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赤い瞳の銀の鳥   作者: アマメ ヒカリ
第9章 望
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37.裡から外へ

こんにちは☆^_^

「そう。僕は、水を頂いているいつかの僕に教えてもらったんだよ。いつかの僕でかつての僕、ここと隣り合わせの僕。」


話し合いの場にいる者たちは首をかしげる。

聡明なこの若者は今どこのくうにいて、何を伝えようとしているのかをわかろうとした。



ユーマは目を伏せて、喉にたまった熱を長い息で吐いた。

振動が高まり、止まらない。

くうを渡ってきた者にはこの場に留まることがもどかしく思えることがある。



閉じたまぶたの裏側には光がほとばしって眩しく、苦しい。

身体が震える。

バラバラになる。

この器、このからだが保てない。




嗚呼……

助けて!

僕まだ、ここにいたいんだ!



「ユーマどの!」

おさの、自分を呼ぶ声で目を開けた。

周りを見ると皆が自分を心配そうに見ている。



「ごめんね。僕、少し遠くに行き過ぎたみたいだ」

自分の手のひらをみると光っていて、光はやがてゆっくりと肌へ沈むように消えていった。



「僕……、光ってた?」



皆へ聞くと、一斉に頷いている。



「えへへ」



皆、あきらかに拍子抜けをしている。



「あのね、たくさんの水を頂いた場合どうなるのかなって試しに思い描くでしょう?その思い描いたところにも僕がいて、たくさんの水を使っているずっと先の人たちを思い描くとやっぱりそこにも僕がいるんだ。姿はこれじゃないけど。」



ユーマは、これ、と言いながら自分の胸に手を置いた。

皆を見ると、困ったような顔ばかり。

自分が何処(どこ)何時(いつ)へ通じているのか何を言わんとしているのか、それらをどうやって伝えたものかと考えていると再びユーマの身体が光りだしたので、皆は慌ててユーマを止めた。



「ユーマ殿!ユーマ殿!」

「もう、お心は充分に」

「豊穣殿!」

それらの声に我に返り落ち着きを取り戻してきたユーマへ

静かな声がかけられた。


「水を……子供たちとその次の子供たちへ、ずっと先の子供たちへ、下されるのですね。渡すために今得るのですね。ユーマ殿」


「そうなんだ。僕達だけで使い尽くさない方法と一緒に、子供たちへ渡すんだ。今はあたたかいまま湧く水はいつか冷えた泉になっていく。そのときの景色は一面の、一面の金の穂だったよ。魚もたくさん。……色とりどりの魚だった」



そこにいる者たちはその後もしばらく話し合った。

問い、応え、分け合い、一人のうちにあるだけだった展望は形になる。

豊穣を裡から外へ、無から有へ。

想いを練り合わせ、研いでいく。

結晶となるまで。 



「……そうだね。土の深い所から水を頂く時は、水そして土と鉱物の精霊王へお願いするよ。おさ、時期はいつが良いでしょうか」


「そうじゃなあ。水が凍る前が良いでしょうなあ。作物の実りを頂くときの“お礼”のときにするのはどうですかな」


「それはいい!」

「歌と踊りを披露する実りへのお礼か!よいですね。

きっと楽しいお礼の会になりましょう。皆、喜びます」


「はは!あははっ!」

預り手殿はふいに大笑い。15という御年おんとしの若者は何をそんなに愉快に思うのかを周りの者は測りかねたが、大切な者、敬愛する豊穣の預り手が、楽しそうにしているのを見れば自然と皆も笑い顔になった。



「僕、さっそく精霊王のユリムとソウドへお願いしにいってくるよ!長のおじいさま、みんな、また後でね!」

ユーマは言い終わらないうちに駆け出して話し合いの場を去ろうとしたのだが、急に立ち止まり皆の方へと振り向いて「ありがとう!」と笑う。


「こちらこそですぞユーマ殿。またのちほど」

長が言葉を返すとユーマはまた駆け出して、そして、見えなくなった。


あとに残るこのあたたかいもの。

とまらないやさしい風が話し合いの場に残っている。

楽しいからという理由でつくるものはいったいどんなものだろうと、そこにいる誰もが想像した。


一面の金の穂

魚の泳ぐさま

水がはねて

陽光がふりそそぎ

子供が笑い

母親が笑い

男が笑い

けものが水を飲み

鳥が渡り


……あとはただ、光って見えない。

そんな場所をつくれることへ皆が皆、喜びを感じた。










そしてそのあとは、各自が担う実務を行う。

希望は見えないところの働きで形となる。

夢を見る

夢を語る

夢を成す

その道のりは、源から人として形を頂くことと同じことでもある。



豊かな時は豊かな場を立ち上げる。

この計画はうまくいくだろう。

プロジェクトとはこうやって育てていくのさ。

裡側うちがわにあるものを無視してはいけない。

君だけの炎を消してはならない。

火を分けよ。

水を汲め。

分けて拡げよ。

そのために脳は常に受信して像を結ぶのだからね。



君たちは、すごいよ。

わたしが保証するさ。

皆の納得解は現状の内側において最高のものですが、現状の内側をなぞり続けるものでもあります。

課題と問題への解は、安定へ向けた解であることが多い。つまり変わらないということへの解なのです。

これはこれでとても大切!


個別の解、ユニークな解をいつでもだせるようにしておこう!

嫌な顔をされたら、テストで、とか、お試しで、などと付け足して相手に安心をしてもらう事も大切!

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