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独り言  作者: 玄冬玄武
6/8

恋愛

ピーンポーンパーンポーン

唐突な校内放送が昼休みのガヤガヤとした教室を、いやガヤガヤとした校舎全体の

雰囲気をぴしゃりと遮った。

何が発せられるのかと全生徒がスピーカーに耳を傾ける。

中には数秒の間に誰の教師の声がするのか、どんな内容の放送なのかを予想する

ゲームをする生徒も1人はいるかもしれない。

それよりは何もしていないのに自分が呼び出されるのではないかと内心ヒヤリとした

生徒の方が数はいるかもしれない。


「あーあー、1年3組の三島肇くん。至急、職員室まで来るように。繰り返す、

えー、1年3組の三島肇くん。至急、職員室まで来るように。」


この声は1-3担任の鬼頭巖であろうか。このドスのきいた声は鬼頭そのものである。

鬼頭巖は名は体を表す通り、鬼のような風体であり岩のように堅いゴツゴツとした

体つきの体育教師である。今の2・3年生も1年の時に生活指導などで厳しく指導

され、トラウマを持つ生徒も少なくはない。

まあ、私などは目立つこともないし悪いこともしていないのでトラウマ程のことは

指導されていなかったが、体育の時間は地獄だった。

今思い出すだけでも体が怠くなるし頭も痛くなって・・・・・・・

今の1年にも生徒全員から恐れられている人物だ。

鹿島なんかは一発アウトなはずなのに指導されているということは聞いたことも

見たこともない。彼女なりにイロイロなことでもしているのだろうか。

やめておこう。24時間鹿島を見ているわけでもないのだから・・・


三島肇くん、君は何をしたのか。鬼頭に呼び出されるとは余程のことをしない限り

呼び出されはしない。ご愁傷様です・・・・・・・・・・・・・・・・・・


注視されたスピーカーは声を忘れ、動くことのなくなった途端に注がれた視線は

一気に分散され元の(かまびす)しい教室に戻った。


いつも通り、テーマを探している東。

まさか、テーマが早々に決まるわけもなく、教室を見回している。

もし早々にテーマを決めるのであれば、テーマは“鬼頭巖”か“三島肇”になる。

しかし、そんなテーマで昼休みが持つはずもない。

何とか持たせようとしても三言(みこと)が関の山だ。


-------------------------------------------------------------------------------------


いつもの教室の窓側前方の席にいつものメンバー3人(新浜・鹿島・小野田)が

話に花を咲かせている光景が目に入った。

いつも通り繰り広げられるガールズトークを耳を(そばだ)て、盗み聞きする

のが東の密かな楽しみでもある。東だけとは限らないが。

男が女子の会話を詳らかに盗み聞きするのは頗る気持ちが悪い。

そんなことは解っていても聞こえてきてしまうものは仕方がない。

まあ、こんな陰鬱な彼奴はその辺の石塊(いしくれ)ほどにしか思われて

いないのだろう。


「ねえ、ところでさ、小百合は彼氏とか作らないの?」鹿島がぶっこむ。

「そういえばそうだよね。なんで作らないんだろう?あんなにモテてるのに。」

眉を八の字に曲げふと疑問を浮かべる優。親友の恋愛事情に興味が涌いた模様。

「ええ~、全然モテてないよ。」

謙遜か気づいていないのか男に無関心なのか、否定する小百合。

「どんだけ鈍感なの~?男子からの視線チョー来てるけどね~。」

現在進行形で来ている視線を本人よりも疎む鹿島。

「いいよね。ちょっとだけでも分けてほしいわ。」欲が零れてしまう優。

「でも、小百合には私が悪い虫を寄せ付けないけどね。」

親友のためを思い妙に男らしく彼氏っぽく断言する鹿島。

普段はチャラチャラしてるけど大切な人のためなら思い遣ることもできるんだなあ

と思う東であり、自分と同じことを思っていて通ずる所もあるのかと意外な事ばかりで吃驚する東でもあった。

(私も小百合さんに悪い虫を寄せ付けたくないけど自分では行動できないから内心ほっとしている。)

「ありがとう。でも、今は誰とも付き合う気になれないから。」

それでこそ小百合さんだ。小百合の発言に心底惚れ惚れする東。

「そっか~、小百合はマジメだね~。」

「じゃあじゃあ、好きなタイプってなんだっけ?まだ聞いてなかったよね。」

よくぞ聞いてくれた。と内心思う東。

密かに入学してから約1か月待った甲斐があった。小百合の好きなタイプなど、底辺ぼっちの情報弱者が普通にしていては知れるはずもない。だから、ガールズトークに耳を欹てて情報を入手している。

ガールズトークを聞く(合法的盗聴の)利点は大きく一言でいうと“ただの暇潰し”細かく三つに分けると独り言のテーマ探し・暇潰し・情報収集だ。

「う~ん、強いて言うなら外見より中身かな。それに一緒にいると幸せになれる人が良いかな。」

「わあ~結構しっかりしてるんだね~。さっすが小百合。私はやっぱり顔かな~。」

「椎菜はやっぱりそうなるよね。椎菜の彼氏イケメンだしね~。」

「でしょ!ウチの自慢の彼氏だからね。あのどこか虚ろな目も素敵だし!それに切れ長だし!鼻のラインもカッコイイ!金髪もとっても似合ってるし!唇だって厚すぎず薄すぎず程よい厚さ!チョーエロい!もちろん顔もカッコイイけど顔だけじゃなくて性格もチョーカッコイイ!いっつもウチのことだけを考えてくれていっつもウチに優しいし!チョー幸せ!やっぱり彼氏を作ることは・・・・・   ペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ」

二人がこの話を聞くのは何回目になるのだろうか。

彼氏の自慢となると親友の二人でも止められなくなる鹿島であった。


-------------------------------------------------------------------------------------

うむ、ガールズトークをずっと聞いていてもいいのだが鹿島の自慢話はいつでも聞ける

(ていうかラブラブアピールはどうでもいい)ので早速テーマ発表へと移ろう。

今日のテーマは・・・・・・『恋愛』だ。

恋愛に一番遠い(ぼっち)が恋愛について語ることなどできるのか?

騙ることはできるけど。

兎に角、はったりでも何でもいいからテーマは『恋愛』でやって行こう。


まず、恋愛とはどのようなことか。恋愛とは、恋・恋慕のこと。

つまり、好きになった男女同士が互いに思いを寄せることまたは思いを寄せたのちに

一緒に身を寄せ合い同じ時間を過ごすことである。


さあ、ここで一つ個人的な問題が生まれる。それは・・・・・・・・

『私のような恋愛弱者に恋愛を真面に送ることができないんじゃないか問題』だ。

恋愛弱者(私見)の条件を私を基準にして述懐していこう。

①顔面偏差値が普通か普通以下である。(顔がかっこよくはない)

②不健康そうな顔、身体付きである。(ヒョロのガリ)

③女性の前ではおどおどしてしまう、勇気が出ない。(コミュ力の皆無)

④清潔感がない。(体臭・口臭、爪が伸びてる、服装がぼろっちい)

⑤仕事が出来ない。(金がないんじゃ)※社会人に限る

⑥経歴のステータスが低い。(勉強ができない)

と、以上6項目が恋愛弱者の条件になると思う。

これだけではなく、他にも細かいものはあるかもしれないが大きく分けて6つ。

上記の項目①~⑥に4つ以上当てはまると見事な恋愛弱者だ。

また、6つ全てに当てはまる人は、おめでとうパーフェクト・コンプリートだ。

おめでとう、完全無欠恋愛弱者(穴だらけだけどね)の称号を与えよう。

そんな完全無欠恋愛弱者でも恋愛の可能性は万に一つだが可能性はある。後述記載


では、このような恋愛弱者乃至完全無欠恋愛弱者はどう恋愛すればいいのか。

恋愛はできるのか。

女子側の視点で見てみよう。上記の6項目のまさに逆の男性が欲しいのだ。

そんなの当たり前だ!顔とかどうにもならないだろ!という人のために、

上記の6項目を見てほしい。どうだろうか。お気づきだろうか。

そう、“性格イケメン”の項目がないではないか!

以前お話したイケメンの真髄・真意である“性格イケメン”

そんな多くの女子が憧れる・好きになる“性格イケメン”が省かれているのか。

それは・・・・・・・・・・『恋愛は打算』だからだ。

まず、『恋愛は打算』とはどういうことなのか説明しよう。

恋愛なんてものは他人の顔であろうが身体であろうが金や資産であろうが

経歴だろうが頭の良さだろうが身長だろうが性格だろうがそういうものに心を通わせ好きになることである。

例えば、顔がイケていて女に顔の良さを求めている男がいるとする。一方、顔が整っていて男に顔の良さを求めている女がいるとする。ここで、この二人が出会ったとなるとどうなるだろうか。

答えはもちろん、付き合い恋愛が完成する。単なる利害関係の一致だ。

至極簡単な恋愛の行程。そう、別に他人の全てを好きになるのが恋愛ではない。

相手の一部分だけが好きで条件にぴったりと当てはまり、相互が納得のいく形になれば恋愛は成り立つ。


では、初めの上記の6項目の中に多くの女子が憧れる・好きになる“性格イケメン”が省かれているのかの答えを説明しよう。『恋愛は打算』だからだと述べたがこれはちと言葉が足らないなあ。言葉を足すとしたら・・・・・

『目に見えない恋愛の打算』であるからなのだ。

まず、『恋愛は打算』には種類が二種類ある。1つは、『目に見える恋愛の打算』でもう1つは、先述の『目に見えない恋愛の打算』だ。

『目に見える恋愛の打算』とは例えを出すのなら、顔・身体(見た目)、金(収入)・資産、経歴・頭の良さ、といったところだろうか。

逆に『目に見える恋愛の打算』の例えを出すのなら思い浮かぶのは、性格ただ一つしかないだろう。

そう、恋愛など表面上のものにしか過ぎない。例えば、性格が良くても見た目が残念な男(恋愛弱者)がいるとする。周りにはカッコイイけど性格の悪い男や高収入だけど性格の悪い男(恋愛強者)ライバルがいるとする。そうなると、顔・身体(見た目)を求める女子はどうするか、そう、当たり前の話だが顔・身体(見た目)が秀でている男へと(なび)くではないか。一方、性格を求める女子はどうするか、そう、顔・身体(見た目)が秀でている男へと靡いてしまう。いったい何故か、そんなの目に見えている。『目に見えない恋愛の打算』は『目に見える恋愛の打算』よりも弱いからだ。

付き合うということは、利害関係の一致である。これは話した通りだ。

つまり、『目に見えない恋愛の打算』とは付き合ってからでないとわからないものだ。

付き合ってからでも性格なんてわからないことが多い。性格は数時間一緒にいるだけでわかるものではない。

例えば、性格を求め顔が良い女子がいるとする。顔を求め顔がかっこよくない性格の良い男子がいたとする。

女子は相手の顔などどうでもいいとしたとして、どうやって性格という『目に見えない恋愛の打算』を見抜くのか。という問題が生じる。そこで女子はどうしても付き合いたので確証のある顔の良い男子へと目を向けて性格を見ていくだろう。逆に、性格を知りたくて行き成り顔がかっこよくない性格の良い男子へ行くのだろうか。せいぜい、行動を起こさないでいるか顔の良い男子に靡くのが相場だ。又、顔を求め顔がかっこよくない性格の良い男子が女子のところに来たとして付き合ってみようと思うだろうか。

結局、利害関係の一致には至らず恋愛はならなくなる。


恋愛は騙しあいなのだ。如何にして自分が『目に見える恋愛の打算』を持っているか自分を騙るのだ。

就職面接と同じだ。自分はこんだけ仕事ができます!御社にこんだけ興味があります!仕事をしたいんです!世の中を変えてみせます!などとちょっとした虚飾や嘘を言っていることと同じだ。

恋愛弱者でもはったりやごまかしを利用して6項目を最低限だけでもクリアしていけば“恋愛”は可能だ。


ただ、私の考える問題はこれからだ。それは・・・・・・・・

『異性を騙して恋愛できたとしても騙された方はがっかりしちゃってすぐに離れて行っちゃう問題』だ。

例えば、顔を求める顔がカッコよくて性格の悪い男がいるとする。

性格を求める顔の良い女子がいるとする。その二人が付きあうとすると、最初のうちはまだいいとしても時間が経つにつれて女子は愛想をつかすことになる(恋愛の契約不履行)。

別れた後は、恋愛に見向きもしなくなるか同じような男にまた捕まり、また別れ、同じような男に捕まる・・・・・と繰り返すか。

顔を求める顔がカッコよくて性格の良いと出合えればいいのだが、一発で出会う可能性は低い。


個人的に恋愛できない問題を解決するならば、相手を騙すことを選ぶだろうがやはり抵抗がある。

もし仮に、顔を求める私が整形して顔を良くして、顔を求める顔が良い女子を誘いたとしても整形だったと知った時、彼女はどう思うか。

これも私の性格が関係しているのか。


私のような恋愛弱者には恋愛などは無理なのだろうか。

顔もかっこよくはない私が顔を求める・性格を求めるというのは虫が良すぎるのだろうか。

やはり、天稟が全てということなのか。そうなると甚だ腹立たしい。

私の考えが間違っているのか周りの考えが間違っているのか、もうわからない。


恋愛が表面で動くものであってはならない。もっと深いものだと。

僕はそう信じている。


キーンコーンカーンコーン


私らしくないテーマだったな次は数学だな。頑張ろっと。



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