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明日は晴れると思う  作者: 奏路野仁
3/13

3話

第三話


00 午後6時 頼代駅前 中央通り ラジオスタジオ

  ガラス張りのブース内

  青山、雨の降る外を眺めながら

  青山「雨は好きだ。でも4月の雨だけは気に入らない。

    「4月は青色を背景に桜色が舞っているような。

    「毎日そんな日々でなければならない。

    「春は希望に満ちあわれ、太陽が輝くべきだ。

    「と、嘆いていても仕方無い。雨が上がれば、空はまた青く輝く。

    「曲はsoft rain of April」


01 江戸紫の部屋外観から。雨。

  江戸紫部屋朝食を摂りながら

  江戸紫「今日は終わるの早いんだろ?」

  ブラン「多分。」

  江戸紫「寄り道しないで真っ直ぐ家に帰りなよ。」

  ブラン「夕食の買い物とかしたいんだけど。」

  江戸紫「それくらいいいけど。」

    「二人分にしておきなよ。」

  ブラン「何で。」

  江戸紫「僕は夕食オラで食べるから。」

  シャリ「毎日外食なのー?」

  江戸紫「金曜土曜以外はね。」

  ブラン「そんなんで生活できるのか?」

  江戸紫「夕食はご馳走してもらってるから。」

  ブラン「誰に。何で。ヒモか。」

  江戸紫「ヒモ?

    「アオに原稿料代わりに奢ってもらっているんだよ。」

  ブラン「なるほどー。」

    「でもあんな原稿で夕食じゃ良心痛むだろ。」

  シャリ「悪気は感じないの?」

  江戸紫「ラジオはノーギャラのボランティアなんだけど」

    「取材費って事で食事代だけもらっているんだ。」

  ブラン「ボランティア?お前が?」

  江戸紫「僕ってより青山がだよ。副業は禁止だから。」

  ブラン「ああそうか。アイツポストマンだもんな。」


02 ランドセルを背負う小学生たち。制服姿の中学生たち。

  その中を歩く三人。いつものようにシャリは江戸紫の手を取っている。

  江戸紫「結局ランドセル間に合わなかったね。」

  ブラン「まぁ他所から来たって感じでいいんじゃない?」

  江戸紫「まぁねぇ。」

  ブラン「それでイジメられるかもって心配?」

  江戸紫「まぁ君は大丈夫だろうけどね。」

  ブラン「シャリも大丈夫だよ。な。」

  シャリ「聞いてなかったー。」

  頼代小学校前。

  ブラン「一緒に授業受けるつもり?」

  江戸紫「うん?あぁ。」

    「じゃあ、いい子にするんだよ。」

  ブラン「親か。」

  江戸紫「保護者扱いしているのはそっちだ。」

  シャリ「いいこにするー。」

  ブラン「とっとと失せろ。」

  江戸紫の尻を蹴るブランシェア。

  江戸紫「学校終わったら真っ直ぐ帰って、

    「仕事終わったら杉本書店にいるから、

    「何かあったら電話するんだよ。」

  シャリ「はーい。」

  ブラン「はいはい。」

  ブランシェアとシャリが手を繋ぎ校門から中へ。

  江戸紫はそれを見送ってから振り向き駅へ向かう。


03 頼代駅から

  郵便配達のバイク。雨合羽着た青山が乗っている。

  コンビニ前のポストから郵便物回収。

  路地から大通りへ出る。左右を確認すると左手、

  駅前に江戸紫の後姿が目に入る。

  クラクションを鳴らす。

  バイクで横に並び声をかける青山。

  立ち止まり振り向く江戸紫。

  青山「よう。二人は今日から学校か。」

  江戸紫「うん。」

  青山「お前はまた図書館か?」

  江戸紫「家にいるといろいろと誘惑あるから。職場みたいなものかな。」

  青山「それで今日は他にもイベントがあるのか?」

  江戸紫「なんで?」

  青山「雨降ってるから。」


04 オフィスビル内。座って書類を整理する東雲に桜井が声をかける。

  桜井「シノさん。正式なのってきました?」

  東雲「いや、まだ。桜井さんは?」

  桜井「ワタシもまだです。

    「来るなら早く来いって感じですよねぇ。」

  東雲「全く。」


05 図書館

  江戸紫、ノートを開きメモを取るが度々その手が止まる。

  窓から外を見る。雨。


06 杉本書店

  事務所兼休憩室に置かれた二つの鞄。

  店内。客の姿なし。レジに座る杉本。

  その横で床に座り文庫本(カフカ)を読むシャリシャリ。

  レジ近くで脚立に座るブランシェア。

  ブラン「一応大学は卒業したんだよな?」

  杉本「一応ね。どうして?」

  ブラン「新店舗とか正気かと思って。」

  杉本「南店の事?それなりの算段は付けたわよ。」

  ブラン「つまり?」

  杉本「あそこは店舗兼倉庫になっていててネット通販の拠点に」

  書店ドアが開きお客が来る。

  杉本「いらっしゃいませ。」

  ブラン「(立ち上がり)いらっしゃませー。」


07 駅、江戸紫時計を見る14時。改札を出る。小雨。

  傘を差さずに小走り。杉本書店を素通り。

  そのまま走る。


08 杉本書店店内。文庫本(ヘッセ)を読み続けているシャリシャリ。

  シャリ「おっちゃんが走ってった。」

  杉本、レジから出て入り口ガラス戸越しに外を見る。

  (外には出ていない)

  杉本「いないわよ。」

    「だいたいそこから外なんて見えないでしょ?」

  シャリ「んー?見えないよー。」


09 江戸紫アパート前。チャイムを押すが無反応。

  鍵を開けて中に。玄関、靴が無いのを確認。

  リビング誰もいない。二人の部屋に入るが鞄がない。

  江戸紫はそのまま部屋を出て鍵を閉める。

  通りに出て、杉本書店に向かわず、学校方面へ。

  学生にはすれ違わない。

  小学校前。人影は無し。


10 小学校 江戸紫が校門前で二往復、振り向き道を戻る。

  数歩歩くとバイクの音。

  青山「やっぱりエドか。」

    「もう戻ったのか。いつもは夕方まで」

  江戸紫「うん?あぁ、うん。」

  青山「どうした?慌ててるな。」

  江戸紫「二人がまだ帰ってないみたいでさ。」

  青山「授業中じゃないのか?」

  江戸紫「今日は始業式だからもう終わった筈なんだ。」

    「まぁ、買い物してから帰るって言っていたから」

    「ちょっと遅れているだけだと思うんだけどね。」

  青山「(ニヤニヤしながら)相変わらず心配性だな。」

    「大丈夫だろ。お前よりシッカリしたお嬢ちゃんだ。」

  江戸紫「人事だな。」

  青山「(ニヤニヤしながら)まぁな。」

    「俺たちが小学生の頃だって真っ直ぐ帰らなかっただろ。」

  江戸紫「まぁね。」

  青山「そのうち帰ってくるよ。見掛けたら声かけてやるから。」

  江戸紫「頼むよ。」

  青山「じゃあな。」


11 オフィス内。営業から戻る東雲。

  一度席に着くが、すぐに立ち上がり、上司の席へ。

  東雲「部長。その後例の異動の件は・・・」

  部長「うーん。まだ人事から何も言ってこないんだよ。」

  東雲「そうですか・・・」

  部長「もう一度確認してみるよ。」

  東雲「お願いします。」

  立ち去らない東雲

  部長「他にも何かあるのかい?」

  東雲「あの、

    「自分はこの部署で戦力になってませんか?」


12 杉本書店。江戸紫が裏口から入る。


13 杉本書店店内。

  文庫本を読み続けるシャリシャリが

  シャリ「おっちゃん来た。」

  と本を閉じて立ち上がり、事務所兼休憩室へ。

  それを見ていた杉本がブランに尋ねる。

  杉本「なんで判るの?」

  ブラン「ワガンネ。」


14 休憩室。二人の鞄を見つける江戸紫。安堵の表情。

  ドアが開く。シャリシャリが入ってくる。

  シャリ「おかーえりー。」

  江戸紫「ただいま。」

  二人で店内へ。江戸紫、杉本に挨拶。

  杉本「お疲れ様ー。」

  江戸紫「(ブランに)なんでここにいるんだ。」

  ブラン「保護者の保護者がいるから。」

  江戸紫深いため息。

  江戸紫「学校終わったら真っ直ぐ家に帰れって言ったろ。」

  ブラン「ごめんごめん。何せー」

  江戸紫「(遮って)返事した事はちゃんと守れ。」

  江戸紫の厳しい口調に会話が止まり、一瞬空気が張り詰める。

  ブランが何かを言おうとしたところで

  シャリシャリが半泣きで

  シャリ「ごめんなさーい。」

  江戸紫、その顔を見て厳しい表情が緩む。

  江戸紫「(シャリに向かって)今度からちゃんと一度家に帰って

    「それから宿題とか済ませてから遊びに行くんだよ。」

  シャリ「はぁい。」

  江戸紫「ブランシェアも。いいね。」

  ブラン「(ムスっとしながら)はーい。」


15 オラ店内、東雲、桜井が飲んでいる。青山は別の席。

  江戸紫、杉本、ブラン、シャリ入店

  松田「いらっしゃいませ。」

  ブラン「今日は店員か。」

  松田「今週は午後からなの。」

  合流する。

  ブラン「オラ、お二人さん。お邪魔しますよ。」

  桜井「こんばんわ。」

  杉本「お邪魔じゃない?」

  桜井「大丈夫ですよ。愚痴言い合ってただけですから。」

  杉本「何かあったの?」

  桜井「ええ、職場でイロイロと。」

  江戸紫「二人は同じ職場なんだっけ?」

  頷く二人。

  ブラン「(ニヤニヤして)で?で?職場のイロイロってのは?」

  青山が席に戻りながら

  青山「異動になるんだとよ。」

  杉本「転勤?」

  桜井「いえ、内部での異動なんですけど、

    「そもそも異動になるのかもハッキリしないんですよ。」

  青山「ソレでぐちぐち言い合っているんだな。」

  杉本「でも異動なんて大きな会社なら珍しくないでしょ?」

  青山「こいつらの場合は事情が違うんですよ。」


16 オラ店内

  江戸紫がブランとシャリを連れて別の席に移る。

  ブラン「何で動くんだよー。事情がワカンないだろー。」」

  江戸紫「こっちで話してやるから、食事しな。」

  シャリ「ごはんだごはんだ。」

  松田が注文を聞きに来るが

  松田「エドはいつもの?」

  ブラン「じゃあそのいつもの3つ。」

  シャリ「シャリもいつものー。」

  松田「かしこまりました。」


17 オラ店内

  江戸紫「簡単に言うと、スポーツ入社なんだよ。」

  ブラン「なんだそれ?」

  江戸紫「シノは柔道推薦。桜井さんはバレーボールだったかな。」

  ブラン「ああ、会社のクラブ活動か。」

  江戸紫「そ。」

  ブラン「なるほど、話は読めたよ。」

  シャリ「全然ワガンネ。」


18 オラ店内

  青山「つまりだ、二人の言いたいのは、

    広告塔以外に役に立っていないんじゃないかと。」

  杉本「簡単な部署に回されるなら楽じゃない?」

  青山「そこはそれ、周囲からの妬みもあるし、

    「第一プライドがある。」

  桜井「一年間今の部署でそれなりに頑張ってきましたから。」

    「仕事で大きなポカをやらかした事も無いし。」

  青山「それなのに異動は納得いかないと。」

  桜井「通常の人事異動ならいいよ。」

    「でもそれならもっと早く公示があっていいはず。」

  青山「つまり舐められている。と。」

  杉本「なるほどねぇ。」

  青山「俺から言わせれば甘ったれだけど。」


19 オラ店内

  シャリ「(モグモグ)でもさ、でもさ、」

  ブラン「口の中にモノを入れて喋るな。」

  シャリ「(ごっくん)そんなの知っててで入社したんじゃないの?」

  江戸紫「そうだよ。」

  シャリ「じゃ何でグダクダ言ってるの?」

  ブラン「俺はパンダじゃ無いぞ。て言いたいんだよ。」

  シャリ「ふーん。」

  ブラン「判ったのか?」

  シャリ「散髪したてくらいさっぱり。」


20 朝。江戸紫アパート前。

  ブラン「今日は付いてこなくていいから。」

  シャリ「えー。一緒に行こうよー。」

  ブラン「やなこった恥ずかしい。」

  シャリ「えー。」

  ブラン「行くぞシャリ。」

  シャリ「うん。」

  江戸紫「今日は真っ直ぐ帰るんだよ。」

  シャリ「はーーい。」

  ブラン「フン。」


21 江戸紫電車内。窓から外を眺めている。晴れ。


22 郵便局から青山がバイクで配達に出発


23 杉本。杉本書店のシャッターを開けている。


24 青山バイクで配達風景。


25 松田ボイストレーニング風景


26 東雲営業中。(外回り)


27 桜井入力作業中。


28 シャリ、ブラン学校内授業中。


29 江戸紫、図書館。窓の外ばかり眺めている。


30 小学校前、子供たち下校。

  シャリシャリ、ブランシェアが出てくる。

  ブラン「軍曹んとこ行くぞ。」

  シャリ「真っ直ぐオウチに帰るんだよー。」

  ブラン「うるさい。置いてくぞ。」

  シャリ「えー。いけないんだよー。」

  ブラン「じゃ行かないのか。」

  シャリ「行くー。」


31 杉本書店内。自動ドアが開く。

  杉本「いらっしゃい。あ。こんにちわ。」

  ブラン「いらっしゃいました。」

  シャリ「こんにちわー。」

  ランドセルを背負ったままの二人を見て

  杉本「あなたたち一度オウチに帰らないとエドに怒られるわよ。」

  ブラン「平気平気。」

  シャリ「ほらー。やっぱり帰ろうよー。」

  ブラン「一人で帰るか?」

  シャリ「えー。」


32 杉本書店前。青山バイクを止め、中へ。

  杉本「いらっしゃいませ。あらコンニチワ。」

  青山「こんにちわ。郵便です。」

  杉本「はいお疲れ様。」

  青山ブランシェアとシャリシャリを見る。

  青山「二人とも寄り道するとエドに怒られるぞ。」

  ブラン「全くどいつもこいつも。」


33 杉本書店休憩室。二つの鞄を見る江戸紫。

  店内へ、杉本に挨拶をする江戸紫。

  シャリとブランシェアに向かって、険しい表情。

  江戸紫「一度家に帰れって言った筈だよ。」

  シャリ「ほらーだから帰ろうって言ったのにー。」

  ブラン「お前は黙ってろ。

    「いやースッカリ忘れ-」

  江戸紫「(遮って)僕の言う事が聞けないなら、ウチに置くわけにはいかない。」

    「新しい居候先を探すんだね。」


34 杉本書店休憩室。

  ブランシェアがムスっとしたまま下を向いて座っている。

  シャリが泣きそうな顔してブランシェアを見ている。

  ブランは目を合わせない。


35 杉本書店 店内

  江戸紫、本を清掃中。

  江戸紫「キツク言い過ぎましたかね。」

  杉本「出て行って欲しいの?」

  江戸紫「判りません。」

  杉本「二人が邪魔?」

  江戸紫「邪魔ではないです。ただ急に何もかも変わって。」

  杉本「戸惑っている?」

  江戸紫、頷く。


36 杉本書店休憩室。

  黙っているブランシェアにシャリが近づく。

  シャリ「ねぇ、シャリ達追い出されちゃうの?」

    「また違うオウチに行くの?」

  ブラン「・・・」

  シャリ「ねぇ。」

  顔を上げるブラン。シャリの顔を見る。

  不機嫌な顔をしていたが、シャリに微笑む。

  ブラン「わかったよ。」

    「ちょっとココにいて。」

  シャリ「うん。」

  立ち上がるブランシェア。


37 杉本書店内

  杉本が何かを言おうとすると、休憩室からブランシェアが出てくる。

  ブラン「エド!ちょっと来い!」

    「軍曹、江戸紫借りますサー。許可をいただけますかサー。」

  顔を見合わせる江戸紫と杉本。杉本が笑顔で頷く。

  杉本「許可する。」

  杉本書店内奥へ。

  ブラン「(小さい声で、俯いて)エド。」

  江戸紫「何。」

  ブラン「正直スマンかった。」

  江戸紫「何だその-」

  ブラン「(遮って)ごめんなさい。」

    「明日からちゃんと真っ直ぐオウチに帰るから

    「追い出さないで。」

  江戸紫、驚いた表情。言葉を失う。

  ブラン、顔を上げる。

  江戸紫その表情を見て微笑み、頷く。

  江戸紫「約束してくれるね。」

  ブラン「する。」

  江戸紫「じゃあ仲直りしよう。」

  右手を出して握手を求める江戸紫。

  ブラン「もう怒ってない?」

  江戸紫「うん。」

  ブランシェアも笑顔で江戸紫の手を握る。

  ブランシェア、休憩室に向かって

  ブラン「シャリ!話はついたぞ!」

  休憩室のドアの向こうでバタバタと音がする。転ぶ音。

  ドアが開きシャリが出てくる。

  握手する二人を見て拳を突き上げ

  シャリ「おーっ!」

  杉本「そうだ!」

  驚く3人。

  杉本「学校終わったらココに来なさいよ。」

    「宿題もココですればいいわ。」

  江戸紫「あ、いや、さっき真っ直ぐ帰れって」

  杉本「エドもその方が安心するんじゃない?」

  江戸紫「そりゃあまぁそうですけど。」

  杉本「どう?二人とも。」

  ブラン「賛成!」

  シャリ「シャリもー。」

  江戸紫「そこまで迷惑掛けるわけには」

  杉本「迷惑なんかじゃないわよ。

    「私も一人で店番するのもつまらないし、

    「お店も手伝ってくれるわよね。」

  ブラン「手伝うであります。サー。」

  シャリ「シャリもであります。サー。」

  杉本「ね。」

  江戸紫「でも」

  ブラン「ええい。貴様上官の命令が聞けぬのか。」

  シャリ「聞けぬのか。」

  杉本「保護者の保護者の言うことは聞くように。」


38 ラジオスタジオ。青山喋っている。

  青山「自分は何者なのか。何故ここにいるのか。

    「誰かに、何かに必要な存在なのだろうか。

    「存在意義ってやつ。

    「我思う、故に我在り。て言葉あるよね。

    「でもさ、自分って存在を知るには、

    「自分を知ってくれる誰かが必要なんだよね。

    「自分で思うだけって、それはもしかしたら誰かの幻想なのかも。

    「僕が今こうして思っている事は、誰かの夢なのかも。

    「つまりね、

    「僕はこうやって誰かに話しかけて、自分の存在を確認しているんだ。

    「やっぱり、誰かが自分の存在を肯定してくれるから、

    「僕はここにいるんだ。て自信を持って言えるんだ。」

    

39 杉本「エド。」

  江戸紫「はい?」

  杉本「臭い。」


40 オラ店内。

  青山、ビールを飲みながらメモを見ている。

  松田が東雲と桜井を案内する。

  三人の表情を見る青山。

  青山「(松田に向かって)ビール3つね。」

  松田「(笑顔で)はい。」

  青山「軽いお祝いだ。」


41 江戸紫モノローグ

  新たな共有。何かが新鮮だと感じられるのはそう長い期間ではない。

  つまりそれは、新しい何かではなく、同じ世界での変化でしかないからだ。

  例えば部屋の模様替えをしただけのような。

  捨てる何かはあっても、新しい何かを買わなければ、

  それは目先の変化が行われただけに過ぎない。

  僕の部屋に居ついた子供たちは3年生から4年生になる。

  だけどこの場合は僕の言った「単なる変化」には留まらない。

  新しい学校、新しい先生、新しいクラスメイト、新しい教科書、新しい環境。新しい世界。

  僕もこの二人によって新しい生活を始めさせられた。

  そんなに悪くないと思い始めている。


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