

  江戸紫「そういうコト。」

  女子「どうしたんですか?傘持って来なかったとか?」

  江戸紫「はい。忘れました。」

  女子「おうちってどっちなんですか?」

  江戸紫「この通りの先。」

  女子「良かったら入りません?」

  江戸紫「はい?」

  女子「傘に。送りますよ。」

  江戸紫「ああ。ありがとう。でも多分迎えがくるから。」

  女子「多分?」

  江戸紫「うん。あぁ言ってたら来た。」

  黄色い合羽を着た子供が二人傘を持って歩いている。

  江戸紫「あのカッパ着た二人。」

  女子「あの子達がお迎え?」

  江戸紫「うん。傘渡す時何言うか教えてあげる。」

  女子「うん。」

  江戸紫「雨男のクセに傘忘れてんじゃねぇよ。」

  女の子「え?」

  江戸紫「(江戸紫ブランを指して)あの左側の子が言うから。」


16 頼代駅階段。階段を降りながらバッグを開け折りたたみ傘を出す松田。

  江戸紫が隣の女子高生と話しているのにも気付く。

  立ち止まり隠れる。


17 頼代駅。シャリとブランが見える。シャリが小走りになる。

  江戸紫にとびつきながら

  シャリ「ただいまー。」

  江戸紫「おかえりっわっ飛びつくなっ」

  シャリを離す江戸紫。

  江戸紫「ああ結局濡れた。」

  シャリ「えへへー。」

  ブランシェアがちょっと遅れて傘を差し出しながら。

  ブラン「身も心も雨男のくせに傘を忘れるとかとんだ災害野郎だ。」

  江戸紫「予想より酷い。」

  女の子笑う。

  ソレを見てニヤリとするブランシェア

  ブラン「で?こちらのお嬢さんはどちらさん?」

  江戸紫「アオの彼女。」

  ブラン「ちっ。」

  江戸紫「ちって何。」

  ブラン「いつになったらお前の彼女をからかえるんだ。」


18 頼代駅 中央通り

  シャリとブランが一つの傘。江戸紫が一つの傘。

  江戸紫「鞄は?」

  ブラン「大佐のとこ置いてきた。」

  杉本書店の裏口へ向かう。

  江戸紫「鞄持って待ってて。挨拶してくるから。」

  裏口から中へ。シャリ、ブランは休憩室へ。江戸紫は店へ。

  お客数人、本を探している。レジには人いない。

  江戸紫「こんにちわ。」

  杉本「こんにちわ。ってびしょ濡れじゃない。」

  江戸紫「シャリに飛びつかれて・・・」

  杉本「風邪引くわよ。」

  江戸紫「ええ、帰って着替えます。」

  杉本「今日休みだっけ。」

  江戸紫「鞄預かってもらったので挨拶に。」

  杉本「わざわざお疲れ。」

  江戸紫「ありがとうございました。」

  杉本「ついでにバイトしていく?」

  江戸紫「休出扱いになります?」

  杉本「ソレはできません。」

  江戸紫「さすがだ。」

    「今日は二人と映画行くので帰ります。」

  杉本「うん。」

  江戸紫「夜はオラ行きますから。」

  杉本「ん。じゃ後でね。」

  江戸紫「はい。お疲れ様でした。」

  杉本手を振る。


19 杉本書店裏口、江戸紫を待つブランとシャリ。

  江戸紫二人の前まで行くと

  江戸紫「一回鞄置いてからパラダイス行くぞ。」

  シャリ「いぇーい。」

  ブラン「今月は何特集だっけ?」

  江戸紫「地獄のまるまるシリーズ!」

  ブラン「おおうBクラス臭全開。」

  江戸紫「こんな時はノリがいいな。」

  ブラン「で、今日は何。」

  江戸紫「地獄のデビルトラック。」

  大喜びするブランシェア、シャリシャリ。

  ブラン「ギャーッ!」

  シャリ「エステベース!」

  江戸紫「何なんだお前ら。」


20 オラ更衣室。松田着替え終わって店内へのドア開く


21 オフィスビル。ドアから東雲が出てくる。傘を開いて外へ。


22 東雲の歩く反対車線に青山の郵便配達のバイク


23 バイク俯瞰でビルの窓、桜井が道路を見ている。

  見上げて空。雨。


24 雨空。視線下がって杉本書店。杉本接客中。


25 劇場パラダイス内。客は3人だけ。

  腹を抱えて笑うブランシェア。

  隣、シャリシャリも笑っている。

  隣、江戸紫はソレを見ている。


26 オラ店内。

  桜井、杉本が席に着いている。

  桜井「エド達一緒じゃないんですか?」

  杉本「あの子今日休みで子供達連れて映画行ったわよ。」

    「(時計を見ながら)もう来るんじゃない?」

  桜井「金曜日休みって言ってましたね。」

  杉本「サクラちゃんとこは土日休み?」

  桜井「いえ当社指定のってやつです。」

    「休日も殆ど部活で呼び出されますけどね。」

  松田が注文を取りに来る。

  松田「どうします?」

  杉本「もうちょっと待ってみるわ。」

  桜井「珊瑚は何時まで?」

  松田「今週は最後までなの。」

  桜井「そっかぁ。」

  杉本「(桜井に)あれ?そう言えばシノ君は?」

  桜井「残業だって言ってましたよ。」

    「(松田に)アオも来ないなぁ。」


27 青山がオラへ。松田が案内する。

  松田「まだ朱莉ちゃんと杉本さんだけです。」

  青山「うん。ありがと。」

    「今日来るって言ってたよね?」

  松田「ええ、金曜と土曜の夜は来るって言ってたから。」

  青山「来てくれないと打ち合わせにならん。」

    「原稿料値下げしてやるかな。」

  青山、杉本と桜井のいる席に。

  青山「オラ、セニョリータ。」

  桜井「何だお前。」

  青山「そうつれない事言うなよサクラ。」

  松田が水を置いてその席を離れる。

  杉本「何かご機嫌ねぇ。」

  青山「まぁイロイロと。」

  桜井「だから雨なんだな。」

  青山「いちいち突っかかるなよサクラ。」

  桜井「誰がサクラよ。」

  杉本「で?何よ。そのイロイロって。」

  青山「大した事じゃないけど、皆来たら話しますよ。」


28 オラ店内。東雲が合流

  桜井「お疲れ様でした。」

  東雲「これで明日休めます。」

  桜井「部活は?」

  東雲座ってテーブルに頭を落とす。

  東雲「部活です。」


29 オラ店内

  シャリ、ブランシェア、江戸紫がオラへ。

  ブラン「フメイフー」

  シャリ「フメイユー」

  松田が案内。同じところを歌いながら皆の席へ

  席に座っても歌う二人。

  松田「何の歌?」

  江戸紫「ごめんなさい煩くて。今日見た映画の歌です。お前らもう止めろ。」

  桜井「今月何特集?」

  江戸紫「地獄のまるまるシリーズ。今日は地獄のデビルトラック。」

  青山「なんだそりゃ。」

  江戸紫「彗星でトラックが悪魔になってすったもんだの映画。」

  杉本「すごそうだけどあまり見たいとは思えない。」

  江戸紫「さっきから歌っているのはその歌。」

  ブラン「フメイフー」

  シャリ「フメイユー」

  杉本「誰の歌よ。」

  ブラン「大佐ACDCを知らないのでありますか?」

  シャリ「ありますか!」

  杉本「知らない。」

  桜井「私も知らない。」

  東雲「知らない。」

  シャリ「なんと嘆かわしい。」


30 オラ。食事中。(松田以外)

  杉本「そう言えばアオは何かあったんじゃないの?」

  青山「ああ、そうそう。」

  青山周囲を見渡してから

  青山「珊瑚ちゃんいないけどまぁいいか。」

  青山「ラジオでファンレター来て、」

    「会ってみたらイイ子だったんで付き合う事にしたよ。」

  桜井「相変わらず軽い男ねぇ。来るものは拒まず。だっけ?」

  青山「正確にはたいていの相手は拒まず。だな。」

    「オレにも選ぶ権利はある。」

    「嫌々付き合ったって相手に悪い。」

  江戸紫「あぁあの子か。」

  杉本「今度連れて来なさいよ。」

  青山「それはお断りします。」

  杉本「何でよ。」

  青山「このメンバーに合わせる勇気はありません。」

  杉本「どういう意味よ。」

  ブラン「まぁ私は見たけど。」

  シャリ「見てなーい。」

  ブラン「お前も見ただろ。」

  シャリ「えー。」

  杉本「(ブランに)どんな子だった?」

  ブラン「んー。まぁなんの変哲も無い普通の女子高生。」

  杉本「エドも会ったんでしょ?どんな子だった?」

  江戸紫「いい意味でブランシェアの言ったとおりですよ。」

  杉本「んー。やっぱり直接会わないとダメね。連れてきなさい。」

  青山「ダメって。なんで会いたいんです?」

  杉本「そりゃあからかいたいからじゃないの。」

  ブラン「んだんだ。」

  青山「絶対にイヤだ。」

  桜井無言で食事を続ける。


31 オラ店内。カウンター席。青山と江戸紫が座っている。

  ノートを広げながら

  江戸紫「6月ってイベント少ないな。」

  青山「どれどれ。」

  青山、江戸紫からノートを受け取り開く。

  6/30茅の輪くぐり

  6/4虫歯予防週間(歯の衛生週間)

  6/10時の記念日

  6/18第3日曜父の日

  6/14flagday(アメリカ国旗制定の日)

  6/14The Queen's Official Birthday(UK、オーストラリア、フィジー)

  6/21音楽のフランス

  等々。

  江戸紫「で、桜井さんはいいのかよ。」

  青山「何が?」

  江戸紫「オマエが女子高生と付き合って云々。」

  青山「ああ、

    「何度も付き合ってくれって言ってるんだぜ?」

    「その度に振られてるからなぁ。」

  江戸紫「でもあの不機嫌さは尋常じゃないぞ。」

  青山「呆れてるだけだろ。」


32 オラ店内

  東雲がトイレに立つ。松田とすれ違う。

  松田が水を持ってテーブルに来る。

  杉本「珊瑚ちゃん。青山君女子高生と付き合っているってよ。」

  松田「はぁ。」

  杉本「はぁ。ってつれない返事ねぇ。」

  松田、桜井を見て。

  松田「朱莉ちゃん。いいの?」

  桜井「え?」

  松田「朱莉ちゃん青山君の事好きなんでしょ?」

    「どうして付き合ってあげないの?」

  慌てる桜井。

  桜井「ちょ、ちょっと待てよ。何でそうなるんだ?」

  松田「だってそんなのすぐわかるよ。」

  杉本「顔にも態度にもでてるもんね。」

  桜井「え?じゃあワタシが青山好きだから不機嫌だって?」

  杉本「違うの?」

  桜井「ワタシはアンタが」

  松田「ワタシ?」

  桜井「そうだよ。珊瑚がアイツの事好きだと思ったから。」

  杉本「そうなの?」

  松田「え?そうなの?」

  桜井「違うのかよ!」


33 朝。江戸紫アパート。

  玄関。靴を履くシャリとブラン。室内の江戸紫。

  江戸紫「夕方はバイトして遅くなったらオラにいるから。」

    「でもあまり遅くならないようにね。」

  シャリ「はーい。」

  ブラン「大佐のトコにいるうちに行くよ。」

  江戸紫「あまり迷惑かけるなよ。」

  シャリ「はーい。」


34 アパート。江戸紫部屋。

  PCに向かい作業中。


35 オラ店内。

  昼食時で店内は混んでいる。

  青山、東雲、桜井が食事中。

  江戸紫が入店。

  店員「いらっしゃいませ。」

    「皆さんいつもの席にいらっしゃいますよ。」

  江戸紫「へ?いるの?」

  店員「ええ。あれ?青山さんと一緒にいる方ですよね?」

  江戸紫「まぁ。はい。」

  店員「どうぞ。」

  案内される江戸紫。3人のいるテーブル前まで来る。

  江戸紫「何でいるんだ。」

  青山、江戸紫を見る。

  青山「お前こそ。」

  桜井が席を詰めながら

  桜井「ここいいわよ。」

  江戸紫「ありがとうございます。」

  江戸紫座りながら

  江戸紫「一人分のお昼作るの面倒だったから持ち帰りしようと思って。」

    「皆は何の集まり?」

  桜井「えっと、私とシノさんが部活終わったの一緒で。」

    「じゃあ青山でも誘ってお昼行こうかって。」

    「珊瑚はレッスンあるから来られないって。」

  江戸紫「なるほどね。」

    「(青山に)土曜日の昼なのに彼女と合わないのか?」

  青山「部活で出張だそうだ。」

  江戸紫「出張?」


36 オラ、江戸紫がパスタを食べている。

  他の3人はそれぞれドリンク。

  青山「あの二人はどうした。」

  江戸紫「トモダチのとこ行った。」

  江戸紫、思い出して

  江戸紫「ん。そうだ。14日ブランシェアの誕生日なんだけど。」

    「実はシャリに頼まれてさ。」

    「シャリがブランシェアに何か贈りたいって。」

  青山「予算は?」

  江戸紫「3,000円程度。」

  桜井「3,000円あれば結構なモノ買えるわよ。」

  江戸紫「でも小学生だからさ、何買っていいものやら。」

  桜井「小学生が小学生に贈るとなると結構制約あるかも。」

  江戸紫「お花とかは?」

  桜井「最終的にシャリちゃんが世話してそうじゃん。」

  東雲「枯れてイヤならいっそのこと鉢植えとか。」

  青山「別に小学生てとこにこだわらなくてもイイんじゃないか?」

  桜井「アクセサリー類じゃダメなの?」

    「そりゃピアスなんかはマズイだろうけど。」

  青山「6月ってーと真珠とかムーンストーンかな?」

  江戸紫「よく知ってるな。」

  桜井「昔の彼女が6月産まれだったんでしょ。」

  江戸紫と東雲が後ずさりする。

  青山「(必死に)そ、そう言えばお前ホントに週末だけなのかよ。」

  江戸紫「そうだね。あの二人が学校で居眠りして呼び出されたくないから。」

    「土日の朝ならゆっくり寝ていられるからね。」

  江戸紫「他の日はバイト終わったらノートだけ渡して帰るよ。」

  青山「そっかー。そうだなぁ。まだ子供だしな。」

  江戸紫「うん。あ!」

  桜井「何よ急に。」

  江戸紫「バイト行かなきゃ。」

    「今夜また来るけどプレゼントの事は本人達には内密に。」


37 江戸紫部屋。カレンダー6月14日(水)。

  朝、朝食の用意がしてある席にブランシェアが一人座っている。

  江戸紫とシャリシャリがトーストを持って座る。

  江戸紫「せーの」

  江戸紫とシャリがクラッカーを鳴らしながら

  二人で「誕生日おめでとー。」

  パン。パン。

  ブラン「うおっ。何だっ。あ、ありがとう。」

  二人はニヤニヤしている。

  ブラン「で?」

  二人で「で?って?」

  ブラン「これ、だけ?」

  江戸紫「お嬢さん16日の夜は空いてますか?」

  シャリ「ますか?」

  ブラン「16日っていつよ。金曜か。」

  江戸紫「ちょっと我々に付き合っていただけますか?」

  シャリ「ますか?」

  ブラン「何企んでるんだお前たち。」

  二人で「ニヤニヤ」


38 16日夜。オラ店内。

  ブランシェア先頭、江戸紫とシャルロが後ろに続いて入店。

  青山「はっぴばー」

  ブラン「止めろっ権利はどうなっている?ワーナーに持っていかれるぞっ。」

  青山「は?」

  ブラン「アレにしとけ。彼はいい奴だーのやつ。」

  青山「ナニソレ。」

  シャリ「みんなそーゆー。」

  青山「なんか判らんがホレ。誕生日おめでとうテンシちゃん。」

  青山が小さい包みを渡す。

  ブラン「おおっ。ありがとう。」

    「たいしたモンじゃないだろうがありがたくいただくよ。」

  青山「何て言い草だ。」

  続いて東雲も渡し、杉本、桜井、松田もそれぞれ各自で用意していた物を渡す。

  ブランはそれぞれにお礼を言っている。

  江戸紫「結局皆用意したのか。」

  シャリ「シャリも~。」

  ブラン「Et tu, Brute?(お前もかブルータス)。ありがとよシャリ。」

  シャリ「えへへー。」

  ブラン「で?何だよ。」

  シャリ「うん。」

  と腕を上げ指をパチンと鳴らす。

  料理がワゴンに乗って運ばれる。

  シャリ「まずは前菜からです。」

  ブラン「おっ。まさかコース料理頼んだのか?」

  シャリ「えへへー。」

  前菜、エビとマッシュルームのアビージョ、スペイン風オムレツ。

  ハタの煮込み、パエリア、そしてデザート。

  少々小さく調理されている。


39 オラ店内

  優雅に紅茶を嗜むブランシェア。

  ブラン「シェフに素晴らしい料理だったと伝えてくれ。」

  江戸紫「お前は何者なんだ?」


40 夜。中央通り。寝ているシャリをおぶる江戸紫

  ブラン「なぁ。」

  江戸紫「うん?」

  ブラン「あの料理シャリの小遣いだけじゃ無理だろ。」

  江戸紫「そんなことないよ。」

  ブラン 「シャリのヘソクリなんてせいぜい2~3,000円だ。」

    「私とシャリの分合わせてそれで収まるわけないだろ。」

  江戸紫「僕が出したのはデザート代くらいだよ。」

  ブラン「じゃ、そういう事にしておいてやるけど。」

    「今度行った時にシェフにちゃんと御礼言っておけよ。」

  江戸紫「判ってる。」

  ブラン「そうか?お前そのヘンの常識とか欠落してるからなぁ。」

  江戸紫「とてつもなく悪く言われているのは判る。」


自分の誕生日がいつもの日と同じように、365分の1日でしかなくなって、

2,3日後に自分の誕生日を思い出した年もあった。

誰かの誕生日のプレゼントに頭を悩ませている自分がいる。

他人事のようだった。

どうしてこんな事になったのか、未だに戸惑いはある。あるけど、

悪い気はしない。


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