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独り言  作者: 玄冬玄武
2/8

パクチー

さあ、“昼休み”は始まったばかりだ。テーマがないと“独り言”は始まらない。


毎度のことながらテーマ探しとしましょう。



-------------------------------------------------------------------------------------

教室を見渡すと、今まで集中していたためか聞こえてこなかったクラスメイト達のざわめき・

喧噪という名の騒音が聞こえてくる。女子たちの姦しい談議や男子たちのふざけている下ネタ

話、それに黒板を爪で引っ掻くあの悍ましく忌々しい不快感を示す音までもが聞こえている。

視線を教室の窓側前方に移すと、指定席かのように陣取っている鹿島を筆頭に連んでいる

女子三人が雑談を繰り広げていた。今回のテーマ探しは彼女らから持って来よう。


「ねえねえ、知ってる?宿原に新しいクレープ屋ができたんだって。」

話題を持ち掛けてきたのは、先ほどにも出てきた女、鹿島椎菜。どこぞの校則であれば一発

アウトは必至な綺麗に染まった金髪のポニーテールに、これもまたアウトは必至な

イヤリングをつけている俗に言いう...ギャルである。

顔は世間一般に見ればカワイイ顔をしているのに少し品性やモラルに

欠けている女である。私に言わせてみれば『残念』の一言である。


「クレープ!?行きたい!!いきたい!!!イキタイィィィィィィィィ!!!!!!!!」

少し発狂気味のこちらの女子は、小野田優。なんでも以前の会話から聞いた

(聞こえてきた)話から察するに相当な甘いもの好き(特にクレープ)らしい。

先の発狂具合で推測は確信に変わった。外見は、小動物のリスを思わせるかわいらしさが

目立ち、髪は亜麻色のボブカットである。男子人気は高い(少々発狂するのに)。


「ちょっとちょっと、優、落ちつきなって。みんなこっち見てるから。」

発狂気味の優を窘めている彼女は、新浜小百合。凛とした顔立ちに、黒髪のロングストレート

清楚と美麗を併せ持つ唯一無二の可憐な女性である。男子人気圧倒的1位はもちろんのこと

女子人気もかっさらう、まさに不動のセンターである。実のところ、私も惹かれているのだ。

まあ、付き合うなど無理であろうけど。遠くから見ているだけで十分なのだ。

「うぅ、ごめん。クレープ好きだから。クレープ...クレープ...くれーぷ。」

クレープ好きが言葉ににじみ出ているのは、世界を探してみても小野田さんしかいないだろう。

「別に怒ってはないし、行かないとも言ってないよ?」

落ち込んだ気分を浮かべる小野田さんを察したのか、慣れたしぐさで慰めの言葉をかける小百合。

「ほわぁ~!!ホントに?!いつ行く?今週の日曜にする?土曜でもいいよ?早く行き

たいから今日の放課後は?どう?放課後でいいよね?」

随分と気が早く、気体の表情を前面に出す優。リアクションが大きい女子は世界に彼女一人

だけだろう。男子人気が高いのは、リアクションの大きさと可愛さがいい意味でも悪い意味でも

シナジーとなって可愛さ・女の子らしさが増長・増幅するからなのかもしれない。

発狂じみた発言もその延長線上だから人気が落ちないのかもしれない。たぶん。

「放課後はさすがに無理だよね?椎菜はどう?私は無理だけど。」

自分の予定がつかないことから日程を鹿島にゆだねる小百合。

「うん。今日はさすがに無理だなあ。今日はウチの彼氏とデートだもん。日曜なら大丈夫。」

生徒風情が放課後デートに興じる現代の縮図・権化である鹿島。

「じゃあ、日曜にしようよ。私も大丈夫だよ?」

鹿島の受け答えに同調する小百合。

「う~ん、今日が無理なのは残念だけど、日曜が楽しみだなあ~。早く日曜こないかなあ~。

あっそうだ、小百合さあパクチー好きじゃんか クレープのついでに行かない?近くだし。」


「えっ、食べブロ星4.5で話題の?いいの?付き合わせちゃって?」


「いいの。元々は私のワガママに付き合わせちゃってるんだから。」


「私もいいよ。パクチーは好きなほうだし。待ち合わせはいつものところでいいよね?」  


「「 うんっ!!!!! 」」

好きなジャンルは違えど似通った二人だった。



-------------------------------------------------------------------------------------

よしっ、決めた

今回のテーマは『パクチー』だ。


まずはパクチーについての基本情報といこう。

 

パクチーの和名は「コエンドロ」または「胡荽」別名を「カメムシ草」という。


パクチーはタイ語で、英語では「コリアンダー」中国語では「香菜」という。


セリ科の植物である。


基本情報についてはこんなところでいいとして、『パクチー』について考えるうえで


避けられないのは、やはり『パクチー好き嫌い論争』であろう。

 

好き派の言い分(小百合の会話からの情報)はこうだ、

「元々ハーブ系が好きでよく食べていたからその流れでパク地を好きになった」だとか

「体に良いし、美容にも良い。昨日も今日も明日も、デトックス!デトックス!」だそうな


次に、嫌い派の言い分はこうだ、

「『カメムシ草』の名の通りカメムシのような臭いがするから嫌だ。 臭い くさい クサい」

だそうな


両者が言い争ってもただの水掛け論になるだけである、その様は目を閉じただけでも瞼に

浮かんでくる。見苦しい。


パクチー好きの多くは女性で占められている。その需要に合わせてか『パクチー専門店』


なるものが数多く顕在しいてきている。また、『パクチーチョコ』だとか『パクチーチップス』


『パクチー焼きそば』までもがコンビニ等で売られている。


特に驚きなのが、『パクチーサラダ』なるものが『パクチー専門店』等に登場している。


なんと、パクチーをそのまま皿に相当な量を盛り付けて提供し、それを客が平然と食べている


のだ。まあ、店に来ている時点でパクチー好きしかいないのだが。


パクチーの本場タイでは、通常と同じく薬味として添えられ食べられるだけだ。


だから、タイ人もパクチーだけをモリモリと食べるパクチストの姿は


「 シンジラレナ~イ!! 」そうだ。


これまで、パクチーについて考えてきたが、ここで私の『パクチー好き嫌い論争』に結論


をつけ... 私の派閥はどっちなのか聞きたいのかな?聞きたいのでしょう?え?え??


・・・・・・・・・・・・・・・   返事がない


空しい... はっ!そうだ独り言だった。頭の中で自問自答しているのだった。慣れている


はずなのに時々こうなってしまう。仕方ない友達がいない人(ぼっち)なのだから。


おっほん、話を戻そう。私の派閥は・・・・・どちらでもない・・・・だ。


好き派の人たちも嫌い派の人たちも期待していたのに宝くじに外れた気分かい?


中には、私と同じ考えの人もいるかもしれないかな。理由は簡単だ。それは・・・


パクチーを食べたことがないからだっ!!!!


今まででパクチーに出会ったことすらない。パクチーに出会う機会はいつなのだろうか。


朝寝坊して、トーストを咥えたまま家を飛び出して曲がり角を曲がると出合い頭にパクチーと


出会い、仲睦まじく良好な関係を結ぶことができるのだろうか。パクチストの皆々方様は


そうやって出会ってきたのだろうか。


ハーブ系を進んで食べることもないし、タイ料理や辛い料理を食べることもないし、


スーパーで買うこともない。かといって、これ機に食べてみよう!!とも思わない。


臭い臭い言っている嫌い派の発言を鵜呑みにするわけもないが、わざわざ臭いものに


進みよる心算もない。それに、無駄な水掛け論・泥仕合に時間を割くまでに無聊な


日々は送っていない。あくまで、昼休み中の『独り言』に徹するのだ。


さて時間も迫ってきているから、結論といこう。


結論は、「好きなものを好きなだけ食べればいいじゃないか」

うん、それでいい。みんなちがってみんないい。金子みすゞも言っていたのだ

(パクチーのことではないけど)。

穏便でいいじゃないか、このまま平穏無事に過ごそう、それがいい。


もっと世の中のためになることに時間を割き侃々諤々の議論をすべきなのだ。


良い解決ができた。さすが私だ。うん、それでいいんだ、反論は聞きたくない。



おっと、時間が来たようだな。これから掃除のあと5時間目の古文の授業があるから

私はここで失礼するよ。じゃあ、また明日にでも会おう。

いつもの時間いつもの場所にいるから、それまで。



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