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明日は晴れると思う  作者: 奏路野仁
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1話

江戸紫 然 雨男 大学卒業後フリーで翻訳の仕事を 作家志望 生活苦にてバイトを探している

青山 翔 ポストマン ボランティアで地元ラジオ局DJ

東雲 健太 大手自動車会社勤務 法人営業部 柔道部のスポーツ推薦入社

杉本 茜 杉本書店の二代目 通販大手に勝ちたい

松田 珊瑚 スペイン料理店「オラ」でバイト 声優目指して日夜レッスン

桜井 朱莉 大手自動車会社勤務 営業事務 バレー部のスポーツ入社

あしたは晴れると思う


第一話


00 午後6時 頼代駅前 中央通り ラジオスタジオ

  ガラス張りのブース内

  DJがマイクに向かう。

  DJ「3月30日。街の西の丘の上の公園にて

    「星見る会を開催します。」

    「運が良ければ流星群に遭遇できるかも。」

    「ちょっとしたイベント。ただ集まって星を眺める。」

    「日常が続くだけの毎日はちょうどいい緩さかな。」


01 朝。頼代ヨリシロ)街、駅前中央通り

  歩く江戸紫。

  古い建物は映画館「パラダイス」準備中。

  小さな個人経営の本屋「杉本書店」準備中。

  「頼代駅」階段を登りホームへ。ほどなく電車到着し乗り込む。


02 朝 隣町大通り

  駅から図書館へと向かう江戸紫

  行き交う車、通行人。

  新しい本屋。見上げて看板。店名「スギモト」。

  工事中の建物。外観は完成している。

  自動ドアに開店予定日の貼紙と「アルバイト募集」

  近寄って眺める。時間帯によって異なる単価を確認。


03 図書館

  江戸紫、一人調べ物と作業。


03 オフィス街。ビルがいくつか並ぶ。

  青山、バイクで郵便配達。

  ビル内、オフィスの郵便受けを無視し事務所の中へ。

  青山「こんちはー。」

  桜井「郵便物は総務にどうぞポストマン。」

  青山「いや、シノいる?」

  桜井「営業に出てる。」

  青山「早いな。伝言頼むよ。明後日予定入れてないかの確認。」

  桜井「明後日て30日ね。ラジオで言っているイベント?」

  青山「お、よく知ってるね。」

  桜井「この事務所ラジオ垂れ流しだからね。」

  青山「なら話が早いや。シノは強制参加だって言っておいてよ。」

  桜井「アンタが星見る会ねぇ。」

  青山「当日暇ならお前も来いよ。」


04 夕方

  電車に乗っている江戸紫。

  頼代駅を降り、中央通りを歩く。

  小さな本屋「杉本書店」

  入り口ドアに張り紙「南店オープニングスタッフ募集中」

  江戸紫 店内へ

  杉本「いらっしゃいませ。あれ?」

  江戸紫「あれ?」

  杉本「発売日は明日ですよ?」

  江戸紫「いえ今日は別の要件で。」

  杉本「はい?」

  江戸紫、ドアを指差す。


05 レストラン「オラ」

  テーブル席で江戸紫食事中。対面に座る青山が話しかけながらメモをとる。

   ~メモ帳

  ・「ピノキオ」星に願いを/ Pinocchio~When You Wish Upon A Star

  ・フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

  ・星影のステラ / マンハッタン・ジャズ・クインテット

  青山「おとめ座ってどのへん?」

  江戸紫「それは自分で調べて。」

  青山「パラダイスはどうだった?」

  江戸紫「朝は閉まってた。」

  青山「そうか。帰りながら寄ってくれよ。」

  江戸紫「もう終わってる時間。」

  青山「どうしろってんだこの野郎。」

  江戸紫「配達途中に寄ったら。」

  青山「お前の仕事だ。」

  オラの店員、松田が水を足しに現れる。

  青山「サンゴちゃん明後日迎えに行こうか?」

  松田「大丈夫ですよ。一人でいけますから。」

  江戸紫「いやいやお前先に行って準備があるだろう。」

  青山「ちっ」

  江戸紫「松田さんを理由に遅れるつもりでいたな。」

  松田「私を遅刻のダシにするつもりだったんだ。」

  青山「ちがっ。俺はサンゴちゃんが迷子にでもなったらと。」

  江戸紫「道一本で迷子にさせるとか酷い奴だな。」

  松田「酷い人ですね。」

  青山「ひぃっ。」


06 レストラン オラ店内。江戸紫一人で食事中。

  女性2人の席に座って会話。

  江戸紫は黙々と食事。

  松田が江戸紫の席に水を足しに来る。

  江戸紫「ん、ありがとう。」

  松田は微笑むだけ。水を足し終えると

  松田「青山君はまたナンパ?」

  江戸紫「ネタ仕入れているだけだよ。」

  松田「(笑いながら)知ってる。」


07 夜 映画館「パラダイス」前

  シャッターは閉じている


08 夜 江戸紫自宅

  江戸紫PCに向かって入力作業。


09 朝 前日と同じ流れ

   映画館パラダイス前 杉本書店前から頼代駅

   隣町駅から工事中の建物を通り図書館まで。


10 夕方 杉本書店内。江戸紫入店。

  杉本「いらっしゃいませ。あ。本入荷しましたよ。」

  江戸紫「ありがとうございます。」

  杉本「こちらこそ毎度ありがとうございます。」

  レジ支払い

  杉本「あと合格で。」

  江戸紫「え?あ、ありがとうございます。一応履歴書持って来ました。」

  杉本「じゃあ預かります。いつから来られます?」

  江戸紫「今日でも明日でも。あ、明日はダメでした。」

  杉本「デートの約束でもしてた?」


11 3月30日 朝。江戸紫電車内。ドアに寄りかかりながら外を見る。

  空を見上げる。雨。


12 青山雨合羽を着て雨の中バイクで郵便配達。

  途中で止まり空を見上げる。雨。


13 オラ裏口ドア。

  松田「お先に失礼します。」

  ドアから外へ出て傘を開く松田。


14 オフィス街

  スーツ姿の東雲、傘をたたみ、一度空を見上げオフィスへ。

  オフィス内の窓から東雲の姿を見る桜井。

  そして空を見上げる。雨。


15 杉本書店。シャッターは閉まっている。

  明かりの半分消えた店内。レジに座り本を読む杉本。

  雨音。


16 頼代駅。改札から出てくる江戸紫。

  外に一歩出て手のひらを上に向け雨を確認。

  空を見上げる。小降り。

  傘を差して歩く。足元の水溜りに跳ねる雨。

  雑踏。

  杉本書店前から裏口に回る。

  通用口のドアチャイムを押す。

  江戸紫「お待たせしましたー。」

  杉本「出前か。」

  江戸紫「ラーメンと餃子定食ですね。1100円になります。」

  杉本「安い。どこの店?」

  江戸紫「出られます?」

  杉本「ええ、行けるけど、雨降ってない?」

  江戸紫「降ってますね。」

  杉本「雨でも星見えるかい?」


17 西の丘の上公園。滑り台。ブランコ。回る丸いジャングルジム。

  電灯に当たる雨。時計は17時。

  青山が一人、東屋(木造の柱四本に屋根。木造のベンチとテーブル)に立つ。

  青山溜息。恨めしそうに空を見上げる。


18 西の丘の上公園

  時計は17時15分頃

  青山、江戸紫、杉本 東屋の中で立ちながらの談笑。

  杉本「それじゃあ一個下なんだ。」

  青山「杉本さん有名人でしたからね。」

  杉本「そうなの?」

  江戸紫「そうなの?」

  

19 西の丘の上公園

  時計は17時35分頃

  青山 江戸紫 杉本 松田 東屋の中。

  松田「ソフト部のキャプテンですよねー。」

  江戸紫「(松田に)高校一緒だったんだ。」

  松田「(江戸紫に)凄い人気あったの。」

  青山「女子校とか言ってなかった?」

  松田「そうですよ?」

  青山「女子高生の人気者とは羨ましい。」

  松田「(青山の発言を無視して)

    本屋さん行くたびにサイン貰いたくなるんです。」

  江戸紫「そんなの領収書くださいって言えばサインしますよね。」

  杉本「しないわよ。」

  桜井と東雲が登場。

  桜井「こんばんは。」

  青山「ようこそ星見る会。」

  松田「あれ?朱莉ちゃん?」

  桜井「サンゴ?」

  青山「なんだこいつらも知り合いかよ。」

  松田、桜井が近寄り「久しぶりねー」と言っている。

  青山、東雲を向いて

  青山「で、あなたどちら様でしたっけ?」


20 西の丘の上公園。東屋。談笑を続ける6人。

  江戸紫、公園内の時計を見ると18時32分。

  江戸紫「この6人だけかな。」

  杉本「雨だしね。」

  桜井「雨だったらどうするってのは告知しなかったよな。」

  青山「知らん。」

  松田「私も確認しなかったな。」

  東雲「誰も何も誰かに何かを聞こうとは思わなかったんだ。」

  桜井「(青山を見ながら)言い出した奴が何もしないから。」

  青山「(後ずさりしながら)ちょっと待て!」

    「企画はエドだぞ!文句あるなら奴に言え。」

  松田「でも責任者は青山君でしょ?」

  青山「(さらに後ずさりしながら)

    知らん!俺は何も知らん!悪いのあいつだ(江戸紫を指差す)」

  江戸紫「何て奴だ。」

    「まあでも責任が全く無いとは言えないし。ちょっと待ってて。」

  江戸紫一人駐車場に向かう。

  それを見て松田

  松田「あれ?エドって車持っているの?」

  青山「いや無理。」

  杉本「無理?」


21 西の丘の上公園駐車場 自販機前

  江戸紫「えーっと。」

  指を折りながら人数確認。

  足元水溜り。傘を肩に乗せ、ジュースを6本抱える。

  自販機から公園方向に振り返った瞬間上空に大きな流れ星。

  驚く江戸紫。落ちる傘。

  シュゴーっと音を出しながら上空を通り過ぎ、その行方を見つめる。

  丘の上から駅を通り越して街中に落ちる。

  衝撃音は無し。光も消える。

  江戸紫「うちの方じゃないのか?」


22 西の丘の上公園

  東屋から出て、空を見上げている5人。星が少し見えている夜空。

  青山「あっちからあっち。」

  と上空に指差ししている青山。

  松田「何流星群なんですか?」

  青山「知らん。」

  桜井「お前なぁ。」

  江戸紫「おとめ座流星群だよ。」

  その声に振り返る一同。江戸紫はまだ傘を肩にかけ、ジュースを抱えている。

  江戸紫「一本ずつ取っていただけけますか?」

  青山「安い責任感だな。」

  江戸紫「あ、お前の分忘れた。」


23 西の丘の上公園

  江戸紫「さっきかなり大きいの流れたよね。」

  青山「え。見えなかったぞ。」

  松田「私も見てない。」

  他に確認する青山。全員見ていない。

  江戸紫「あれ?。」

  青山「エドは他人に見えない物が見えるらしいな。」

  江戸紫「あぁ、お前の背後に落ち武者的な。」

  青山「どこに?うわっ」

  青山振り返ると東雲。

  その東雲が「あっ」と声をあげる。

  再び驚く青山。

  東雲が空を指差す。

  全員その方向を見る。

  いくつかの流れ星。

  全員空を見上げ歓声。


24 夜 オラ店内。

  全員席に着くと松田が一度店の奥に消える。

  桜井「あれ?今日休みじゃないのか?」

  松田微笑んでそのまま去る。

  別の店員が水を置く。

  ご注文決まりましたら的なセリフなしに去る。

  松田がワゴンを押して戻る。上にはワインとグラスが6人分。

  松田「青山くんからの驕りです。」

  青山立ち上がる。

  青山「エド。誕生日おめでとう。」

    「黙って無かった事にしようとしても歳は取るぞ。」

  江戸紫「そんなつもりはない。」

  青山ワイングラスを江戸紫に向ける。

  青山「それでは皆様。江戸紫(えどむらさき) (ぜん)君のこれからと

    「星見る会の成功を祝して。」

    「カンバーイ。」

  他4人「カンバーイ」

  江戸紫「成功したのか?」

  松田がワゴンの下段からショートケーキを取り出す。

  松田「このケーキも青山くんの驕りです。」

  桜井「やけに気前がいいじゃないか。」

  青山「友人の誕生日だからな。」

  江戸紫「あ、お前もしかして局の」

  青山「(江戸紫の言葉を遮り)お前は黙れ。」

  江戸紫「20人前後の予算で取材費貰ったの知ってるぞ。」

  青山「うるさい黙れ。」

  東雲「20人の予算でワイン一杯とケーキ一個?」

  桜井「こうなったら夕飯もごちそうになろう。」

  全員「ごちそうさまでーす。」

  青山「うおっ。奢るなんて言ってないぞ!やめろ。」

  江戸紫「誕生日に免じて。」

  青山「お前らいいか!20人集まったって言っとけよ!」

  杉本「珊瑚ちゃん、ケーキおかわりある?」

  松田「ケーキバイキングできますよ。」

  青山「25人、いや30人て言っておけよ!」


25 夜 江戸紫のアパート。階段を上がる。鍵を開け、ドアを開ける。

  灯りが点いている。テレビの音と二人の笑い声。

  ぎょっとする江戸紫。

  静かに恐る恐る歩く。

  (玄関、キッチン、居間の順。声と明かりは居間から。)

  そっと居間を覗くと二人の子供が座ってテレビを見ている。

  リラックスした雰囲気。くつろいでいる。

  テーブルには空になったコンビニの弁当。

  江戸紫に気付く手前のブランシェア。

  子供A「おうっおかえり。遅かったな。」

  子供B「(それに気付いて)おかえりなさーい。」

  江戸紫「えっと、どちらさん?」

  子供A「おかえりって言っているんだから他に何か言うことがあるだろ」

  江戸紫「あ、はい。えっと、ただいま。」


26 江戸紫 モノローグ

  日常が続く毎日が好きだ。

  突然現れた二人の子供は何者なのだろうか。

  青い目の金髪ツインテールと黒髪ショートのコンビ。

  何故こんなにも人の家でくつろいでいるのだろう。

  何故こんなに偉そうなのだろう。

  戸棚にあったとんがりコーンは何処へ消えたのだろう。

  頭の中にはたくさんの「?」が物凄い勢いで飛び交っている。

  さっき見た流れ星の群れのように。


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